ゼロからのリスタートは王政復古の狼煙?
1983年発売の7代目で採用したキャッチコピーの「いつかはクラウン」でさらなる需要喚起に成功したクラウン。この7代目ではシリーズ初の「アスリート」グレードが設定され、高級車でありながらより若い層にアピールする戦略も用いられた。
こうして堅調なセールスを続けていたクラウンだったが、1990年代中盤に入ると、バブル景気崩壊の余波もうけて好調さに陰りが見られるようになる。
人々の価値観の多様化や、ミニバン&SUVブームの影響はクラウンにもおよび、その保守的な路線がネガティブにとらえられるケースも出てきた。これが直接の原因になったのかは不明だが、クラウンの売り上げは緩やかながらも下降傾向に変わっていった。
この状況を打開するため、トヨタは2003年発売の12代目クラウンを新たなるスタートと位置づけ、「ZERO CROWN~かつてゴールだったクルマが、いまスタートになる~」とのキャッチコピーとともに登場させた。
ゼロと言うだけあってプラットフォームは刷新され、エンジンも伝統の直列6気筒からV型6気筒に変更。サスペンションも見直された。ルックスもより現代的なものにあらためられ、新世代のモデルであることを強調した。
ゼロクラウン投入は成功し、クラウンの売り上げは回復傾向を見せた。しかし、それも一時的なものであり、続くモデルのセールスは再び減少していってしまう。
クラウンの神通力が弱体化!? シリーズ消滅の危機に!?
2018年には15代目のクラウンが登場する。オーナーの年齢層を引き下げることを目的に、インターネットを積極的に活用する初代コネクテッドカーの名を掲げてリリースされた15代目だが、この時代に多くの人がクルマに求めたのはエコや使い勝手の良さだった。
大柄な高級セダンというクラウンの車格そのものが一般への訴求力とならず、新型コロナ流行などの向かい風もあって、残念ながらセールスの劇的な回復とはならなかった。とはいえ、売れていないかといえばそうでもなく、2021年の売り上げ台数は約2万1000台と健闘はしている。4ドアセダンの市場自体が小さくなっていることを考えると悪くない数字なのは、やはり“クラウン”のネームバリューの力か?
しかし、クラウンの神通力が弱まっているのも事実であり、7月に新型の発売が正式にアナウンスされるまでは、クラウンシリーズの消滅、あるいはセダンをやめてSUVへ一本化するなどのウワサも流れた。
新型クラウンの登場はマンネリ打破か? それとも…
2022年7月15日、トヨタから通算16代目となる新型クラウンが発表された。消滅の危機までささやかれたクラウンだったが、無事に新型が登場することはファンから歓迎された。だが、公開された新型クラウンの姿は多くの人に驚きを与えた。
「クロスオーバー」「セダン」「スポーツ」「エステート」の4モデルがリリースされることになった新型クラウンには、これまでの4ドアセダンのお手本的デザインからは離れて、リフトアップしたSUV的なルックスが与えられてた。
ある意味SUVへの一本化というウワサを裏づけるような新型クラウンは、従来の路線からの脱却を図っていることがその出で立ちからもわかる。
まずはクロスオーバーから発売され、順次各タイプが登場することが発表されているが、従来型との大きな違いはFRベースではなくFFベースのモデルになること。FRならではの重厚感のある走りがクラウンのウリでもあったが、これがどのように変わってくるのか興味深い。
新型クラウンについてはまだまだ謎の部分も多い。それはこれから明らかになるはずだが、いずれにせよ、“偉大なるマンネリ”からの脱却が狙いであるのは間違いないだろう。
4代目クジラクラウンのように、長いシリーズの間には異色のモデルも存在していたが、基本的には高級4ドアセダンの王道を歩んできたトヨタのクラウン。新型クラウンは、姿は違えどその王道の延長線上にあるのか、あるいは名称と車格を継承するまったくの別モノとなるのか? 今後の動向から目が離せない。
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