これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。
当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、フラッグシップサルーンのクラウンに設定されて圧倒的な存在感を示した“ReBORN PINK”を取り上げる。
文/フォッケウルフ、写真/トヨタ
【画像ギャラリー】 ショッキングピンクのインパクトが絶大なクラウンの写真をもっと見る!(8枚)画像ギャラリー伝統を継承しつつ果敢な挑戦で既存の価値観を覆す
50代以上のオジサンたちにとってクラウンといえば、やはり高級セダンの代名詞であり、「いつかは……」所有したい憧れのクルマである。そんなクラウンも現代は、日本の高級セダンではなく、トヨタのプレミアムブランドを象徴する多面的な存在へと進化した。
伝統のセダンはフォーマル用途を担い、クロスオーバーやスポーツは新たな顧客層を開拓し、エステートは実用性を重視したモデルとして展開中。クラウンは、この4車種体系で多様なライフスタイルに対応するブランドへと変貌を遂げた。クラウンは今や“多様化と革新”を体現するブランドとなったのである。
だが思い返せば、その精神は今に始まったことではない。およそ12年前、伝統の重みを背負いながらも果敢な挑戦で既存の価値観を覆したクラウンが存在した。それこそが今回クローズアップする特別仕様車、「アスリートG “ReBORN PINK(リボーンピンク)”」である。
1990年代後半以降、クラウンを購入するユーザー層の高齢化が進み、若年層や女性ユーザーには「重厚すぎる」とか、「年配向け」というイメージが定着していた。トヨタにとってクラウンのブランド刷新は急務であり、既存の価値観を覆すアプローチが求められていた。
そこで打ち出されたのが、クラウンにあえてショッキングピンクを纏わせるという大胆な挑戦である。当時トヨタでは、大規模ブランドキャンペーン「ReBORN」を展開していた。CMに木村拓哉やビートたけしら豪華キャストを起用し、日本における自動車の存在感が希薄化しつつある時代背景のなかで、「もう一度クルマの楽しさを思い出そう」というメッセージを発信していた。
その中心的存在として位置づけられたのがクラウンであり、そして生まれ変わるための衝撃の一手が、ボディにショッキングピンクを纏わせるというもの。伝統のクラウンに「モモタロウ・ピンク」という鮮烈なボディカラーを与えることで、「高級セダンの象徴」とか「いつかはクラウン」という保守的なブランドイメージを打破し、「クラウンは生まれ変わる=ReBORN」を体現したわけだ。
わずか1カ月間の限定で販売された希少モデル
アスリートG “ReBORN PINK”のベースは、2012年に登場した14代目クラウンだ。1955年の誕生以来、クラウンは常に日本の高級車の象徴として君臨してきたが、この14代目は、そんな伝統に真っ向から挑み、「高級セダン=オジサン車」というイメージを打破した異端児だった。
大きな変革を意識して作り込まれデザインの刷新には賛否があったものの、「CROWN ReBORN」という若返りのメッセージは確かに伝わり、従来の顧客層に加えて新たなユーザーを呼び込むきっかけとなった。燃費性能を高めたハイブリッドの投入も時代に合致し、「伝統と革新の両立」を体現したモデルとして評価された。

若返りを象徴するようなグレード「アスリートG」をベースにしながら、外観をピンクで彩るだけでなく、内装にも専用加飾が施され、ステアリングやシートステッチにもピンクのアクセントがプラスされた。高級セダンとしての質感と、遊び心あふれるカラーリングが融合されていた。
ラインナップは、アスリートG“ReBORN PINK”(2.5Lハイブリッド・2WD)と、アスリートG i-Four“ReBORN PINK”(2.5Lガソリン・4WD)の2タイプを設定。注文受付は2013年9月1日から30日までの1カ月間限定で、生産は同年12月から開始された。









コメント
コメントの使い方たった1つの色を限定で設定したという事に対しての、話題性や印象変化の大きさは、とてつもなく費用対効果が大きかった事例といえます。
ただ、どんな車種でも同じことをやって同様の効果を得られるワケがありません。
同じトヨタでも特別色設定は数多くやってますし、最近なら日産Zのベイサイドブルー設定もありました。
元々の車自体に、進化を積み重ねた中身のコダワリや、装備比での割安さがあってこその大成功です。