2020年9月29日、大手電子部品・電気機器メーカー京セラがコンセプトカー第2弾となる「Moeye(モアイ)」を開発したと発表した。
京セラの独自技術てんこ盛り、そして「伝統」から京セラの描く「自動車の未来」まで、自動車の歴史を駆け抜けるような体験を提供できるようデザインされたという「Moeye(モアイ)」をじっくりみてみよう。
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※本稿は2020年10月のものです
文/永田恵一、写真/京セラ
初出:『ベストカー』 2020年11月26日号
■MaaS時代の人とクルマの関わり、新しいコクピットの世界観を提案する「モアイ」
9月末に電気機器をはじめとした幅広い事業を手がける京セラが、コンセプトカー第2弾となる「モアイ」を発表した。
京セラの事業はカメラ、液晶ディスプレイ、半導体、電子部品、以上のパーツを集結したスマートフォンやタブレット、宝飾など多岐にわたり、クルマに使われているものも数多い。
対するクルマのほうは現在自動運転やMaaS(Mobility as a Service)が進もうとしている大きな転換期でもある。
その際にクルマに求められるウェイトが大きくなりそうな車室内空間の重要性に着目し、驚きと快適をもたらす未来のコックピットを完全オリジナルデザインの車両で開発したのがモアイだ。
なお京セラのコンセプトカー第1弾は、現在もEVという形で継続しているピュアなスポーツカーとなる、あのトミーカイラZZを引き継ぎ、EVのプラットフォーム開発も手がけているGLMとの協業で2018年に登場したモデルだ。
このコンセプトカーはエクステリアとメカニズムこそトミーカイラZZだが、車内に入るとカメラ式のルームミラーとサイドミラー、カメラ内蔵の大型クラスターパネル、ピエゾスピーカー、温度管理に寄与するペルチェ素材を使ったシートやエアコンといった京セラの技術がテンコ盛りとなっていた。
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ここで話をモアイに戻すと、クラシックカーを思わせるモアイのエクステリアデザインは、日本では数少ないカロッツェリア(工房)である「Fortmarei」が手がけたものだ。
モアイのインテリアに盛り込まれた技術とデバイスは次のとおり。
●視覚
・空中ディスプレイ……高性能液晶ディスプレイからの投影映像を結像させ、ダッシュボード上部の空間に、クリアかつリアルに浮かび上がるオリジナルキャラクター“モビすけ”がドライバーを楽しく案内してくれる。
・光学迷彩技術……シンプルな形状のダッシュボード上にクリアで鮮明なバーチャル3D映像や、独自の光学迷彩技術によって透明化したダッシュボードを通して前方の風景映像を見ることが可能。
・LED照明セラフィック……ルーフとドアライトに自然光に近似した優しい光を作り出し、色彩表現の幅も広いLED照明を搭載。
・京都オパール……ドア内側に京都オパール、センターコンソールに人工オパールを装飾する。
●触覚
・ハプティビティ……パネルをタッチした際に感圧で微細な振動を発生させ、クリックしたことを伝えるインパネとセンターコンソールを搭載。
●聴覚
・振動スピーカー……ヘッドレストを含め、ピエゾ素子を用いたスピーカーを搭載し、クリアかつ迫力あるサウンドを実現。
●嗅覚
・アロマ芳香器 車室内に5種類の豊かな香りと匂いを噴射し、気分に応じて香りを選び、楽しむ快適空間を演出。
と、以上のように多彩で、東京大学先端科学技術研究センターの稲見昌彦教授と協働した光学迷彩技術とアロマ芳香器以外は京セラの独自技術だ。
モアイが作られた目的は京セラが完成車の開発や生産を示唆するものではなく、自動車にも使える自社の技術のアピールだろう。
という意味では今年1月のCESにソニーが出展し、話題になった「ヴィジョンS」(自動運転に向けた高性能な周囲のセンシング技術や、快適性向上のための大型モニターの多様性やシート内蔵スピーカーが特徴)に近い存在なのかもしれない。
いずれにしてもクルマが大きな転換期にあるだけに、クルマを見るうえでも京セラをはじめとした電機業界の動きにも注目したい。
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