「クラウン」にはなれない訳? セダンを復権させる方法を真剣に考えてみた

セダン復権のためにできること

 クラウンやカローラにはなれない、となると、セダン復権のためにできることは「使い勝手やパフォーマンスといった機能的な価値によらずに、ユーザーを惹きつけること」これしかない。

 そのために手っ取り早い方策として、そのクルマを愛でたくなるような、「情緒的な価値」を与えるのはどうだろうか。具体的には、過去にファンから支持されていたセダンを、現代の技術水準で、そのままのスタイリングで復活させる、という案だ。いつまでたっても忘れられない、心に刻まれた名車に絞り、復刻生産をするのだ。

U12ブルーバードのような名車を、このままのボディスタイルで限定販売したらどうだろうか

 当時の姿のまま復刻することが目標だ。ボディサイズは当然そのままに、目に入る内外装のデザインはすべてオリジナルのものとする。ただし、衝突安全性能や排ガス規制といった法規は当然クリアする必要があるし、最低限の現代技術は採用するが、クルーズコントロールやステアリングアシストシステムといった先進運転支援技術はつけない。

 こうした条件で、例えばR32型スカイライン、初代プリメーラ、ブルーバード、6代目マークII、初代セルシオ、といった、当時の若者が飛びついたような、歴史的なセダンを順々に出していくのだ。さらには、「復刻台数は3,000台のみ」のようなシナリオを用意して、希少価値を高める売り方も、人気に拍車をかけることにつながるかもしれない。

未だに人気の高いR32型スカイラインGT-Rだが、ベースとなる4ドアセダンもまた人気があった

セダンの復権は「クルマ離れ」を阻止できる可能性も

 当初は昔からのファンにとどまるだろうが、セダンのプロポーションの良さを再認識するきっかけになれば、セダン全体がカッコよく見えてくる可能性はある。そうなったらこっちのもの。一大ブームが湧き上がるかはわからないが、いまの「オッサン臭い」セダンのイメージを崩すことはできるだろう。

 日産のV37型スカイラインは、2014年のデビュー当時、インフィニティバッヂであったが、2019年のマイナーチェンジで日産バッヂへと戻してフェイスリフトを行い、しかも歴史的な車名にあやかって、「400R」を出した結果、思いのほかヒットをした。

 もちろん、400Rに関しては、405ps/48.4kgfmという圧倒的なパフォーマンスを備えているからこそではあるが、バッヂ効果に関しては、機能的価値によらずにユーザーを惹きつけた、いい例だと思う。

日産バッヂとなったV37型スカイラインは、日本のセダン市場に光をもたらす一台となるか要注目だ

 言うのは簡単、実現するのは容易ではない、というのは、元メーカーエンジニアとして、よく分かっているつもりだ。そして、自動車メーカーとしては、流行をキャッチして「すぐに売れるクルマ」を造らなければならないのもよく分かる。でもそこに注力しすぎた結果が、「クルマ離れ」になってはいないだろうか。

 移動するだけなら、タクシーや電車、バスでもいい。それでもあえて、自動車を保有したくなるのは、「機能的な価値」ではなく、もっと深くに「そのクルマへのあこがれや愛情」があるからではないだろうか。

 自動運転やカーシェアリングの時代がすぐそこまで迫っているが、筆者は、「セダンの復権」が、こうしたクルマ離れの流れを変えてくれるのではないか、と思っている。

【画像ギャラリー】日本のセダンといえば、クラウンでしょ! クラウンの歴代全モデルをギャラリーでチェック!

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