無意味な64馬力自主規制が撤廃されない背景
この無意味な自主規制が存続している理由は、軽自動車の税制を守るためだ。仮に自主規制を終わらせると、国に増税の言い訳を与えてしまう。「従来から軽自動車の居住性や装備は小型車並みで、最高出力まで同等になったのだから、税額の格差も解消すべき」という話になる。
したがってエンジン排気量やボディサイズの拡大議論も同様だ。軽自動車の開発者は「軽自動車のエンジン排気量を800cc前後に拡大できれば、動力性能、燃費、環境性能のすべてをバランス良く向上できる」という。走行安定性と乗り心地についても「全幅の規格枠を70mm広げて1550mmにできれば、安全性と快適性を大幅に高められる」と指摘する。
N-BOXやタントのボディでは、全高の数値が全幅の1.2倍だから、この縦横比を5ナンバー車に当てはめると全高は2mを超えてしまう。軽自動車のボディは相当に縦長で、操舵感や安定性に無理が生じるのは当然だ。
そこで規格を改めたいが、むやみに推し進めると、軽自動車の税金が高くなってしまう。特に公共の交通機関が未発達な地域では、高齢者が毎日の買い物や通院に古い軽自動車を使っている。都市部に住んでいればシルバーパスなどで安く移動できるのに、クルマを所有せざるを得ない地域が多い。
そして従来の軽自動車税は年額7200円だったが、2015年4月1日以降に初度届け出された車両は、1万800円に高められている。さらに初度届け出から13年を経過すると、年額1万2900円に増税される。軽自動車の自動車重量税も、車検時に納める2年分の6600円が、13年を経過すると8200円、18年を経れば8800円に高まる。
公共の交通機関が未発達な地域には、2006年以前に初度届け出された軽自動車も数多く走っているので、国は年金で暮らす高齢者から多額の税金を巻き上げているわけだ。
BEV時代で崩れる64馬力の壁? サクラとスーパーワンが示す未来
電動化が進むなかで、この64馬力ルールに変化の兆しかと思えるトピックスがあった。その象徴が日産サクラだ。日産サクラの最高出力は64ps、最大トルクは19.9kgm。数値上は64馬力の自主規制を守っているが、トルクはガソリン軽ターボの約2倍に達する。この圧倒的なトルク特性により、発進加速や中間加速は従来の軽自動車を大きく上回る。
さらにホンダのN-ONE e:は、最高出力64ps、最大トルクは16.5kgmとされており、こちらも従来の軽とは別次元の力強さを持つ。つまり軽BEVは「馬力は同じでも最大トルクが違う」のである。モーターは低回転から最大トルクを発生できるため、体感性能ではすでに64馬力の枠を超えている。
その未来を象徴する存在が、N-ONE e:をベースした小型車、スーパーワンである。スーパーワンのパワートレインはN-ONE eと共通だが、64馬力がBOOSTモードに入れると95馬力まで引き上げられる。
それと同時に標準装備となるBOSEプレミアムサウンドシステムによって4気筒エンジン車のようなサウンドが楽しめるようになり、仮想有段シフト制御(MT)により7速DCTのようなキレのある変速ショックやG変化が体感できるようになる。
スーパーワンは、シティターボIIブルドックの再来と言われているが、シティターボIIには、エンジン回転が4000rpm以下で、スロットルを全開にした場合、過給圧を10秒間約10%もアップさせてくれるスクランブルブーストを採用していた。実に憎い演出をしてくれたものだ。
ここで重要なのは「制御ひとつで出力を引き上げられる」という点だ。しかしBEVではソフトウェア次第で出力特性を自在に変えられる。つまり技術的にはすでに規制を超えることは容易なのである。
個人的には最高出力ではなく、最大トルクを引き上げることによって、CVTの音だけうるさくてなかなか前に進まないNA車の発進加速を改良してほしいものである。
また2026年後半に登場予定の次期タントe-スマートハイブリッド、2026年度内に発売予定のスズキVision e-Sky(次期ハスラーEV?)など、軽乗用BEVに注目したい。
【画像ギャラリー】サクラ、N-ONE e:はもはや軽自動車の走りを超えている!(8枚)画像ギャラリー












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