ラッキービーストは僕らの手の中に 「ボス」を作っちゃった人と自動運転とAI【編集部便り】

 ある日、日課のひとつとしてネット上の『けものフレンズ』情報をあさっていたところ、「けものフレンズに出てくるラッキービーストが欲しい。ので、作ったった。」というブログ記事を発見しました。

 つ、つ、作った??? 

 本記事は、ラッキービーストが好きすぎて熱いレビューを書いてしまった編集部員が、ラッキービーストが好きすぎて作っちゃった人にコメントをいただいた記事です。

 それと、ついでに自動運転の未来について、ちょっとだけお届けします。大変大変恐縮ではありますが、『けものフレンズ』に興味がない方は、なんのことやらさっぱりな記事となっております。なにとぞご容赦ください。

文:ベストカーWeb編集部 図&動画&写真:Sousaiさん、Shutterstock.com


■「ボスを作っちゃった動画」に「技術の真骨頂」を見た

 上述のとおり、ある日ぼんやりツイッターを眺めておりましたところ、

「けものフレンズに出てくるラッキービーストが欲しい。ので、作ったった。」

 というブログ記事&動画がタイムラインに流れてきました。

 おいおいちょっとちょっと、「欲しい」というなら私だって欲しいですよ。ラッキービーストほしい。ボスほしい。超ほしい。

 でもそんなのどこにも売ってないし、一朝一夕で出来るものでもないでしょう。それを「作ったった」ってそんな……

http://www.nicovideo.jp/watch/sm31143673

 ボ、ボ、ボスだ……ボスがしゃべった。

iPhoneが埋め込まれてる……。
口調がめっちゃボスっぽい
「アワワワ…アワワワ……」も完全再現

 最高に可愛くて5回くらい連続で再生してしまいました。

 本企画担当者が特に感動したのは、このラッキービーストが、「ありもの」で作られていたことです。

 iPhoneに画像認識機能を持たせられることは知っていました。Wikipediaももちろん知っています。翻訳機能も口調変換も、iPhoneに喋らせることも、それぞれ「そういうのがある」ということは知っていました。

 しかし「それを組み合わせれば、ラッキービースト(に近いもの)が作れるんじゃないか」とまでは思い至らなかったのですね。卵を立てるには、殻の下部を割ってしまえばいいわけです。

 すごいなあ……これぞイノベーションだよなあ……。

 ボスを見て「あれとこれとそれを組み合わせれば、ああいうふうに動く機械を作ることができる」と思いつくこと、何と何の組み合わせかを示すことこそ、日本語では「分かる」と「分ける」が同じ漢字で作られていることの意義なんだなと実感した次第。

 「これはぜひ、製作した方にコメントをもらいたい!」と、慌ててツイッターにてダイレクトメッセージをお送りし、当サイトへの転載許可とコメント依頼をお願いしましたところ、御許可をいただきました。

■製作者である「Sousai」さんへの一問一答

 ベストカーWeb編集部(以下、編集部):どのようなキッカケで「ラッキービーストを作ってみよう」と思われたのでしょうか?

 Sousaiさん:一緒にけものフレンズを見ていた友達が笑ってくれるかなと思って、作り始めました。

 最初はただのチャットボットだったのですが、作り始めてみたら段々楽しくなってきてしまい、発泡スチロールでボディを作ったり、音声認識やらを試していくうちにいまの形になりました。

 編集部:動画に「ニコニコ技術部」のタグがありました。今回のラッキービースト以外に、これまで何か製作物をWEBにアップロードした経験はありますでしょうか? 

 ある場合はそれはどんなもので、そちらも紹介してよろしいでしょうか?

 Sousaiさん:モノを作って「ニコニコ技術部」のタグで投稿したのは今回で2回目です。

 3年ほど前に457円の凧にGoProをつけて空撮をしてみる、という動画を投稿したことがあります。クオリティが低いので全然伸びなかったですが…

http://www.nicovideo.jp/watch/sm23212890

 他には、たまにギターを弾いてみた動画をアップロードしたりしています。

 編集部:『けものフレンズ』の感想と、好きなフレンズを教えてください

 Sousaiさん:けものフレンズは、Twitterで話題になっていたことで存在を知り、視聴し始めました。最後の数話は夜中に起きてリアルタイム視聴するほどハマり、周りの友人にも布教したりしていました。

 登場キャラクターの素直で清々しい様子と、牧歌的な世界観の中で時折見え隠れする不穏な空気など、引き込まれていく要素が沢山ありましたが、なにより毎週の放送の合間に人の考察を聞いたり、自分の考察を話したりしてコミュニケーションをとる時間がとても楽しかったです。

 その時間があったからこそ、今回ラッキービーストを作ってみようと思いつき、それをネタにまた楽しい時間を過ごさせていただいているので、本当に生活を楽しくしてくれる素敵なアニメだと思っています。

 登場キャラクターの中では、なんといってもボスが一番好きです。ベストカーさんも記事で指摘されていましたが、理系の人間として、やはりラッキービーストと他のキャラクターたちの関係性はとても素敵だなと思います。

 フレンズの中ではサーバルとコツメカワウソが好きです。

 編集部:動画に登場した(自主製作)ラッキービーストは、どれくらいの期間で作れたか、費用はどれくらいかかったかもお伺いできれば幸いです

 Sousaiさん:外側部分については、2晩くらいです。試作に使ってボツになった発泡スチロール・塗料なども含めて、ほとんどの素材は100円ショップで購入したものなので、合わせて800円くらいです。

 最初のチャットボット(単語を入力すると、Wikipediaの内容を調べてボスっぽい口調で喋ってくれるもの)は1時間くらいで出来ました。

 その後、iPhoneアプリ化して画像認識や音声認識部分を作るのに2-3日かかりました。こちらは、基本的に全部無料のサービスを組み合わせているのでお金はかかっていません!

 以上、Sousaiさんへからいただいたコメントでした。ありがとうございます。そしてラッキーさん製作実費800円!! ほしい!! 1万円でもほしい!

 Sousaiさんのブログはこちらです。

【Sousaiさんのブログに掲載された、ラッキービースト概念図】

 (自主製作の)「ラッキービースト」はコメントをいただいた時点より着々と進化しており、その様子も綴られております。お時間ある方はぜひご参照ください!

■自動運転の課題とITメーカーの介入

 2016年後半から2017年にかけて、大手IT企業による自動運転開発の進捗ニュースが続々と入っています。以下、ちょっとだけ業界的な込み入った話をします。

 長年自動運転車両技術の研究を続けてきたGoogleは2016年12月に新会社「Waymo」を立ち上げて開発を続けており(Waymoは同月にホンダと技術提携を結んでいます)、

 マイクロソフトは2017年1月にラスベガスで開催された「CES2017」にて「Microsoft Connected Vehicle Platform」を発表。すでにルノー日産と共同開発を続けています。

 Amazonが開発したAI技術「Alexa」は、すでにいくつかの自動車メーカー(フォード、BMW、ヒュンダイ等)が実際に車両へ搭載されているか、あるいは搭載する計画を明らかにしており、Appleもこれまで長く「社内では自動車事業の研究が続けられている」と報じられていましたが、

 2017年4月14日、アメリカ・カリフォルニア州の車両管理局(DMV)の公式ウェブサイト上に自動運転車のテスト認可を受けた企業として(テスラやGoogleに加えて)Appleの社名が登場。ついにその開発の進捗が表面化しました。

 近い将来、年間1億台といわれる世界自動車生産台数のそれぞれに「なんらかの通信装置」が搭載されることは確実視されており、Google、マイクロソフト、Amazon、Appleらはその通信基盤と、人とのインターフェースになんとか入り込もうとしているわけですね。

 さらにいえば、彼らITメーカーは自動車メーカーと一緒に自動車を作る【以上のこと】を考えています。

 つまり「自動運転が普及すれば、そこに乗る人たちはいっせいにネットに繋ぐだろう。

 その時のオペレーションシステムに食い込みたい」、「自動運転時の、その空間と時間、体験そのものを丸ごとごと手に入れたい」と考えているわけです。

 (ここらへんの詳細は『BUSINESS INSIDER JAPAN』の「アップルは自動車ではなく、それ以上のものに取り組んでいる」をご参照ください)

 いやーさすがにスケールが大きいですねー。

 さてそれに加えてもう一点。

 現在、自動運転技術が抱える課題のひとつに、「人と車の協調」があるわけです。

 電車だったら運転士に操縦を任せてただ乗っていればいいだけなのですが、レベル3以前の自動運転技術では、人が運転席に座って一定程度操縦する必要がある。

 そうした時に、車から人(運転者)に「なぜこういう状況でこういう操作が必要なのか」という情報の伝達が必要なんですね。

 多くの自動車メーカーは、車を「単なる移動手段」とは考えていません。「移動のパートナー」にしていこうと考えているわけです。

 ここ、ちょっと分かりづらいので少しだけ詳しく説明しますと、例えば車側がハンドルとアクセルとブレーキを制御していて、人(運転者)は運転席に座っているだけの状況の時に、車側が突然ハンドルを右に切ったとします。

 人は驚いて「壊れたかな?」と思うわけですが、車側は「左側から子供が飛び出してくる可能性が62%あった」などと判断していた可能性もあるわけです。

 その場合、そうした情報を直接的・間接的に人(運転者)へ伝える機能が、車側にも必要になってくる。

 そしてここに「コミュニケーション」、「共同作業」が介在します。

 例えばトヨタはそれを「Mobilty Teammate Concept」と呼んでおり、

 「人と車が同じ目的で、ある時は見守り、ある時は助け合う、気持ちが通った仲間(パートナー)のような関係を築き、車を操る楽しさと自動運転を両立させる、トヨタ独自の自動運転の考え方」と称しています。

 いやあ、私たちはこの概念を知っていますよね。そうです。

 『けものフレンズ』におけるラッキービーストとジャパリバス、カバンさんとサーバルさんの関係こそが、トヨタが目指す「人と車(とそれを操作するAI)のパートナー関係」の、理想型のひとつだと思うのです。

 自動運転も人工知能も、間口が広くて奥深い技術分野であるがゆえに、一般ユーザーにとってもエンジニアたちにとっても、とかく論点が散逸しがちです。

 どういうことかといえば、「ようするにこれが大事なんだ」というポイントがまだまだたくさんあって、社会的な共感を得にくいんですね。

 そういう状況だからこそ、大切なのは「使っている姿を明るく楽しく想起できること」、つまりイメージやクリエイティブの領域であり、その点においてやっぱり『けものフレンズ』は優れた作品だよなあと思うわけです。

 すべての車両の助手席に「ボス」のようなインターフェースが設置され、そこにスマホをはめ込むとアプリが起動し、「オハヨウ、キョウハ ドコへイク?」と話しかけてくれる時代は、もう目の前に来ているかもしれません。

 『けものフレンズ』本編や、本記事で紹介したSousaiさんが製作した「ボス」は、そんな「夢」を一足早くかたちにして見せてくれるものでした。

 自動運転とAIが実現してくれる未来には、「高齢化社会対策」や「交通事故死者軽減」といった逼迫した社会状況の改善もさることながら、楽しくて明るくて多様性を包み込むような、まさに『けものフレンズ』のような体験も含まれているはずだと信じております。

 なお本記事担当の好きなフレンズは相変わらずアルパカさん、推しエピソードは「第3話」なのですが、最近アライさんも気になってます。

 ※)例によって例のごとく、一部の文章で情熱が溢れてしまったことをお許しください。なお本記事とはあまり関係ありませんが、『けものフレンズ BD付きオフィシャルガイドブック(3)』 は5月26日発売予定です(予約しました)。

【このほかの「編集部便り」】

■『けものフレンズ』に自動運転とAIの幸せな可能性を見た【編集部便り】 

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