180SXの中古車は今いくらで買える?
そして、日産180SXの価値、すなわち「ジャストサイズなFRスポーツである」という価値は2020年の今となってもさほど減じていないせいか、その中古車は今なお豊富に流通しており、カーセンサーnetにおける5月下旬現在の掲載台数は104台。S13シルビアの掲載台数が50台なので、180SXのほうが倍以上多いことになる。
全体の相場は70万~360万円と上下に幅広いが、「ボリュームゾーン」というのは特になく、この価格帯の中にまんべんなく物件が散らばっているという相場状況だ。
シルエイティは今でも中古で買える?
そのようにS13シルビアなき後も長らく人気を博した180SXといえば、「シルエイティ」の存在も忘れるわけにはいかない。
シルエイティとは、要するに180(ワンエイティ)のボディにS13シルビアのフロントまわりを移植した車両のこと。
180SXとS13シルビアは前述のとおり姉妹車の関係にあるため、パーツの互換性が高く、ややこしい板金作業なしで顔面移植が行えたのだ。
そもそもなぜ180SXにS13シルビアの顔面を移植することになったかといえば、その発端は、走り屋さんが180SXの前部を破損させた際に「リトラクタブルヘッドライトだと部品代も修理代も高い。
だがシンプルな作りで台数も多いS13シルビアの前部を使えば、安価に直すことができる。さらにフロント部分の軽量化にもつながる」と考えたことから始まったと言われている。
そうして出来上がったシルエィティが自動車雑誌に掲載され、さらには当時の大人気マンガ『頭文字D』のなかで佐藤真子の愛機として青のシルエイティが採用されたことなどから、その人気はプチ爆発。
「S14は肥大化してしまって買う気になれないが、シルエイティ化すれば、大好きだったS13のデザインがまた味わえる!」ということで、180SXの顔面スワップはちょっとしたブームになったのだ。
また1998年5月には限定500台で、日産純正のシルエイティが販売されたこともあった。
これは名古屋のチューニングショップ「きっずはぁと」が、日産ディーラーに制作を委託したことによって実現したもので、純正シルエイティにはN1ライトやサイドステップ、専用ロゴやニスモ製LSDなどが装備されていた。
このメーカー純正シルエイティは、数あるシルエイティの中で商標登録を使用することが日産から認められた唯一の車両。そのため現在シルエイティという名前は、日産公式の名称として存在していることは意外に知られていない。
そんなシルエイティは今でも買うことができるのか……といえば、実はできる。まだまだごく普通に、全国の中古車販売店で売られているのだ。
とはいえ、その台数は決して多くはなく、180SX全体の流通台数が104台であるのに対し、いわゆるシルエイティはそのうち6台。相場は98万~225万円といったところだが、6台中5台は98万~150万円あたりのゾーンに集中している。
また、180SXにS13シルビアの顔面を移植したのがシルエイティであるならば、「ワンビア」と呼ばれた「S13シルビアにワンエイティの顔面とリトラクタブルヘッドライトを移植したクルマ」の存在も気になるところだ。
こちらは当時シルエイティほどの人気はなかったが、それでも「ワンビアの中古車」はまだまだ全国で3台流通しており、その相場は70万~190万円といったところ。レア物好きにはたまらない選択かもしれない。
そしてシルエイティは、「D1」などのドリフトの世界でもいまだ活躍している。とはいえ、さすがにD1のトップカテゴリーである「D1 GRAND PRIX」でシルエイティを使っている選手はおらず、シルビアを使う選手の多くはS15を選んでいる。唯一、唄 和也選手がシルエイティ化されていない普通の180SXで参戦している程度だ。
しかし「D1 STREET LEGAL」というひとつ下のカテゴリー、すなわち公道走行可能な範囲のチューニングだけで行われるカテゴリーでは、岩崎 剛選手と梶原 聡選手、脇 敬朗選手がS13ベースのシルエイティを使って激走している。
また「美しすぎるレーシングドライバー」との異名を取りながら内外のレースとドリフト、ラリーに参戦している塚本奈々美選手は、2015年に映画『新劇場版頭文字D』のプロモーションアンバサダーを務めた関係で、まさに「佐藤真子仕様」そのものの青いシルエイティを製作。2015年のD1 STREET LEGALに参戦し、2017年には中国・珠海のZICサーキットヒーロードリフトバトルにもシリーズ参戦している。
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