かつてのミニバン王者ステップワゴンはなぜ苦戦しているのか?

売れ行き不振の原因はどこにある?

2019年9月のマイナーチェンジでコワモテになったセレナハイウェイスター。ステップワゴンのライバルのなかで、最も売れているのがセレナだ
2019年9月のマイナーチェンジでコワモテになったセレナハイウェイスター。ステップワゴンのライバルのなかで、最も売れているのがセレナだ

 ちなみに現行ステップワゴンは2015年4月に登場しており、2014年1月発売のヴォクシー&ノアに比べて基本設計が新しい。

 それなのに売れ行きは低迷している、2019年1~12月の登録台数は、1カ月平均で4390台だ。中堅水準の実績ではあるが、ライバル車となるセレナの1ヵ月平均が7746台、ヴォクシーの7334台に比べてかなり少ない。

■ステップワゴンとライバル車の2019年新車販売台数
セレナ   9万2956台(93.1%)
ヴォクシー 8万8012台(97.0%)
ノア    5万2684台(92.9%
ステップワゴン 5万2676台(92.6%)
※カッコ内は対前年同月比

 特にヴォクシーはノアやエスクァイアと姉妹車の関係にある。実質的に同じクルマだから3車種の登録台数を合計すると、1か月平均で1万5265台だ。ステップワゴンの売れ行きは、ライバル車に比べて明らかに少ない。

 標準ボディを5ナンバーサイズに抑えたミドルサイズミニバンは、実質的にステップワゴン、セレナ、ヴォクシー系3姉妹車のみだ。

 そこでステップワゴンをライバル車と比べると、各種の機能は劣っていない。ステップワゴンは低床設計で、床がセレナよりも約70mm低く、乗降性が良い。重心も下がり、走行安定性も優れている。

 3列目のシートは、座面の奥行寸法が短い半面、床下に格納できるからスッキリと広い荷室に変更できる。3列目を畳んでおくと、前述の通り、リアゲートのサブドアから乗り降りすることも可能だ。

ステップワゴンの室内の使い勝手はよく、これが売れ行き不振の原因にはなっていない
ステップワゴンの室内の使い勝手はよく、これが売れ行き不振の原因にはなっていない

 またステップワゴンでは発売当初からホンダセンシングが採用され、歩行者も検知して衝突被害軽減ブレーキ(緊急自動ブレーキ)を作動できる。車間距離を自動制御するクルーズコントロールなど、運転支援機能も充実している。

売れない理由は外観のデザイン?

2015年4月デビュー当時のステップワゴン(左)とスパーダ(右)
2015年4月デビュー当時のステップワゴン(左)とスパーダ(右)
わくわくゲートを採用したステップワゴンのリアスタイル
わくわくゲートを採用したステップワゴンのリアスタイル

 それでもステップワゴンの売れ行きが伸びない理由として、まず外観デザインが挙げられる。

 現行型の登場時点で、標準ボディだけでなくエアロパーツを装着したスパーダも、メッキグリルの輝度を抑えた大人しい顔立ちだった。これでは標準ボディと同じように見えてしまう。

 開発者に理由を尋ねると「派手なフロントグリルはほかのミニバンも採用して個性が乏しいから、ステップワゴンは抑制を利かせた」という。

 この意図は理解できるが、最近のステップワゴンは、いつも地味な顔で登場して売れ行きが伸びず、マイナーチェンジで派手に変更している。

 現行型も2017年9月のマイナーチェンジで、スパーダのフロントマスクを大幅に変えた。この繰り返しをするなら、最初から売れ筋路線で登場した方が良い。販売に弾みが付き、その後も堅調な売れ行きを保ちやすいからだ。

2017年9月のマイナーチェンジで スパーダ系は外観が変更され、ヘッドライトをLED化され、フロントグリルのデザインやテールゲートスポイラーの形状が変更された
2017年9月のマイナーチェンジで スパーダ系は外観が変更され、ヘッドライトをLED化され、フロントグリルのデザインやテールゲートスポイラーの形状が変更された

 ミニバンで大切な内装でも、ステップワゴンは個性が乏しい。セレナはS(スマートシンプル)ハイブリッドのシートアレンジを充実させ、2列目の中央を1列目の間までスライドさせると収納設備として使える。

 この状態では2列目の中央に空間ができるため、車内の移動もしやすい。ヴォクシー系3姉妹車は、3列目シートがレバー操作だけで持ち上がるようにした。2列目の長いスライド機能も含めて、使い勝手に工夫を凝らしている。ステップワゴンでは、このような初めて見た人を感心させる実用的な特徴が乏しい。

低床で乗り降りもしやすく使い勝手はいいが、個性が乏しいと渡辺陽一郎氏は指摘する
低床で乗り降りもしやすく使い勝手はいいが、個性が乏しいと渡辺陽一郎氏は指摘する

 ステップワゴンの販売が伸び悩む理由に、今のホンダのブランドイメージもある。2019年1~12月の販売実績を見ると、軽自動車がホンダ車全体の50%に達した。

 さらにN-BOXだけで、国内で売られたホンダ車の35%を占めてしまう。そこにコンパクトミニバンのフリード、コンパクトカーのフィットも加えると、国内で売られたホンダ車の75%に達する。

 こうなるとホンダのブランドイメージは、小さなクルマを中心に扱うスズキやダイハツに近付く。クルマ好きから見れば、ホンダは今でもNSXやシビックタイプRをそろえるスポーツモデルのメーカーだが、ミニバンを買う人達の見方は違う。

 ホンダは軽自動車や全長が4m前後の小さなクルマを造るメーカーで、ミドルサイズのミニバンはトヨタと日産の領域に入るのだ。

 そのためにホンダで堅調に売れる車種の上限はヴェゼルになり、オデッセイ、CR-V、シビックなどはすべて伸び悩む。

 販売力の問題も見逃せない。N-BOXが国内販売の1位になり、小型車も1.5L以下が好調に売れると、ミドルサイズやLサイズの販売促進に力を入れる余裕はない。販売店は軽自動車とコンパクトな車種を売るので手一杯だ。

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