■「大ヒット上映中」
この表現を使うための基準や数字(観客動員数など)の根拠は何か必要なのでしょうか? 東宝(株)に聞いてみました。
「映画業界では、例えば【観客動員数が◯万人超えないと、大ヒット上映中は使っちゃダメ】という決まりはないです。
また、作品の規模、公開前の話題性や前売り券の販売数によって、公開後の動員数によるヒットの判断がまちまちなので、【こういう数字だから大ヒット上映中と書いていい】という決まりもありません」と答えてくれた。
つまり【大ヒット】の表現に基準はない、ということ。なるほど。確かに【大ヒット上映中】というので映画館へ見に行ったらガラガラだった……なんてこともよくあるわけですね。
続いては洋画でよく見る表現について。映画業界の人が答えてくれましたよ。
■「全米No.1」
何かのランキングで1位を獲った、ということなのでしょうか? だとしたらどんなランキングなんでしょう?
「これは洋画配給会社各社の考えに基づきますが、各社ほぼ同じ考えです。数字の裏づけがないとこの表現は使いません。
業界内の一般的認識では公開週(金~日曜日の3日間)で興行収入もしくは観客動員数で1位になれば、【全米№1】と謳っています。例えば【全米初登場№1!】というのは公開したその週で1位を獲った、ということですから、より丁寧な表現ですね。
その№1の数字の根拠は【興行収入】でも【観客動員数】でもOKです。どっちが1位でも謳っていい。
ただし、広告には小さい文字の註釈で【◎月◎日~◎日まで観客動員数1位】などと裏づけを入れることが決まりになっています。
これは外国映画輸入配給協会でも言っている決まりごとです。それで、ずっと1位なら【公開5週連続1位】などと謳える。これは邦画も同じですね」
なるほど。3日間だけ1位になれば「全米№1」なのですね。
■「全米で大ヒット」
引き続き東宝(株)さんから伺います。
「数字の根拠がないので、基準はなし。【大ヒット】という言葉のニュアンスなので、配給会社の判断が基準。ゆえに自由に使ってOKです」
どんどんいきましょう。お次はこれです。
■「アカデミー賞最有力候補」
毎年3月頃にアカデミー賞が発表されるけど、その前の数カ月間はやたらとこの宣伝文句や表現が目につく気がします。
「これも基準はなく、配給会社による判断です。でも、さすがにまったく、箸にも棒にも掛からない作品にこの表現を付けるのは信用問題に関わるので(笑)。
指標という意味では、アカデミー賞発表前のゴールデングローブ賞など多数ある賞で、いくつかノミネートや受賞があれば【これはいけそうだ】ということで、各社この表現を入れますね」
ですよね~。ちなみに今年のアカデミー賞は3月5日に発表され、作品賞には9作品がノミネート。ご存じ日本の特撮映画やアニメが大好きなギレルモ・デル・トロ監督の『シェイプ・オブ・ウォーター』が受賞しました(ゴールデングローブ賞監督賞も受賞)。
映画業界最後はこちら。
■「全米が泣いた」
感動する作品でこの表現がよくキャッチフレーズに使われますが、えー、何か基準があるんでしょうか。
「全米の人が泣いた……という統計をとっているわけじゃないので(笑)、日本の配給会社の感覚的な表現ですね。ちなみに、アメリカではこの表現は使いません」
まあそりゃそうか。日本人が考えた「コピー(表現)」が日本の映画業界内に広がっていったわけですね。
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