「そうそう、こういう時にこんな機能がほしかったんだよね!」 そんな風に思わせてくれる「気配り」のよくできた道具に出会うのは、意外と難しかったりする。
マス・プロダクトにおいて、趣味嗜好の違うユーザーたちそれぞれに応えられるようなものづくりというのは、そもそもものすごく難しい。
だからこそ、万人受けするような高い実用性を備えた道具には、時に畏敬の念すら抱いてしまう。
そこで今回は、感動すら覚えるほどの実用性を備えた過去~現在の国産車10台をピックアップしてご紹介!
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※本稿は2020年5月のものです
選出・本文/渡辺陽一郎
初出:『ベストカー』 2020年6月26日号
■使いやすくて役に立つ! 人に優しく実用的なクルマたち
クルマの実用性には、居住空間の広さ、荷室容量やシートアレンジ、視界や小回り性能による運転のしやすさ、乗降性などがある。
居住空間や荷室の広さでは、2001年に発売されたモビリオに注目したい。
フィットと同じく燃料タンクを前席の下に搭載して、車内後部の床が低い。
3列目に座っても床と座面の間隔が充分に保たれ、膝の持ち上がる窮屈な姿勢にならない。全長は4055mmと短いが、多人数で乗車できた。
3列目を2列目の下に格納すると、大容量の荷室になった。
ミニバンでは1995年に登場したボンゴフレンディのオートフリートップが実用的だ。
ルーフの上部に装着されたテントが電動で持ち上がり、2名が就寝できる1850×1080mmの空間を確保する。
下側の居住空間もフルフラットになって2名が寝られるから、合計4名の就寝を可能にした。
ちなみに当時のキャンピングカーのポップアップルーフは手動式で、畳む時には上手に降ろさないと、両脇のテントが外側へハミ出した。
それがオートフリートップは、スイッチ操作だけでキレイに畳めたから驚いた。
衝突安全性の問題もあろうが、復活してほしい装備だ。
現行型のミニバンではデリカD:5。
最低地上高に余裕があり、ロックモードを備えた4WDと相まって、ミニバンでは悪路走破力が最も高い。
エンジンはディーゼルターボで、実用回転域の駆動力が高いから、悪路走破力を一層向上させる。空間効率も優れ、全長が4800mm以下のミニバンでは3列目が最も広い。
軽自動車では現行タントが注目される。
左側のピラーをスライドドアに内蔵させ、前後両方を開くと、開口幅が1490mmに広がる。
助手席をあらかじめ前側へ寄せておくと、ベビーカーを抱えて乗車できる。
主力グレードの運転席にも長いスライド機能が備わり、子供を左側のチャイルドシートに座らせた後、降車しないで運転席へ移動できる。子育て世代に最適だ。
視界と小回り性能では、2003年登場のスズキツイン。
2人乗りの軽自動車で、全長は2735mmだから、ほかの車種より660mm短く、最小回転半径は3.6m(現行アルトの売れ筋が4.2m)。
ウィンドウの面積が広く視界も優れ、車庫入れのしやすさは抜群だ。
コンパクトカーでは、1992年発売の2代目マーチが運転しやすい。窓の広い水平基調のボディは、前後左右とも抜群に見やすい。
全長は3695mm、全幅も1585mmと小さく、最小回転半径は4.6mだから縦列駐車も簡単だ。
1996年登場の初代デミオも視界が優れ、全高は当時では少し高い1500mm(ルーフレール非装着車)。
全長が3800mmと短いわりに、車内は広かった。立体駐車場も利用しやすく、合理的なクルマであった。
SUVなら現行ジムニーだ。軽自動車サイズのボディに本格オフロードSUVの機能を凝縮して、ホイールベースも短いから悪路走破力は抜群。
狭く曲がりくねった林道も走りやすく、日本で買えるSUVでは走破力が最も高い。
このほかセダンでは、1998年登場のプログレが実用的。
直6、2.5Lと3Lエンジンを搭載しながら、全長は4500mm、全幅は1700mmに収まる。
外観はウィンドウの広い水平基調で、ピラーの角度も立てたから視界がいい。
運転がしやすく、外観は控え目で威張らない上品な高級セダンであった。今の時代にこそ、こういう穏やかなクルマが必要だ。
ワゴンなら1998年発売の5代目ビスタアルデオ。
5ナンバー車ながら、全高は1515mmと高めで、ホイールベースも2700mmと長い。
4名乗車も快適で、荷室容量も充分に確保した。しかも視界がいいから運転しやすく、車内の雰囲気も明るい。
この時代のトヨタは、プログレを含めて、人に優しい日本向けのクルマを積極的に開発していた。
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