シビックタイプR、ロードスター…スポーツカーをマニアの乗り物にしたのは誰か?

 「クルマは軽で充分」な時代のスポーツカー

 しかし、それはあくまでも「始まり」であり、まだ決定的な断絶には至っていない。なぜなら1995年に連載が始まった『頭文字(イニシャル)D』は当初、一般層やまだ免許を持たない少年たちをも魅了していたからだ。

 だが、1999年に初代ヴィッツが登場して人気を博し、コンパクトカーブームが始まったあたりから潮目が変わり、2008年のリーマンショックを経て軽自動車ブームに移行して確実に状況は変わる。

 多くの人が「クルマは軽で充分」と言い始めると、スポーツカーはどうしたってマニア向きのクルマになっていく。2007年に登場したR35GT-R、ランエボX、先代インプレッサWRX STI、FD2型シビックタイプRはその象徴的存在だろう。

 それまでに一世を風靡していたスポーツカーが続々と生産中止となり、「スポーツカー冬の時代」の幕開けがハッキリしていただけに作るほうもハンパなものはできないという意識が強まったのだろう。

 とてつもなく気合いの入ったモデルが続出し、マニア化が進行したのだ。

 担当は、この2007年から2012年の86/BRZが登場するまでの間がスポーツカーのマニアック度が最も高かった時期だと考えている。

 86/BRZは一見マニア度が高そうに見えるが、実は新たなユーザー層を生みだし、また、ユーザー同士のコミュニケーションも活発になるなど新たなスポーツカー像を創出したモデル。

 また、86/BRZ以降に登場したコペン、ロードスター、S660なども以前のクルマたちに比べると敷居は低めで、新参者が入ってきやすい雰囲気を持っているといえるだろう。

 「一見さんお断り」のオーラを放ちまくっていたGT-Rやエボ&インプなどとは明らかに異なる。

 もちろん、シビックタイプRやWRX STI、アルトワークスなど、今もマニア度の高いクルマはあるが、それはそれでないと寂しいもの。

 スポーツカーはマニアックなものとカジュアルなものの両方あるということが大切で、今は意外とその理想的な状況にあるのではないだろうか。

我々自動車雑誌の罪も重い……

 この長い記事もそろそろ結論に向かわねばならない。スポーツカーをマニアの乗りものにしたのは誰なのか?

 それは「クルマは軽で充分」という時代の空気と、それへの反発心で、世捨て人のようにひたすら走りに特化していったメーカーとユーザーということにならないだろうか。

 もちろん、それを助長してきた我々自動車雑誌の罪も重いだろう。

 だが、最後に言っておきたいことがある。スポーツカーは趣味のもので、マニアックになるのは当然なのだ。しかし、あまりにも世間一般とずれてしまうと、存続が危うくなってしまうことを危惧しているということだ。

 「イケてる男はスポーツカーに乗る!」と言われる時代がくればスポーツカーはもっともっと増えるはず。

 そして、それこそ我々が求めているもの。目指せ「クールなスポーツカー乗り!」なのである。

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