大ヒットミニバンの双璧 エスティマとオデッセイが凋落した理由

 かつて、ミニバンといえば、誰もが真っ先に思い浮かべたエスティマとオデッセイ。

 しかし儚くも、かつての勢いは消え失せ、エスティマは2019年10月17日に生産終了、オデッセイも月販1000台程度の低空飛行を続けている。

 エスティマは初代が1990年5月に発売し、2000年1月にデビューした2代目は同年の販売台数が12万2437台とカローラ、ヴィッツに次ぐ3位となった。

 一方、オデッセイも、初代が 3ナンバー普通車クラスの販売台数では長年、首位を維持してきたクラウンを抜き去り、1995年には12万5590台を記録、ホンダの業績を回復するほど大ヒットした。

 そこで、エスティマとオデッセイはなぜ凋落したのか? なぜ生産終了および、販売台数が急減したのか? その理由について、モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が迫ってみた。

文/渡辺陽一郎
写真/ベストカーWEB編集部

【画像ギャラリー】昔懐かしい大ヒットしていた頃のエスティマとオデッセイ


トヨタはエスティマを冷遇!?

2019年10月17日に生産終了した4代目エスティマ

 3列シートのミニバンは人気の高いカテゴリーで、新車として売られるクルマの約15%を占める。軽自動車を除いた小型/普通車に限れば、約25%がミニバンだ。

 ただしミニバンは、車種ごとの販売格差が大きい。今は1.5Lエンジンを搭載するコンパクトなシエンタとフリード、ミドルサイズでも標準ボディが5ナンバー車となるセレナやヴォクシー系3姉妹車、Lサイズのアルファード&ヴェルファイアに販売が集中する。この8車種以外は、売れ行きが大幅に下がってしまう。

 そこで以前は好調に売れたのに、現在では登録台数が大幅に減ったエスティマとオデッセイについて考えたい。

 まず、エスティマは、2019年10月17日に生産が終了した。10月までは1カ月に600~900台を登録していたが、11月は197台に激減した。実質的に10月に終了したからだ。

 オデッセイは2019年1~11月の平均登録台数が約1200台で、直近の11月は806台だ。前年に比べて11月は40%減った。ホンダのミニバンで最も多く売れるフリードは、11月に6444台を登録したので、オデッセイは約13%にとどまる。

2019年1~11月の新車販売台数。エスティマとオデッセイの販売台数はアルファードの5分の1位以下

 エスティマの初代モデルは、1990年に3ナンバー専用車として発売された。卵型の外観が注目され、新時代の高級乗用車として認知されている。

 今日のような先進安全装備がほとんど採用されない時代に、直列4気筒2.4Lエンジンを搭載して、税抜き価格は296万5000円に達した。

 この後、エスティマが定着した1992年に、全幅を5ナンバーサイズに抑えたエスティマルシーダ&エミーナが登場している。

1990年5月に発売された初代エスティマは丸みを帯びた卵型のデザインが特徴で「天才タマゴ」のCMのキャッチコピーが話題になった
3ナンバーサイズのエスティマに対し、5ナンバーボディとしたルシーダ&エミーナ

 この売れ筋グレードのXは、税抜き価格が207万9000円(ルシーダ)で、エスティマよりも約100万円安かったから好調に売れた。

 2000年に発売された2代目は、駆動方式を従来の後輪駆動から前輪駆動に切り替えてハイブリッドも設定している。2006年には現行型の3代目に刷新され、2019年10月に生産を終えた。

2006年1月にデビューした3代目エスティマ。標準ボディとアエラスの2タイプラインナップ

 エスティマは初代から3代目まで人気が高く、3代目が発売された翌年の2007年には、1ヵ月平均で約6200台を登録している。

 当時のヴォクシーと同等で、初代アルファード(2007年の時点でヴェルファイアは登場していない)の売れ行きを上まわった。

 ところがその後、エスティマは冷遇されてしまう。同じプラットフォームを使うアルファードは、2008年のフルモデルチェンジで姉妹車のヴェルファイアを加え、2015年には現行型へフルモデルチェンジされたのに、エスティマは一新されなかった。

 2016年には発売から10年を経過しながらマイナーチェンジを実施して、フロントマスクを変更したり、衝突被害軽減ブレーキのトヨタセーフティセンスCを加えた。

 エスティマをフルモデルチェンジしなかった背景には、複数の理由があった。まずミニバン需要の先行きが不透明なことだ。

 トヨタは全高が1700mm以下のワゴン風ミニバンとして、ウィッシュやアイシスを用意していたが、2017年に販売を終えた。

 以前は天井の高さを含めて、さまざまなミニバンが売られていたが、近年は各車種の販売格差が広がっている。

 今のミニバンは、多人数乗車や荷物の積載といった明確な用途に基づいて選ばれるから、堅調に売れる車種の全高はコンパクトサイズを除くとすべて1800mm以上だ。

 その点でエスティマの全高は、1700mmは超えるが1800mmに達しない。卵型の外観を含めて空間効率を徹底的に高めた作りでもないから、今後はミニバンの売れ筋傾向に合わなくなる可能性がある。

 しかも2008年にアルファードが2代目にフルモデルチェンジされてヴェルファイアも加わると、売れ行きが予想以上に伸びた。

 2008年に発売した時の1か月の販売目標は、各3000台で姉妹車を合計しても6000台だが、2009年の月販平均は合計6600台、2010年には8000台まで増えた。

マイナーチェンジで延命策が図られる

2016年6月、フェイスリフトを含む大幅なビッグマイナーチェンジ(3度目のマイナーチェンジ)が行われた。 ヘッドランプ(LEDクリアランスランプを内蔵したBi-Beam LEDヘッドランプを採用)はアッパーグリルから連続してサイドまで回り込んだ薄型に変更するとともに、アッパーグリルを大口化し、バンパーコーナーを張り出した造形とした。リアのコンビネーションランプは立体的に造形した赤基調にするとともに、ストップランプはLEDライン発光、テールランプを面発光にした

 こうなると「エスティマをフルモデルチェンジする必要があるのか」「新型を開発しても、需要はアルファード&ヴェルファイアに移っていて、もはやエスティマは売れないのではないか」と、トヨタは考えた。

 ただし2014年の時点で、エスティマは1ヵ月平均で2000台程度は登録されていたから、廃止するのは惜しい。そこで2016年に規模の大きなマイナーチェンジを実施して、販売を継続させながら2019年10月に生産終了したわけだ。

 2016年にマイナーチェンジを行った時、トヨタ関係者「エスティマをフルモデルチェンジする価値はないのか」と尋ねた。返答は以下のような内容だった。

 「仮に(現行)アルファード&ヴェルファイアのプラットフォームを使ってエスティマをフルモデルチェンジすれば、少し低い天井を生かしてボディは軽くなり、空気抵抗も低減できる。

 タイヤサイズも抑えられ、優れた走行安定性と燃費を両立させられる。エスティマは走りから経済性まで、機能を幅広く向上できるミニバンで、この価値は今でも変わらない。

 ただしフルモデルチェンジする計画は一切ない。今述べたのは私の妄想だ」。

 以上のようにエスティマをフルモデルチェンジしなかった理由は、ミニバン市場の人気動向が分からず、全高が1800mm以下の車種は売りにくい。アルファード&ヴェルファイアが好調に売れており、エスティマをフルモデルチェンジすることで生じるリスクを避けた結果であった。

 残念ながら、ミニバン全盛期を切り拓いた先駆者エスティマの歴史は、いったん幕を閉じる。現時点で次期モデルの開発に関する情報はほとんど入っていない。

オデッセイはなぜ売れなくなったのか?

全長4765×全幅1800mm、機械式駐車場に入る全高1550mmとした3代目オデッセイ。この頃のオデッセイは低床で走りのいいミニバンとして評価が高かった

 オデッセイもエスティマと同様、かつてはミニバンの定番車種として好調に売れた。初代モデルは1994年に発売され、全高を1700mm以下に抑えたワゴン風のボディと3列シートミニバンの実用性が注目されている。

 1995年には1カ月平均で1万台少々が登録された。1999年に2代目になり、2000年には再び1カ月平均で1万台以上が販売されている。この販売実績は、今のプリウス、シエンタ、ノートなどと同等だ。

 そして2003年に発売された3代目オデッセイは、全高を立体駐車場の利用が可能な1550mmに抑えた。エスティマやエルグランドなどに対抗すべく、ホンダの得意な低床設計を突き詰めた結果であった。

 しかし、この変更が販売面では裏目に出てしまう。2004年には1カ月平均で約8200台を登録したが、2005年には5300台、2006年は3700台と減っていく。

 2008年には4代目に一新したが、外観は3代目に似てマイナーチェンジのように見えた。2009年の登録台数は、1500台前後と低迷している。

エリシオンと統合しハイルーフミニバンとなった5代目オデッセイ

現行オデッセイのボディサイズは全長4830×全幅1800(アブソルートは1830)×全高1685~1715mm
ホンダエリシオン。2004年5月から発売し、2013年10月まで日本市場で販売。最後までアルファード&ヴェルファイア、エグランドを駆逐できなかった

 そこで2013年に発売された5代目の現行型は、エリシオンと統合させ、フラットフロア構造のハイルーフミニバンになった。

 後席側のドアはスライド式だ。現行オデッセイは、低床設計によって3列目シートも床と座面の間隔が十分に確保され、膝の持ち上がる窮屈な着座姿勢にならない。

 アルファード&ヴェルファイアの3列目よりも快適で、多人数乗車時の機能は、オデッセイの方が優れている。

 さらに低床設計だから乗降性が優れ、十分な室内高を確保しながら全高は1700mm以下に収まる。

 低重心になって走行安定性も良く、アルファード&ヴェルファイアと機能の優劣を比べると、オデッセイの勝るところが多い。

ステップ高は約30cmと低床化により優れた乗降性を獲得。階段のようなステップをなくすことで、フラットで広いフロアも実現。高齢者向けともいえる

 しかし売れ行きはアルファード&ヴェルファイアの圧勝だ。オデッセイの登録台数は1ヵ月平均で1000台前後だが、アルファードは5600台、ヴェルファイアは3000台前後で、合計すれば9000台近いからシエンタに迫る。

 アルファード&ヴェルファイア人気の背景にあるのは、独特のクルマ作りだ。アルファード&ヴェルファイアは、現行型でプラットフォームを刷新しながら、あえて低床設計を採用せずに床を高く維持した。

 乗降性、走行安定性、動力性能、燃費など幅広い機能で不利になるが、外観が立派に見えて乗員の見晴らし感覚も得られるからだ。言い換えればLサイズミニバン特有の魅力を追求した。

たくさん売るためのクルマ作りをしなかったのがその理由

アルファードのボディサイズは全長4945(4950)×全幅1850×全高1950(1935)mmと全高はオデッセイに比べ265mmも高い。もはやこのアルファード&ヴェルファイアを超えるLクラスミニバンは出てこないのか?

 エスティマが生産を終えてオデッセイが売れ行きを低迷させた理由はこの裏返しだ。

 アルファード&ヴェルファイアのような「たくさん売るためのクルマ作り」をしなかったことにある。アルファード&ヴェルファイアは、多くのユーザーが使っている以上、優れた商品と判断できる。

 しかしエスティマやオデッセイが、売れ行きを低迷させているからといって、劣った商品とはいえない。

 エスティマは設計が古く苦戦したが、オデッセイには先に述べた通り、優れた機能が多い。商品力と売れ行きが、必ずしも合致しないのは自動車ビジネスの難しさだ。

 特にホンダの場合、最近はN-BOXに販売力を奪われている。国内で売られるホンダ車の30%以上がN-BOXで占められ、約50%が軽自動車だ。しかもオデッセイは「たくさん売るためのクルマ作り」をしていないから、登録台数が必然的に伸び悩んだ。

 これは惜しい話だ。クルマは個人所有の乗用車でも、安全や環境を左右するから公共性を伴う。世の中のためにも、良いクルマはしっかりとアピールして、好調に売れるよう努力すべきだ。

 エスティマはすでに生産中止なっているが、オデッセイには販売回復のチャンスがあると思う。

【画像ギャラリー】昔懐かしい大ヒットしていた頃のエスティマとオデッセイ

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