コンフォータブルパックが無料!?
そこで改めて、好調な売れ行きが注目されるタントの買い得グレードを考えてみたい。2019年12月23日には、新グレードのセレクションシリーズも加わり、選ぶべきグレードが変化した可能性もある。
タントには標準ボディとエアロパーツを装着したカスタムという2つのタイプがあり、エンジンはこの両タイプに、自然吸気のノーマルタイプとターボを設定している。
機能や装備に対して価格の割安な買い得グレードを選ぶなら、12月に追加されたXセレクションを推奨する。
Xセレクションは、標準ボディにノーマルエンジンを搭載しており、装備は従来のXをベースに、コンフォータブルパックを加えた。
その内容は、運転席の上下調節機能、チルトステアリング、運転席と助手席のシートヒーター、360度スーパーUVカットガラス、格納式シートバックテーブルなど多岐にわたる。
コンフォータブルパックの価格は3万8500円だが、Xセレクションは149万500円だから、ベースグレードのXと同額だ。つまりコンフォータブルパックが無料で装着されている。
軽自動車の価格設定は特殊
軽自動車は価格競争が激しく、ライバル車を横目で見ながら開発を進め、価格も決める。従って後から発売された車種ほど、価格が割安になっていく。タントも同様で、価格をほとんど高めずに安全装備などを充実させた。
この影響で現行タントは、先代タントが標準装着していた運転席の上下調節機能とチルトステアリングを前述のセットオプションに変更した。
開発者に理由を尋ねると、「標準装着することを繰り返し検討したが、どうしてもコストが合わずオプションにした」と述べている。
軽自動車の場合、機能や装備の結果として価格が決まるのではない。最初から逸脱できない価格が決められていて、そこに機能と装備を合わせるのだ。
ただし今は安全装備の水準が急速に高まり、ライバル車に見劣りすれば販売競争に負ける。装備が充実したことで価格を高めても、販売競争に負けてしまう。
その結果、苦渋の選択として、現行タントは運転席の上下調節機能とチルトステアリングをオプションに変更した。通常であれば不自然なこの装備変更は、軽自動車が高コストな機能や装備を採用しながら価格を下げられない買い得感を突き詰めた裏返しなのだ。
Xセレクションはこの苦渋の選択を飲み込み、コンフォータブルパックを無料装着した。これは発売後数か月を経過しながら、届け出台数がN-BOXを超えられない結果、買い得グレードとして計画された。従って推奨度が最も高い。
Xセレクションで従来の不利を払拭
タントXセレクションをライバルのN-BOX G・Lホンダセンシング(154万3300円)と比べると、タントXセレクションには車間距離を自動調節できるクルーズコントロールなどの運転支援機能は装着されないが、サイド&カーテンエアバッグやシートバックテーブルを備えて価格は5万2800円安い。
N-BOX G・Lホンダセンシングも相当に買い得だから、装備と価格の勝負にタントXセレクションが勝ったとはいえないが、従来の不利は払拭されている。前述のようにN-BOXは安定的に売れるだけあって、高機能で価格も割安だ。そこに対抗するのは容易ではない。
いっぽう、上級シリーズのタントカスタムを買うのであれば、ターボエンジンを搭載したカスタムRSセレクションを選ぶ。これも新グレードのセレクションシリーズだ。
Xセレクションのコンフォータブルパックに加えて、カスタムRSにオプション設定される車間距離を自動調節できるクルーズコントロールなどの運転支援機能、LEDフォグランプなどを加えた。
カスタムRSセレクションの価格は185万3500円で、カスタムRSに比べると7万1500円高いが、セットオプション価格にして総額11万9900円の装備が加わるから、カスタムRSよりは4万8400円割安だ。最上級の軽自動車を求めるユーザーにはメリットがある。
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