シビックタイプR、ロードスター…スポーツカーをマニアの乗り物にしたのは誰か?

女子には絶対に聞かせられないマニアックな会話

 同年9月26日号には、さらにマニアックな記述が出てくる。デビュー直後のR33スカイラインの試乗記事。

 R33は先代R32型に比べてホイールベースが延びたことと、ターボエンジンを低ブーストタイプのリニアチャージコンセプトにしたことで登場直後から物議を醸したクルマで、そのこと自体が相当マニアックなのだが、その試乗記である評論家氏がこう書いている。

 R33はトラクション重視。リアアクスル回りの剛性を飛躍的に高め、リニアにパワーを立ち上げるエンジン特性にマッチした ─ というよりエンジン特性を積極的に活かせる ─ トラクション性を確保する。

 すべては基本的に曲がりにくい性格となるロングホイールベース設計に対応したものだが、まずは高いスタビリティによって安定サイドのダイナミックバランスに仕上げたうえで、トラクションを積極的にハンドリングに取り込み、

 ステアリングとスロットルのコンビネーションによって安定して速く、そしてスムーズに走らせる。

 全部読みました? 担当は宇宙理論の話かと思いましたよ。今から23年前、ベストカーのみならず自動車雑誌はみんな多かれ少なかれこういう記事を載せていたのだ。

 これでは一般ユーザーの共感を得るのは難しい。この「共感」というのはけっこう重要なキーワードで、共感が得られなければ人は殻に閉じこもり、周りが見えなくなりがちだ。

 その最たるものを93年のバックナンバーで発見したので報告しておこう。同年の東京モーターショーでR33スカイラインGT-Rのプロトタイプが出展されたのだが、ベースモデル同様その評判は最悪。

 スカイラインファンが集まっての座談会ではこんな過激発言が相次いでいた。

 Sさん「GT-Rはもっと硬派なクルマでいいんだよ。エアコンもないパワーウィンドウもない。それでいいんだよ」

 Hさん「あのホイールベースはないよな。ケンメリだってGT-Rはほかよりも40mmホイールベースを短くしていたんだから」

 Nさん「こだわりでしょ。Rにふさわしいものはどういうものかって……。安易にGT-Rの名称を使ってほしくないですね!」

 あ、熱すぎる……。こんなことを語り合っているところを女の子に見られたら大変。目が合ったらマジで逃げられそうだ。

 いっぽうで、当時女性に人気のあったクルマはRV。1991年に2代目パジェロが登場し、RVブームは絶頂期へと向かっていた。

 スポーツカー好きは「走り」へのこだわりがいっそう強まり、RV好きは「走り」からの逃避を図る。その断絶の始まりが1993年頃にあったように思う。

1990年代、クルマ好きを大いに沸かせたエボ対インプの名勝負だが、代を重ねるごとに互いに進化の内容が細分化し、どんどんとマニアックに。空力のちょっとした改良や足回りの細かな設定変更などを繰り返し、よほどのクルマ好きでなければ「よくわからない」内容となっていった。これもまたスポーツカーのマニア化を進めた要因のひとつかも。<br>ラリーという舞台がなくなったのも痛かった  
1990年代、クルマ好きを大いに沸かせたエボ対インプの名勝負だが、代を重ねるごとに互いに進化の内容が細分化し、どんどんとマニアックに。空力のちょっとした改良や足回りの細かな設定変更などを繰り返し、よほどのクルマ好きでなければ「よくわからない」内容となっていった。これもまたスポーツカーのマニア化を進めた要因のひとつかも。
ラリーという舞台がなくなったのも痛かった  

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