しかし、デザインだけでは成功できない
「Z52ムラーノは日本市場でもいける!! すぐにでも導入すべし!!」と言いたいところなのだが、残念ながら、そうはいえない。Z52ムラーノには、日本市場ではネックとなる要素が2つある。
ひとつは、大きすぎるボディサイズだ。初代ムラーノが北米市場でヒットしたことで、2代目以降、北米需要に合わせるために、ボディサイズをひと回り大きくした。しかもフロント端がスラント形状であったため、クルマの4隅の見切りが非常に悪く、狭い日本国内の道路事情では、運転がしづらかった。
国内で売れ筋SUVにするならば、ハリアーサイズである、車幅1850mm前後に抑えることが、絶対条件だ。
もうひとつは、燃費の悪さだ。ムラーノは、アメリカ人が求めるピックアップ(加速)の良さを重視し、パワフルな3.5L V6ガソリンエンジンが投入された。
日本には、2.5L 直4ガソリンエンジンも導入されたが、1.6トンを超えるムラーノのエンジンとしてはやや非力で、その分アクセルを踏み込んでしまうため、2.5L エンジンであっても、燃費はよろしくなかった。
北米専売車のZ52では、3.5L V6の1本のみ。年々、燃費は改善してきているとはいえ、北米基準で、市街地走行20MPG(約8.5km/L)、高速走行28MPG(約11.9km/L)、市街地と高速走行の複合モードで23MPG(約9.8km/L)と、ハイブリッドSUVが走る日本市場では、戦うに値しないレベルなのだ。
ちなみにハリアーは、2005年の2代目からハイブリッドモデルを導入しており、当時の10・15モード燃費で17.8km/Lを達成、2020年6月登場の4代目ハリアーでは、22.3km/L(2WD、4WDは21.6km/L)を達成している。
2代目ムラーノの日本市場からの撤退理由となった「ボディサイズ」「燃費」のいずれか1つでも解消されないことには、デザイン一本勝負だけでは、どうにもならない。その点は、日産もよく理解しているだろう。
日産のクーペ風SUVとしては、アリアに期待!!
トヨタほどリソースがない日産の場合、北米市場に向けたムラーノと、国内向けのムラーノのボディを作り変えることは、到底できないだろう。
しかし、もしこのデザインのままで全体スケールを5パーセントほど小さくし、全幅を1850mm程度に抑え、なおかつ、電動化による燃費向上策を織り込むことができれば、ムラーノが国内でもヒットする可能性は、十分にあるのではないか、と考える。
そして、まさにそのスタイルとサイズ感で登場するのが、日産が2021年中頃発売するとしている「アリア」だ。日産が、ムラーノの後継車としてアリアを認めることはないだろうが、筆者としては、アリアが、ムラーノ譲りのスタイリッシュクーペSUVとして活躍してくれることを、期待している。
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