大ヒットミニバンの双璧 エスティマとオデッセイが凋落した理由

マイナーチェンジで延命策が図られる

2016年6月、フェイスリフトを含む大幅なビッグマイナーチェンジ(3度目のマイナーチェンジ)が行われた。 ヘッドランプ(LEDクリアランスランプを内蔵したBi-Beam  LEDヘッドランプを採用)はアッパーグリルから連続してサイドまで回り込んだ薄型に変更するとともに、アッパーグリルを大口化し、バンパーコーナーを張り出した造形とした。リアのコンビネーションランプは立体的に造形した赤基調にするとともに、ストップランプはLEDライン発光、テールランプを面発光にした
2016年6月、フェイスリフトを含む大幅なビッグマイナーチェンジ(3度目のマイナーチェンジ)が行われた。 ヘッドランプ(LEDクリアランスランプを内蔵したBi-Beam LEDヘッドランプを採用)はアッパーグリルから連続してサイドまで回り込んだ薄型に変更するとともに、アッパーグリルを大口化し、バンパーコーナーを張り出した造形とした。リアのコンビネーションランプは立体的に造形した赤基調にするとともに、ストップランプはLEDライン発光、テールランプを面発光にした

 こうなると「エスティマをフルモデルチェンジする必要があるのか」「新型を開発しても、需要はアルファード&ヴェルファイアに移っていて、もはやエスティマは売れないのではないか」と、トヨタは考えた。

 ただし2014年の時点で、エスティマは1ヵ月平均で2000台程度は登録されていたから、廃止するのは惜しい。そこで2016年に規模の大きなマイナーチェンジを実施して、販売を継続させながら2019年10月に生産終了したわけだ。

 2016年にマイナーチェンジを行った時、トヨタ関係者「エスティマをフルモデルチェンジする価値はないのか」と尋ねた。返答は以下のような内容だった。

 「仮に(現行)アルファード&ヴェルファイアのプラットフォームを使ってエスティマをフルモデルチェンジすれば、少し低い天井を生かしてボディは軽くなり、空気抵抗も低減できる。

 タイヤサイズも抑えられ、優れた走行安定性と燃費を両立させられる。エスティマは走りから経済性まで、機能を幅広く向上できるミニバンで、この価値は今でも変わらない。

 ただしフルモデルチェンジする計画は一切ない。今述べたのは私の妄想だ」。

 以上のようにエスティマをフルモデルチェンジしなかった理由は、ミニバン市場の人気動向が分からず、全高が1800mm以下の車種は売りにくい。アルファード&ヴェルファイアが好調に売れており、エスティマをフルモデルチェンジすることで生じるリスクを避けた結果であった。

 残念ながら、ミニバン全盛期を切り拓いた先駆者エスティマの歴史は、いったん幕を閉じる。現時点で次期モデルの開発に関する情報はほとんど入っていない。

オデッセイはなぜ売れなくなったのか?

全長4765×全幅1800mm、機械式駐車場に入る全高1550mmとした3代目オデッセイ。この頃のオデッセイは低床で走りのいいミニバンとして評価が高かった
全長4765×全幅1800mm、機械式駐車場に入る全高1550mmとした3代目オデッセイ。この頃のオデッセイは低床で走りのいいミニバンとして評価が高かった

 オデッセイもエスティマと同様、かつてはミニバンの定番車種として好調に売れた。初代モデルは1994年に発売され、全高を1700mm以下に抑えたワゴン風のボディと3列シートミニバンの実用性が注目されている。

 1995年には1カ月平均で1万台少々が登録された。1999年に2代目になり、2000年には再び1カ月平均で1万台以上が販売されている。この販売実績は、今のプリウス、シエンタ、ノートなどと同等だ。

 そして2003年に発売された3代目オデッセイは、全高を立体駐車場の利用が可能な1550mmに抑えた。エスティマやエルグランドなどに対抗すべく、ホンダの得意な低床設計を突き詰めた結果であった。

 しかし、この変更が販売面では裏目に出てしまう。2004年には1カ月平均で約8200台を登録したが、2005年には5300台、2006年は3700台と減っていく。

 2008年には4代目に一新したが、外観は3代目に似てマイナーチェンジのように見えた。2009年の登録台数は、1500台前後と低迷している。

次ページは : エリシオンと統合しハイルーフミニバンとなった5代目オデッセイ

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