■並々ならぬ気概が込められた4輪制御
パワートレーンは、前後1基ずつの高出力モーター、大容量駆動用バッテリー、2.4リッターMIVECエンジンで構成するツインモーター4WD方式のPHEVシステムだ。アウトランダーPHEVから継承し、エクリプスクロスの動性能に合わせて4輪駆動制御のチューニングをやり直している。
愛知県岡崎市にあるテストコースをはじめとして、北海道十勝市にあるテストコースのダートからスノーまで、4輪制御の適合実験のすべてをやり直したそうだ。コロナ禍の中、短い開発納期で、内外装の大変更と同時に、最も手のかかる4輪制御の再チューニングまでこなすのは、相当なプレッシャーがあったという(プロジェクト推進部主担 金子真樹氏)。
「PHEVをそっくりそのまま入れ変える程度ならば簡単では?」と思うかもしれないが、3列シートのアウトランダーに合わせて作りこんだ4輪制御では、そのまま2列シートのエクリプスクロスに転写すると、「曲がりすぎ」てしまうらしい。
そのため、エクリプスクロスPHEVの開発チームでは、「曲がり過ぎるのを抑制する方向で、制御チューニングをイチからやり直した」そうだ(プロダクト評価担当ドライバー 鈴木忠志氏)。
エクリプスクロスPHEVのドライブモードは、NORMAL/ECO(ノーマル/エコ)、SNOW(スノー)、GRAVEL(グラベル)、そしてTARMAC(ターマック)が用意されている。イグニッションON直後はNORMALがデフォルトのモードであり、アクセルペダルを強く踏み込まなければ、ほぼ電動走行となる。
当然ながらエンジン音はせず、エアコンの送風音と、小さめのロードノイズが若干聞こえる程度と、車室内の静粛性は高い。
サスペンションは、この手の背高SUVにしては珍しく、相当にソフトなセッティングだ。大きめの段差を乗り越えた瞬間に、フリクション感の少ないストロークをするサスの動きは、それだけで走りのよさを感じる。
1.9トンを超える車重の影響や、地面からホイールリム下端までの距離がある18インチタイヤ(225/55R18 ブリヂストンECOPIA H/L 422plus)という絶妙なタイヤ選定の恩恵もあるが、オンロードだけでなくグラベル(未舗装路)での走りも想定したエクリプスクロスのキャラクターならではのセッティングと思われる。これも相まって、絶妙に心地よい走り心地をする。
そのため、ステアリングを一気に「グイッ」と切り込めば、ロールは多めに発生する。また、強めの加速や減速時にも、ピッチ方向にボディモーションが発生するので、4輪の接地感がつかみやすい。19インチでは、決してこうはならなかったはずだ。
ファッション的に大径ホイールをはく「なんちゃってSUV」が多いなか、エクリプスクロスPHEVの選択は非常に好ましく感じ、芦ノ湖方面へと登坂していく山坂道で、すでにその乗り味に感動した。
上りの連続コーナーにさしかかったところで、ドライブモードをTARMACに。すると、クルマの特性が豹変した。TARMACは、旋回制御とアクセルゲインが全開となるモードであり、コーナーを旋回している中でアクセルペダルを強めに踏み込むと、前方へ「ドンッ」と飛び出すような緊張感が一瞬走る。
同時に高まる旋回Gに応じて、深めに入るロールによって、グリップ感はつかめているのだが、強烈なパワーに思わずアクセルペダルを戻したほどだ。だが、クルマの動きは素晴らしく、思わず「楽しい!!」と、声が出てしまうほどだった。
本当はアクセルペダルを踏みこんでクルマに任せたほうが、旋回挙動は安定するとわかっているのだが、試乗当日の試乗コース(公道)は、道路わきに雪が残っているような状況で、日陰では路面凍結をしていたため、試すことができなかった。
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