背高へと移行するのは必然だった
しかし、ステップワゴン(1996年~)や、タウンエースノア(1996年~)、エルグランド(1997年~)、2代目セレナ(1999年)、トヨタ・ノア/ヴォクシー(2001年)などの背高ミニバンの市場急成長により、エスティマなどの背の低いミニバンの人気は、徐々に衰退していく。
自動車メーカー各社も、より多くの荷物が多く積め、視界が高くて見晴らしも良く、大人数が快適に過ごせるなど、ミニバンに求められる要素をより高いレベルで実現できる背高ミニバンに力を入れた。ミニバン用に開発したプラットフォームを採用し、走行安定性や乗り心地、音振性能など、ブラッシュアップを行い、背高ミニバンは瞬く間に商品力を上げていった。
この結果、背高ミニバンは、2010年ごろにかけて、背の低いミニバンを好むファミリー層を、瞬く間に虜にしていった。こうして、背の低いミニバンは、徐々にシェアを失っていき、2020年の現在残っている車種といえば、オデッセイやシャトル、エルグランド、プリウスα程度だ。どれもモデル末期に近いモデルであり、次期型が開発される見込みは低いものが多い。
背低ミニバンは本当に「意味がない」のか
背の低いミニバンは、機能面を考えれば、不要なのかもしれない。室内の広さ、荷室の使い勝手だけでなく、走行安定性、車室内のノイズなど、現在主流の背高ミニバンは、十分な性能を持っている。視線が低いことによる「セダンに近い運転感覚」よりも、視線が高いことによる「運転のしやすさ」にも、現時点は魅力がある。
しかし、背低ミニバンにも、意味がないわけではない。特に空力のメリットは、背高ミニバンでは太刀打ちできない。同じパワートレインであれば、全面投影面積が減らせる背低ミニバンの方が燃費も良い傾向だし、側面積が少ないことで直進安定性も背低ミニバンが有利となる。
また、ルーフに機材を載せるような場合にも、背低ミニバンの方が扱いやすい。
ちなみに海外市場、特にアジア圏だと、背の低いミニバンが生き残っていることがある。三菱のエクスパンダー(タイ)や、マルチスズキのマルティエルティガ(インド)など、どちらも7人乗りのMPVとして現役で販売されている。
世界的にはSUVが全盛だが、各国の家族様式、生活様式に合わせた商品であれば、背低ミニバンもきちんと売れるのだ。
国内市場は、Lサイズミニバンや背高ミドルサイズミニバン、そしてコンパクトSUV、コンパクトカーで、今後10年は進むはずだ。しかし、どう動くか分からないのが、世の中だ。ミニバンジャンルの開拓車「背低ミニバン」の逆襲は、ひょっとしたら数年後にも、あるかもしれない。
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