CR-X シティターボIIブルドッグ…ホンダの突き抜けたボーイズレーサーの魅力とは?

CR-X シティターボIIブルドッグ…ホンダの突き抜けたボーイズレーサーの魅力とは?

 1980年代のバブル景気真っ只中、現在50代~60代のおじさんたちが、みなクルマ好きの青年だった当時、熱狂したクルマが登場した。

 日本の自動車メーカーが、クルマ好きの青年をターゲットに「ホットハッチ」あるいは「ボーイズレーサー」と呼ばれた“かっ飛び”モデルがそれだ。

 なかでも、1983年にF1GPに復帰したホンダは、いかにも“らしい”スポーティカーを生み出した。そのクルマの名は、FFライトウェイトスポーツのCR-Xと、ブルドッグと呼ばれたシティターボIIである。

 登場から40年近い時を経た今、中古車市場ではいくらで流通しているのだろうか?

 S30型フェアレディ240ZGのオーナーで、まさにボーイズレーサー絶頂期にクルマ青年だった、モータージャーナリストの岩尾信哉氏が解説する。

文/岩尾信哉
写真/ベストカー編集部 HONDA

【画像ギャラリー】当時熱狂したCR-XとシティターボIIブルドックの詳細写真


ボーイズレーサーの筆頭格

800kgの軽量ボディに110ps/13.8kgmの1.5L、直4SOHCエンジンを搭載したCR₋X(1.5i)はまさにFFライトウエイトスポーツという言葉がピッタリ
800kgの軽量ボディに110ps/13.8kgmの1.5L、直4SOHCエンジンを搭載したCR₋X(1.5i)はまさにFFライトウエイトスポーツという言葉がピッタリ

 当時のコンパクトかつホットなモデルとしては、トヨタではEP71スターレットターボ(通称スタタボ)やカローラFXが生まれた。

 これに対してホンダは1980~1990年代にかけて、モータースポーツでの第二期F1参戦や国内レースでのシビック(EF/EG)の活躍などを背景に、スポーツモデルでの存在感を高めていった。

 なかでも1983年10月に登場した、独特なエアロフォルムと軽量コンパクトなボディをまとった、当時3代目ワンダーシビックと兄弟車のバラードの派生モデルとして登場したバラードスポーツCR-Xは、当時のホンダファンだった若者たちの心を鷲づかみにした。

 この初代CR-Xの個性的な成り立ちについて少し触れておくと、元々空力を含めた燃費性能を極めるために開発された実験車両を基本に、小型軽量化を施したモデルとして開発されたことが強い個性をもつに至った理由といえる。

 ホンダがプレス資料に掲げたメッセージには、開発エンジニアの思い入れがコンセプトとともに熱く語られているので、スペックの紹介を兼ねて抜粋しておきたい。

 「バラードスポーツCR-Xは、既成のクルマ概念にとらわれずに、居住性や走りなど、人 間をとりまくクルマの性能、機能を最大限に追求しながら、一方ではこれらを生み出すエンジン、 サスペンションなどのメカニズム部分は小型、高密度で高性能な設計にするといった、M・M思想(MAN(マン)―MAXIMUM(マキシマム)、MECHA(メカ)―MINIMUM (ミニマム))をもとに開発」と、コンセプトとパッケージングに触れたうえで、エンジンは軽量、コンパクトな新開発の12バルブ・クロスフローエンジンを搭載した。

 これにより1.5iでは110psの高出力を、1.3では20.0km /L(10モード燃費、5速車、運輸省審査値)の低燃費を実現している、と解説している。

燃費改善の研究用試作車。空力を意識してバッサリと切り捨てられたリアエンドのデザインやフェンダーやバンパーなどの高分子樹脂製パネル採用により軽量化(米国市場では燃費の良さを表現する50マイルカーとして発表された)
燃費改善の研究用試作車。空力を意識してバッサリと切り捨てられたリアエンドのデザインやフェンダーやバンパーなどの高分子樹脂製パネル採用により軽量化(米国市場では燃費の良さを表現する50マイルカーとして発表された)

 足回りへのこだわりもみせ、「サスペンションは、フロントに操縦性、回頭性にすぐれたトーションバーストラット式サスペンションを、リアには路面追従性、高速安定性にすぐれたトレーリングリンク式ビームサスペンションを採用している」とした。

 「さらに、空力特性にすぐれた個性的で新鮮なスタイリングや、新素材を採用した軽量・高剛性のモノコックボディ、高効率ロックアップ機構付ホンダマチック3速フルオート、世界初の電動アウタースライドサンルーフ、量産乗用車世界初のルーフ・ラム圧ベンチレーションなど、数多くのホンダ独自の高密度なメカニズムにより、Fライトウェイトスポーツにふさわしいクルマとしている」と締めくくるなど、新技術の“てんこ盛り”の解説に酔いしれたのが懐かしい。

 特に“燃費スペシャル”の実験車という出自を基本に、空力ボディに関してはCd値0.30を達成したうえで個性的なスタイリング(“半開きまぶた”のフラップ付きセミリトラクタブルヘッドライトも忘れてはいけない!)を施されるなど、斬新なコンセプトに筆者を含めてワクワクさせられた若者は多かった。

 そこで当時の印象を、当時中古車ながら憧れのクルマを手に入れた、ホンダファンの古い友人から聞くことができた。

 その友人によると、メディアで多くのホンダ車の特徴とまで言われていたボディ剛性の低さ(上記の資料のコメントにある高剛性とは裏腹に)や耐久性の乏しさは残念ながら正解だったようだ。

 また、電動アウタースライドサンルーフでは立て付けの悪さから雨漏りに見舞われたという。

 このクルマの魅力だった軽量ボディ(樹脂製部品のフロントフェンダーやドア外板パネル加飾、前後バンパーなどを採用し、1.5iで800kg)を生かした、軽快なハンドリングさとの両立は難しかったようだ。

 このように様々な理由で強烈な個性を生み出した、空力を意識したスタイリングと軽さを活かしたハンドリングの魅力は2代目へと受け継がれ、さらにハイパワーの獲得へと進んでいった。

ボディはABS樹脂とポリカーボネートをベースとした複合材料「H.P.ALLOY」をフロントフェンダーとドア外装などに使いポリプロピレンをベースとした「H.P.BLEND」を前後バンパーに採用
ボディはABS樹脂とポリカーボネートをベースとした複合材料「H.P.ALLOY」をフロントフェンダーとドア外装などに使いポリプロピレンをベースとした「H.P.BLEND」を前後バンパーに採用

■初代バラードスポーツCR-X エンジン主要諸元
●AE型(1.3):1.3L、EV型、SOHC CVCC、最高出力/最大トルク:80ps/11.3kgm。車両重量:760kg
●AF型(1.5i):1.5L、EW型、SOHC CVCC、最高出力/最大トルク:110ps/13.8kgm。車両重量:800kg
●AS型(Si):1.5L、ZC型、DOHC、最高出力/最大トルク:135ps/15.5kgm。車両重量:860kg

■初代バラードスポーツCR-X 1.5i 主要諸元
●全長×全幅×全高:3675×1625×1290mm
●ホイールベース:2200mm
●重量:800kg
●エンジン:EW型直4SOHC
●排気量:1488cc
●最高出力:110ps/5800rpm
●最大トルク:13.8kgm/4500rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:175/70SR13
●価格:138万円

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