来館者の半数が海外の観光客というトヨタ博物館
トヨタ博物館の来場者数は2025年8月だけで5万2000人を超え、昨年に比べて約150%の増加だという。平日は来館者の半数が海外からの観光客といい、インバウンドとクルマファンに加え、何か面白そうだから寄って行こうというライトな家族連れも来場者アップにつながっているとのこと。
また先日はトヨタ博物館に関連したⅩのポストが1300万回のインプレッションを得たりするなど、我々がイメージする平穏な博物館ではなくなっているようだ。もちろんトヨタ博物館側もSNSで情報を発信し、ユーチューバーの取材を受けるなど、見てもらう努力を行っている。
「かつて日本食は海外ではなかなか受け入れられませんでしたが、その繊細さや健康面での評価によってぐっと人気が上がりました。アメリカやイギリスが日本専売モデルを輸入し、カスタムして楽しむJDM(ジャパン・ドメスティック・マーケット)が盛り上がっていますが、海外の人から見ると日本車は独特の価値観があり、とてもユニークなのです。
例えば決められた規格の中で最大限のスペースを確保する軽自動車の設計思想はとても高く評価されています。また小型車なのに広い空間を持つとか、スポーティだとか、高級感があるとか、欧米のクルマにはない日本独自のクルマを開発できることが日本のメーカーの強みだと考えられています。海外のお客様のお目当ては圧倒的に日本車です。」
榊原館長は日本人にとっては当たり前だと思っていることが、少し違った視点で見ると当たり前ではなく、とてもユニークなものに見えてくるということを教えてくれる。榊原館長はさらにこう続ける。
「アニメはあっという間に『文化』になったけれど、日本車はそこまで行っていない。なぜだろうといった話を若い社員としたりします。そこで思ったのは『イニシャルD』が海外でも大人気なのは、作品が持つ詳細な描写やストーリーの面白さがあってこそですが、例えば『精巧さ』や『こだわり』といった日本車のよさが根底にあるからではないか、という仮説を抱いています。
イニシャルDをはじめとするアニメが「文化」になりえたのは、国内外の人々の共感を得られたからに違いない。「共感が得られた時に文化になる」と定義できるとすれば8月にトヨタ博物館に5万2000もの人が詰めかけたという事実は大きい。なぜなら共感を生むために欠かせない「関心」がそこにはあると言えるからだ。
「文化」となるうねりは意外なところにあるのかもしれない。豊田章男会長が「クルマをニッポンの文化に!」と話したが、もう少しクルマに関心をもつことが答えへのヒントになるようだ。
次回はトヨタ博物館が収蔵するポスターやカーマスコット、玩具やミニカー、そして図書といったものからクルマ文化を深掘りしたい。
最後に榊原館長おススメのクルマ3台を挙げてもらったので、ぜひトヨタ博物館を訪れ現物を見てほしい。
●榊原 康裕(さかきばら やすひろ)
1965年静岡県湖西市に生まれる。1988年トヨタ自動車入社。ボデー設計部でランクルやカローラを担当。7代目、8代目カムリの製品企画に携わった後レクサスESの開発責任者となり、UX、LM、LBXを担当。2023年ダイハツに出向し海外車種開発責任者となる。2025年1月よりトヨタ博物館館長。エンジニア出身の館長は初めてだという。趣味は身体を動かすことと料理を作ること。
●トヨタ博物館
1989年トヨタ自動車創立50周年を記念して開業。19世紀のガソリン車誕生から現代まで約150台を展示する「クルマ館」とポスターやカーマスコットなど文化資料約4000点を展示する「文化館」がある。
年に数回の走行披露は大人気でクラシックカーフェスティバルやオーナーズ・ミーティングなどさまざまなイベントも開催されている。愛知県長久手市にあり、ジブリパークにもほど近い。10月3日(金)から2026年4月5日(日)まで80~90年代の日本車を特集した企画展『What’s JDM?』が開催される。




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