■評論家が試乗記を書くうえで心がけていることは?
なんとなくわかってきた事実として、そもそもの新車の完成度が高く、性格も似たクルマが増えてきていること。
読む前からだいたい結末がわかっているようなクルマに関しては、おもしろく書くのがなかなか難しいというのが評論家の本音のようだ。
かつてのような「ハンドリング」などにこだわる試乗記の役目が終わりつつある、なんて実感を評論家も持っているようだ。
とはいえ、自動車雑誌から新車試乗記が消えたらそもそも媒体として大丈夫か!? というのも事実。そこでこれからの試乗記はどうあるべきか。そしていま評論家たちはなにを考えて試乗記を書いているかに迫りました。
【鈴木直也】「へぇ!」と思ってもらえるように
原稿を書く時に心がけていることはいろいろあるが、本誌ベストカーに代表されるカジュアルな中綴じ自動車雑誌の場合、与えられた行数が少ないのが思案のしどころ。
こういうケースでは本当に語るべきテーマを絞らないと、けっきょく何も言えずに終わっちゃう。意外に難しいんですよ、短い原稿は。
だから、そういう時にぼくが心がけているのは、できればひとつくらい、読者に「へぇ!」と思ってもらえる”ネタ”を盛り込むこと。その”ネタ”を見つけるのが大変なんだけど、それがまた書き手の楽しみでもあるわけでございます。
【国沢光宏】自分が読者だったらどうか? が基準
まず文章として面白くなくちゃアカンと思っている。だって教科書みたいな文体&内容だと読んでもまったく楽しくないでしょ。サービス精神ゼロ。
あれじゃお金出して買ってくれないです。よってクルマのディテールや、紹介だけ並べているようだと、職業としての自動車評論家失格である。
「参考になった」とか「面白かった」というレベルで満足せず「社会を考えさせられた」くらいまで行けば合格点。
「人生を考えた」レベルに到達すれば、きっと次々と仕事来るだろう。ワタシの場合、自分が読者だったらどうか、という点を基準に原稿を書いてます。
【清水草一】自分で面白がって、なによりも本音を書く
クルマ選びのための情報ではなく、エンターテイメントであることをなによりも優先しています。私の新車試乗記を読んでもあまり購入ガイドにはならないでしょうが、ほかの方の記事を読めばそういう情報は得られると思うので。
私はもっと大本のところ、そのクルマがココロに刺さるか刺さらないかみたいな部分を書くように心がけてます。あとは面白おかしい娯楽になるように。つーか勝手にそうなっちゃうんだけど。
だって購入ガイド書くのって、すっごくつまんないんだもん! 自分が面白がって書かなきゃ、面白くなるわけない。そのためには、なによりも本音で書くことですかね?
【渡辺陽一郎】読者に損をさせないことが信条です
記事の執筆で最も重要なのは、読者諸兄の不利益になる事柄を正確かつ迅速に伝えて、ケガや損をさせないことだ。従って新車試乗記でも、欠点の指摘が最優先される。走行性能は全般的に向上したが、後方視界の劣悪な乗用車は昔に比べると急増して、新たな危険が生じている。
ボディも肥大化して、市街地で運転しにくい車種が増えた。乗降性や後席の居住性が悪いクルマも多く見られる。ちなみに新車の長所に関する情報は、メーカーのウェブサイトやカタログに豊富に掲載されて、無料で手に入る。有料の雑誌で欠点の指摘が不可欠なのは当たり前だ。
■Web編集部より
編集担当としては「試乗記」はなければならない部分であると思います。それには編集者が評論家にどんな原稿を「オーダー」するかが非常に重要という事実もあります。
褒めるにしても「なぜ褒めるか」がハッキリしないとモヤモヤしてしまいますし、ダメだしするにも同じく理由が必要です。
クルマ自体の「いい/悪い」をハッキリさせると同時に、そのクルマが読者の皆さんにとってどんなストーリーを与えてくれるかがこれからの試乗記の重要な部分かなと思います。今後とも試乗記へのお付き合いよろしくお願いします!!
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