数え方にもよるが、世界には5000を超える数の言語が存在するという。それだけあるなら、発音が同じでもまったく意味が異なる言葉があってもおかしくない。そしてコレがクルマの名前となると事情は複雑になる。今回は、本国と輸出先で名称の異なるクルマを紹介し、どうして本名(?)がマズかったのかを解説していこう。
文/長谷川 敦、写真/三菱、ホンダ、スバル、スズキ、トヨタ、ヒョンデ、ランボルギーニ、フォード、フォルクスワーゲン、FavCars.com、Newspress UK
【画像ギャラリー】えっ!? あの国では呼び名が違う? 車名がダメ出しくらったクルマたち(13枚)画像ギャラリー天下のパジェロもスペイン語圏では…… 「三菱 パジェロ」
ベストカーウェブの読者なら、知らない人はいないであろう日本が誇るSUVの三菱 パジェロ。惜しまれつつも昨年生産が終了されたものの、今でもその知名度は高い。
そもそも「パジェロ(Pajero)」とは南米に生息するヤマネコの名称に由来する車名で、野性味を感じさせるSUVにふさわしいもの。だが、このパジェロは英語であって、スペイン語ではまったく違った意味になってしまう。
パジェロという発音は、スペイン語では「嘘つき」や「怠け者」のほかに、さらにここでは紹介できないような下品な意味のスラングとよく似ていて、クルマの名称にするには問題があった。
そこでスペイン語圏の国では、パジェロは猟師を意味する「モンテロ(Montero)」の名称で販売されている。パジェロの由来となったヤマネコが住むチリやアルゼンチンがスペイン語の国だというのも残念さに拍車をかけている。
ちなみにイギリス仕様のパジェロは「ショーグン」と呼ばれていたこともあった。武士の最高位である「将軍」をクルマの名称にしても問題ないと思うのだが、日本語を母語にする人間にとって、少々気恥ずかしさを感じさせるのはナゼだろう?
フィットはフィットじゃなかった!? 「ホンダ フィット」
国産コンパクトカーの代表格とも言えるホンダのフィットだが、実は初代モデルの発売直前まで別の名称になることが決まっていた。これは同じホンダのシティ(懐かしい!)にフィットというグレードがあり、このクルマとの混同を避けるため。
こうして生まれた名称が「フィッタ(Fitta)」。しかし、ギリギリのタイミングになって、スウェーデンなどで使われるスカンジナビア系の言語ではこの名前が女性器を表すことが判明したのだ。これではヨーロッパでの販売がやりにくくなるということで、急きょフィットに差し替えられた。
日本国内をはじめ、北南米や中国・台湾ではフィットの名称が使われたが、それら以外の国では「ジャズ(Jazz)」の名で販売。これがボツネームの影響かどうかは不明だ。
歴史を尊重して名前を変える 「スバル レガシィ」
4WDセダン&ワゴンのスバル レガシィは、1989年の登場以来長年にわたって世界のドライバーに愛されてきた。現在はクロスオーバーSUVのレガシィアウトバックのみが継続販売されているが、根強い人気を保っている。
そのレガシィだが、実はオーストラリアでは「リバティ(Liberty)」に改名されていたのはご存じだろうか?
オーストラリアの公用語は英語であり、レガシィ(後世に伝承すべきもの)に特に問題のある意味はない。ではなぜ改名したのかというと、それには少々特殊な事情があった。
オーストラリアは、第一次世界大戦で戦死した兵士の遺族を支援するため「Legacy Week(レガシィウィーク)」という慈善団体を設立し、この団体は現在までさまざまな紛争で亡くなった兵士の遺族を支援している。そこでスバルはこのレガシィウィークに敬意を表し、オーストラリアではモデルの名称を変更した。