【絶好調? それとも瀬戸際?】欧州では瀕死も日本では絶好調 ディーゼルの現状と今後


 10年以上前のことだろうか? 街中を走っていると黒煙を吐くディーゼル車のトラックやバンをよくみかけた。しかし、今では黒煙を吐くどころか、臭い、うるさい、汚いというイメージはなくなり、排気ガスは無味無臭のレベルまでになった。

 そうはいっても乗用車全体の50%を超える普及率を誇るヨーロッパを横目に見ながら、日本ではなかなかクリーンディーゼル車の普及が進まない状況がしばらく続き、なぜ日本ではなかなか販売しないんだ、と疎ましく思った人も多いはずだ。

 ところが2015年に起きたVWのディーゼルエンジン排ガス不正事件の影響により、欧州市場における乗用車全体に占めるクリーンディーゼル車の割合が、2015年の51%から年々減少し、2019年には31%までに落ち込んだ。

 いっぽう、日本ではまったくその逆の現象が起きた。クリーンディーゼル車のラインナップ拡充とともに、年を追うごとに販売が伸び続け、2018年には17万76725台、2019年には18万7038台と過去最高を記録した。

 輸入車に関しても2018年には7万台を超え、全体に占めるクリーンディーゼル車の割合が2019年には前年より3.7ポイント上昇し26.9%となり、8万979台と8年連続で過去最高を更新。14ブランドがクリーンディーゼル車をラインナップしており、量販車を中心にして新型車を積極投入している。

 世界では逆風、日本では順風満帆という、なんともおかしな状況だ。そこで、ディーゼルの現状と、今後どうなっていくのか? モータージャーナリストの岩尾信哉氏が解説する。

文/岩尾信哉
写真/ベストカー編集部 ベストカーWeb編集部

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「ディーゼルは悪」は過去の話

今やディーゼルエンジンの臭い、うるさい、汚いは過去の話

 今を遡ること20年以上前の1999年末、東京都というか石原都知事が「ディーゼル車NO作戦」と銘打って、当時はテールパイプから黒煙をまき散らしていたトラックなどの車両を一掃すべく、行動を起こしたことは未だに強く印象に残っている。

 国もこれに呼応して、2000年、2005年と段階的にディーゼル車の排ガス規制の強化を推し進め、2008年に世界のトップレベルといえる現行の「ポスト新長期規制」の導入を決定した(トラックや乗用車の新車の強制適用は2009~2010年)。

 これにより、一気にディーゼル排ガスのNOx(窒素酸化物)や黒煙の元となる煤の浄化技術の開発が進むことになった。

 排ガス規制の流れは欧州でも進み、地球温暖化の抑制を狙った自動車のCO2排出量などを規制する「ユーロ」排ガス規制が施行された。

 結果として、ガソリン車に比べCO2排出量が少ない(早く言えば燃費がよい)ディーゼル車の販売台数は2000年代から伸び続け、一時はEU域での乗用ディーゼル車の新車販売台数は市場の約半分を占めるまでになった。

 長距離を高速移動する機会が多い欧州のユーザーが燃費の良いディーゼル車を好む傾向に拍車がかかったわけだ。

 ところがディーゼル搭載車は思わぬ落とし穴にはまってしまった。欧州のトップメーカーであるVWのいわゆる“ディーゼル不正”が発覚したのは2015年のこと。

 加えて、先に触れたユーロ規制(現行は6dと呼ばれる)では、非常に厳しい基準が設定されたこともあって、2020年1月(乗用車の新たな型式認証車。すべての自動車には2022 年 1月)から適用されている。

 このユーロ6d施行に向けて、いまや自動車メーカーはディーゼル採用に頼り切るわけにもいかなくなり、電動化技術の採用拡大などを進めざるを得なくなったというわけだ。

 欧州の主要自動車メーカーも見切りを付けたのか、ディーゼル車生産台数も減少している。

 2019 年の生産台数は前年比で 6%減少して 10 年ぶりの最低水準となる780 万台にとどまった。

 また、2019年の欧州の乗用車全体に占めるディーゼル車の割合は 31%となり、ピークとなった 2011年の 55%から20%も減少している。

 VWの排ガス不正問題が 2015 年に発覚した当初、欧州のディーゼル車生産台数はこの問題にほとんど反応しなかったが、社会の意識の変化とディーゼル車用の後処理システムのコスト上昇が重なって、今になってその影響が深刻化し始めている。

 ディーゼル車の生産は、二酸化炭素排出規制の効果が最大で、排ガス制御システムのコスト回収が最も容易な高級車に集中するようになっている。

欧州市場でのディーゼル車の占有率(JATO調べ)
日本におけるクリーンディーゼル車のシェア(日本自動車工業会調べ)

排気ガスの黒煙がなくなり、なぜキレイになった

 ディーゼルエンジンの排ガス浄化技術は、主に欧州メーカーによって進化をこれまで続けてきた。

 これを担ってきたのが、燃料噴射と排ガスの後処理という研究開発の二本柱である。

 この結果、最近では欧州のみならず、日本でもいわゆる“ドイツ御三家”はディーゼル搭載車を広くラインナップに設定している。

 VWに関しては、先述の排ガス測定時のプログラミング不正による多額の罰金など打撃を受けた影響で進捗は進まなかったものの、新たな技術を導入して巻き返しを狙っている。

 先の二本柱の技術的な進化は1990年代に始まった。ガソリンエンジンがシリンダー内で吸気と燃料を混合させてスパークプラグで点火する方式を採るのに対して、ディーゼルエンジンはシリンダー内に送り込まれて圧縮された吸気に軽油を高圧噴射して自己着火させる。

 ただし、シリンダー内で吸気と混ざり合う際に、燃料の濃さにムラが出来るために不完全燃焼を起こしてNOxが発生しやすいため、これを抑える技術が開発されてきた。

 この代表例が燃料ポンプを基本とした旧式のシステムからより高圧の燃料噴射を可能としたコモンレールシステムだ。ちなみに、燃料の噴射圧はディーゼルでは2000bar以上(ガソリンは300~500bar)まで達している。

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