排気ガスの黒煙がなくなり、なぜキレイになった
ディーゼルエンジンの排ガス浄化技術は、主に欧州メーカーによって進化をこれまで続けてきた。
これを担ってきたのが、燃料噴射と排ガスの後処理という研究開発の二本柱である。
この結果、最近では欧州のみならず、日本でもいわゆる“ドイツ御三家”はディーゼル搭載車を広くラインナップに設定している。
VWに関しては、先述の排ガス測定時のプログラミング不正による多額の罰金など打撃を受けた影響で進捗は進まなかったものの、新たな技術を導入して巻き返しを狙っている。
先の二本柱の技術的な進化は1990年代に始まった。ガソリンエンジンがシリンダー内で吸気と燃料を混合させてスパークプラグで点火する方式を採るのに対して、ディーゼルエンジンはシリンダー内に送り込まれて圧縮された吸気に軽油を高圧噴射して自己着火させる。
ただし、シリンダー内で吸気と混ざり合う際に、燃料の濃さにムラが出来るために不完全燃焼を起こしてNOxが発生しやすいため、これを抑える技術が開発されてきた。
この代表例が燃料ポンプを基本とした旧式のシステムからより高圧の燃料噴射を可能としたコモンレールシステムだ。ちなみに、燃料の噴射圧はディーゼルでは2000bar以上(ガソリンは300~500bar)まで達している。
進化した排ガス後処理技術
燃料噴射装置に関しても高圧に対応可能なピエゾインジェクターなどを採用。さらにノズル部を多孔式とすることで噴霧の細分化を実現するとともに、燃焼行程で複数回の精密な燃料噴射を可能としたことで、より精密な燃焼を実現した。
排ガスの後処理技術については、ディーゼルでは一般的といえるターボ過給ともに、排気ガスを吸気側に戻して新しく吸った空気と混ぜることによって燃焼温度を下げてNOxの生成量を減らすEGR(排ガス循環処理) や 排ガスを処理する酸化触媒とNOx触媒を装着してきた。
前者は炭化水素と一酸化炭素を白金やパラジウムなどの触媒を用いて無害な二酸化炭素や水に変換する。後者はNOxを窒素とアンモニアに変化させてNOx発生を抑制する。
ただし、これだけの技術では、より厳しくなってきた排ガス規準をクリアすることができなかった。
そこで気管や肺といった呼吸器系に悪影響を与えるPM(パティキュレート・マター:粒子状物質)を捕集するために開発されたのがDPF (ディーゼル・パティキュレート・フィルター)だ。
細かな孔が穴を開けたセラミック材料が主流で、フィルターというだけあって定期的に交換が必要になる。
NOx触媒として新たに開発されたのがSCR(選択式還元触媒)システムだ。この中で開発が進んだ尿素SCRは、国際規格化された「AdBlue」(尿素を含む液体)を排ガスに添加して、NOx触媒内に残ったNOxの分解を助ける。
ただし、これほど技術開発が進んでも、ポルシェ911などはガソリンエンジンでもユーロ6での厳しいPM対策としてG(Gasoline)PFを装着しているほど、現行のユーロ規制は厳しい内容となっているためことで、ディーゼル車がいわば“余分な”後処理装置を装着することでコストが高くなることは否めない。
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