これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。
当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、プレミアム・パーソナルセダンとしての存在感が際立っていた、日産レパードJ.フェリーを取り上げる。
文/フォッケウルフ、写真/日産
【画像ギャラリー】これまでになかった外観デザインで新しい高級車像を築いたレパードJ.フェリーの写真をもっと見る!(8枚)画像ギャラリー既存のセダンとは明らかに異なる個性を主張
中型車クラスに属する新たな高級パーソナルセダンとして開発された「レパードJ.フェリー」は、1990年代初頭の多様化するニーズに対応するため、従来の枠にとらわれない発想を取り入れ「乗る人のセンスを語る新しい高級車」をコンセプトに掲げて誕生した。
具体的には、高級車に求められる所有する喜びや走る楽しさはもちろん、洗練されたデザインと優雅なたたずまいによって、乗る人の個性やライフスタイルを際立たせることを目指している。
機能性と感性価値の両立を図りながら、新しい時代に相応しいパーソナルラグジュアリーを提案し、スポーティかつスタイリッシュな個性を武器に、従来の高級セダンとは一線を画す新しいポジショニングを構築して、次世代ユーザーの獲得を狙っていた。
同車の特徴のひとつに、内外装ともに上質で洗練されたスタイルを追求することで実現したエレガントな雰囲気が挙げられる。
外観は、バランスと調和(ハーモナイズ)を重視した造形にこだわった仕上げがなされ、ボディ全体を張りのあるシンプルな面構成で包み込み、一体感のある塊としての存在感が強調された。
特にフードからトランクリッドへと連なる緩やかなアーチ状のラインと、ルーフおよびドアカットラインとの統一感のある構成によって、「バランスド・アーチ・デザイン」と称する新しいスタイリングを具眼化している。
従来のスタイリッシュなセダンで採用されていたウェッジシェイプとは一線を画す、優雅で静謐なフォルムを実現し、ドアハンドルやフューエルフィラーリッドといった細部のディテールに至るまで、丸みを帯びた造形で統一し、全体のラインと調和させてスタイルの完成度を高めている。
心地よく上質なドライビング体験
車内は柔らかさと暖かさをテーマに、高級車に相応しい上質な空間づくりが追求されている。セダンに必須となる快適性にこだわっているのはもちろん、乗る人の感性に響く、質の高いくつろぎを実現した。
乗り込んですぐに目に付くインパネとセンターコンソールは、包まれ感と解放感を両立させる曲面構成を採用し、視覚的な広がりと操作系の一体感を両立。ドライバー中心にレイアウトされたコックピットも、機能美を感じさせ、設計や素材の選定に徹底した配慮がなされているのがわかる。
走りにおいても“上質な走行体験”を提供するべく、クラストップレベルの動力性能と操縦安定性、ブレーキ性能の高度なバランスを実現した。
パワートレインには、排気量4130ccのV型8気筒と2960ccのV型6気筒の2タイプを用意。いずれも自然吸気エンジンでありながらV8が270ps、V6は200psという余裕ある出力特性と高い静粛性を持ち、長距離クルージングから街乗りまで場面を問わずスムースな加速フィールを堪能できる。
このユニットに組み合わされるのは、変速ショックを最小限に抑え、加速時のリニアな反応と滑らかな動力伝達を両立させたフルレンジ電子制御式4速ATとなる。
足まわりはフロントにストラット式、リアにマルチリンクサスペンションを採用し、快適な乗り心地と高いコーナリング性能の両立を図っている。さらに、上位グレードのタイプXには、位相反転ディレイ制御方式のSUPER HICAS(スーパーハイキャス)を標準で装備した。
この機能によって後輪操舵による高い旋回性能と自然な車両挙動を実現し、ドライバーの操作に対して応答性の高いハンドリング特性を提供する。ほかにも走りに影響をおよぼすすべてにおいて緻密にチューニングが施され、心地よく上質なドライビング体験をあらゆる場面で味わうことができた。










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