今や日本国内でマニュアルトランスミッション(MT)車の販売比率は、2%未満に低下しているという。しかし、MT車は運転の仕方次第で優れた燃費を引き出せ、比較的パワーの小さい車でも、その力を最大限に引き出せる。しかも現代のMT車は、ほとんどが坂道発進で後退を防ぐ装置が標準装備されるなど扱いにくさも激減。マイナーな存在となりつつもも、MT車は今なお楽しさと高い実用性を併せ持っている。そこで、本記事では現存する国産MT車26台の中から、特に楽しさ溢れる10車をピックアップして紹介したい。
文:斎藤聡、永田恵一
写真:編集部、HONDA、TOYOTA
ベストカー 2018年6月26日号
あの実用車も登場! 上級者まで楽ませるMT車 5選
■ヴィッツ GRスポーツ“GR”
「GRスポーツ」と比べ、ボディにさらに補強を施し、17インチのポテンザ050Aを履いたモデル。GRブランドのなかでは本格スポーツモデルという位置づけだ。
フリクション抵抗が少なめなのか、ダンパーの動き出しがスムーズなのでそれほどスパルタンな印象はないが、ザックスダンパーとローダウンした強化スプリングがいい仕事をしている。
折り目正しいGRスポーツと比べ、より折り目がシャキッとした印象。応答がよくグリップレベルも高いので、スポーツドライビングが楽しい。気持ちよく楽しく走るためにMTが役に立ち、面白いというのが実感できる。
■カローラアクシオ&フィールダー
5速MTのフィールダーは、どこか相棒的な親近感がある。それほど派手な外観ではないけれど、内装の質感は大したもので商用車的なチープさがない。さりげなく機能的な室内が余計に相棒的な印象を与えるのかもしれない。
なにより、マニュアルミッションがエンジンとドライバーの距離を近づけてくれるのだろう。質実剛健な乗り味に長い時間をかけて洗練されてきた乗り心地が加わって独特の機能感、一体感がある。
褒められるほどパワフルなエンジンではないし、個性的でもないが、MTを駆使して上手に走らせると不思議な一体感が生まれてくる。
■86/BRZ
86/BRZの楽しさは、2L水平対向4気筒エンジンの独特の存在感と、FRの後輪駆動車であること。
スバルの持つボクサーエンジンと、トヨタの直噴技術によって生み出された共同開発エンジンであることも、このエンジンの重要なポイント。
バランスのいいFRスポーツカーなので、操縦性は速度に関わらず素直。コーナーでは、アクセル操作によって前荷重から後ろ荷重へ荷重移動を行い、リアタイヤのグリップ限界を見極めながら繊細なアクセルワークで加速していくのがこのクルマの醍醐味。
■ノートNISMO S
ノートNISMOには専用チューンの1.6Lエンジンが搭載され、5速MTと組み合わされている。
140ps/16.6kgmのパワーはノートのボディには充分刺激的で、速い! と感じさせる加速性能を備える。
ボディもフロア周りを中心に徹底的に補強され、スパルタンに締め上げられたサスペンション(バネ/ショック)と組み合わせさている。
1速で無造作にアクセルを踏むとエンジンが揺れ、足回りがバタつくほど。強力なエンジンをアクセルワークでなだめすかしながら、上手に引き出すと、じゃじゃ馬を操っている楽しさが味わえる。
■フィット RS
乗ってみるとスパルタンな印象はまったくないのだが、足回りの踏ん張りが効き、よく曲がり、よく走る。
搭載するエンジンは1.5L。132ps/15.8kgmを発揮。興味深いのは、1、2速が1.3L車と同じギヤ比であり、3速からクロス気味にギヤ比が接近しているところ。そのためパワー感は1.3とのパワー差以上にパワフルな印象となる。
このエンジンはレブリミット直前まできっちり回してやることでエンジンの伸び感が楽しめるいっぽう、トルクがフラットなのか、クロスギヤの恩恵なのか、エンジン回転を抑えめにして走らせても速さが鈍らない。
【斎藤聡】
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