ピカピカのサーブ900が走る!! オスカー作品賞ノミネート『ドライブ・マイ・カー』を観る!!

■車をきっかけにして主人公に変化が

主人公の家福を演じる西島秀俊はボストン映画批評家協会賞など様々な映画賞で主演男優賞を受賞している
主人公の家福を演じる西島秀俊はボストン映画批評家協会賞など様々な映画賞で主演男優賞を受賞している

 そんな家福という主人公にとってサーブ900は、シェルターであり聖域でもあり、さらには『スヌーピー』に登場するライナスの毛布のような存在である。

 実はさまざまな想いを抱えた男でもある家福だが、妻を含む他者の前では本当の自分をさらけ出したことがない。サーブはそんな彼の唯一の拠り所としての役目を果たしているのだ。

 後半、広島から北海道に行くのだが、そのときも飛行機などは使わずサーブ。劇中、彼がほかの乗り物に乗っているのは、車と一緒に津軽海峡を渡るときのフェリーだけと徹底している。

 彼に変化が訪れるのも、その車を通してである。広島で主催者側が彼の安全を考えドライバーを雇うというのだが最初、彼はそれに猛反対をする。サーブに赤の他人を乗せるのも嫌なのに、運転させるなど、考えたこともないというわけだ。

 とはいえ、仕方なくそれを受け入れるのだが、そのドライバーになる寡黙な若い女性、みさき(三浦透子)との出会いが彼の人生を大きく変えることになる。

 彼女がその車を「とても大切に乗られた車」といい、彼は「こんなに丁寧な運転は初めてだ」と感心する。そんな車を通してふたりは徐々に距離を縮めて行く。

 最初はバックシートに座っていた家福だったが、しばらくすると助手席へと移り、ずっと聴いていたテープを止めて、身の上話に耳を傾ける。喫煙者のふたりは揃ってトップルーフから火のついたタバコを出しながら吸ったりもする。

 車ファンからすると、そんなことしたらバックシートに火が飛んで焼けちゃいそう、なんていいたくなるが、ここで重要なのはふたりのその打ち解け方のほう。そこでもサーブが効果的に使われているのだ。

 ちなみにこのサーブ、15年間乗っているという設定だが、もちろんピッカピカ。クーペタイプなので乗り降りも手間がかかるだろうし、装備を考えてもいろいろと不便だろうが、それでもやはりこれに乗り続けているというところにも、彼の人生やこだわりを感じさせる。

 では、その愛車は最後、どうなるのか? それは映画を観て確かめて欲しい。

●解説●

 舞台演出家兼役者の家福は、女優の妻、音と穏やかな毎日を送っていた。そんなある日、家福は音の秘密を目撃してしまう。それでも流れて行く日々のなかで、音がこんな言葉を口にする。「今晩、話があるの」。その話は何なのか……。

 村上春樹の短編小説集『女のいない男たち』(文春文庫刊)に収録された同名短編を独自の解釈で翻案した人間ドラマ。

 監督・共同脚本の濱口竜介はカンヌ映画祭で日本映画初の脚本賞を受賞したほか全4部門で受賞。全米批評家協会賞の主演男優賞を西島秀俊がアジア人俳優として初めて受賞と、各国の映画賞を席巻している。アカデミー賞の発表は3月27日(現地時間)。上映時間は179分。

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『ドライブ・マイ・カー インターナショナル版』
Blu-rayコレクターズ・エディション(2枚組)¥7,150(税込)
Blu-ray ¥5,170(税込)
DVD ¥4,180(税込)
発売元:カルチュア・パブリッシャーズ
販売元:TCエンタテインメント
(C) 2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会

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