■日産キューブ 2017年11月販売台数344台
「キューブがフルモデルチェンジを受ければ、必ず好調に売れる」
という言葉は、日産とその販売店の社員から頻繁に聞かれる。全高が1650mmに達する車内の広いコンパクトカーで、全長は3890mmに抑えたから狭く混雑した街中でも運転がしやすい。
内装はソファ風のシートを装着するなどリラックスできる雰囲気が特徴だ。
初代と2代目が好調に売れて2008年に現行型へフルモデルチェンジされたが、その後はほとんど手を加えていない。緊急自動ブレーキも用意されない。そのために1か月の販売台数は600台程度に落ち込んだ。
以前、日産の社内では、次期キューブ、シエンタのような新型コンパクトミニバンも計画されたが、2000年代終盤のリーマンショックが影響して立ち消えになった模様だ。
しかしキューブのコンパクトなサイズとリラックスできる広い室内、低燃費や求めやすい価格は、日本の市場にピッタリだ。冒頭で触れたように、多くの日産関係者がフルモデルチェンジを希望するのは当然だ。
最近は業界を問わず「選択と集中」という言葉が聞かれるが、行き過ぎも目立つ。そのひとつが日本の自動車メーカーの、海外重視と日本国内の手抜きだ。キューブの実質的な放置もそこに含まれる。
フルモデルチェンジが理想だが、それが無理なら、せめて緊急自動ブレーキくらいは装着すべきだ。キューブにはそれだけの価値がある。
■ホンダN-ONE 2017年11月販売台数1320台
ホンダは2011年に先代N-BOXを発売して、エンジンやプラットフォームを共通化した軽自動車のNシリーズをそろえている。それが2012年に発売されたN-ONE、2013年のN-WGNだ。
この内、N-ONEの1か月の販売台数は1200台前後。販売不振とはいえないが、OEM車のフレア(マツダが扱うスズキワゴンRの姉妹車)と同程度で、N-WGNの30%程度だ。フルモデルチェンジされたN-BOXと比べれば10%以下にとどまる。
N-ONEが不調なのは、車内が抜群に広いN-BOX、収納設備に力を入れて価格が割安なN-WGNに比べて、魅力が分かりにくいからだ。
外観は1967年に発売されてホンダの社名を世間に広めた軽乗用車のN360をモチーフにするが、N-ONEは背が高すぎてプロポーションが崩れた。
こうなった原因はエンジンにある。Nシリーズのエンジンは空間効率を重視して設計され、補機類の配置も含めて前後方向に短く縦方向に長い。
そのためにボンネットを下げられず、プラットフォームの制約もあって全高を1610mmにせざるを得なかった(全高が1545mmのローダウンもボンネットは高い)。
ちなみにN360の全幅は1295mm、全高は1345mmだったから、全幅を今日の軽自動車の1475mmに拡幅すると、全高は同じ縦横比率なら1533mmになる。
全長はN360が2995mmだから、同じ比率で拡大すると3414mmだ(N-ONEの全長は軽規格限界の3395mm)。
つまりN-ONEローダウンのボンネットと、そこから後ろに繋がるウエストライン(サイドウインドーの下端)を下げれば、N360のかなり忠実な拡大コピー(拡大率は114%)を実現できた。
ホンダライフの古いエンジンでも良いから引っ張り出して、ボンネットとウエストラインを引き下げ、N360ソックリに再現すれば、オジサン世代感涙の逸品になっただろう(私も欲しいです!)。
それでも好調に売れたとは思えないが、ホンダのブランドイメージは高められた。そして何より、多くのホンダファンに喜ばれ、感謝された。いいかえればN-ONEは、惜しい、非常に惜しいところで中途半端だったのだ!
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