■ステラの原動力は「家族愛」!?
そんなステラが追いかける幼馴染が盗んだ車は、ロッソマーズレッドのスーパーカー、ランボルギーニ ウラカン。何でもお値段は3億ウォンというから、日本円で3000万円ほどだろうか。キズひとつなくピッカピカに磨かれていて、ステラとは文字通り雲泥の差、天国と地獄ほどの落差がある。
言い忘れていたが、本作の自動車金融会社の車庫にはベンツやBMW、ポルシェ等の高級車がズラリ。おそらくローンを返せなくなった人たちの車で、それを東南アジアに売りさばいて稼いでいるようだ。だからなのか、社長の車はベンツやレクサス、ヨンベが最初に乗っている車もアウディだったりする。
さすがにステラとランボルギーニのカーチェイスというのはないのだが、ステラvsレクサスは本作の見どころアクションのひとつ。
山道を舞台に、幼馴染が運転するヒョンデのキャリアカー(最初はランボルギーニを乗せていた)を、ステラを走らせるヨンベが追いかけ、そのヨンベを社長チームが乗ったレクサスが追いかける。
ここで勝つのは普通ならレクサスだろうが、今回はステラ。レクサスはエンジンがかからずすぐにリタイヤという情けなさ。社長チームには「高級車のくせに!」「国産車に負けてるよ!」と悪態をつかれる始末だ。
オンボロにもかかわらず、なぜかトンでもなく強いステラなのだが、そこにはいかにも韓国映画らしい「家族」を巡るエピソードが用意されている。おそらく、多くの人がそこにホロリとしてしまい、大ヒットしたのだろう。
ちなみにステラはヒョンデが1983年から1992年まで製作していたセダン。それまでライセンス生産していたイギリスフォードによるフォード コーティナの後継車になる。エンジンとトランスミッションは三菱自動車、シャシーはコーティナのマークV。
デザインはイタルデザイン時代のジョルジュ・ジウジアーロが手掛けている。1983年から1992年まで430万台が生産されたという。
ということはつまり、メイド・イン・コリアにこだわった気合の入った車だったわけで、本作でも少年時代の主人公が、父が一大決心して購入したこの車に大喜びするエピソードがある。その名の通り、家族のステラ=星のような存在だったのだ。
撮影で使われているステラは1987年製。1988年に開催されたソウルオリンピックの公式自動車に指定されたモデルだという。
スタッフは韓国各地の中古車センターを捜し回り、やっと2台のステラを入手。劇中で高級車を打ち負かす頼もしいステラだが、実際にも素晴らしい走りをみせてスタッフ&キャストを驚かせたという。
●解説●
自動車金融業界で働くヨンベは、社長にスーパーカーを任されるが、あろうことか借金に苦しむ幼馴染に持ち去られてしまう。そんなとき父親が亡くなったという連絡を受け帰省するヨンベだったが、彼を追いかけて社長たちがやってくる。
タイムリミットは3時間。その間にスーパーカーを取り返さなくてはいけないにもかかわらず、足になりそうなのは父の遺した廃車寸前のステラだけだった。
監督は『あの日、兄貴が灯した光』(2017)等のクォン・スギョン。脚本は、日本でもヒットした『エクストリーム・ジョブ』で注目されたぺ・セヨン。主人公のヨンベには『応答せよ1994』(2013)等で人気の高いソン・ホジュン。
社長役には『イカゲーム』(2021)、マ・ドンソク主演の『犯罪都市』(2018)等で悪役を演じているホ・ソンテ。
監督のクォン・スギョンは、ステラについて「車が大好きだった幼少期。お金持ちの友人の父親がステラを持っていて、とても憧れていた」。そして、本作撮影のために『ワイルド・スピード』シリ―ズ(2001~)や、アカデミー作品賞を獲得したロードムービー『グリーンブック』(2018)等を参考にしたという。
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『ステラ SEOUL MISSION』
2022年11月11日(金)シネマート新宿ほか全国公開
監督:クォン・スギョン『あの日、兄貴が灯した光』 脚本:ペ・セヨン『エクストリーム・ジョブ』
出演:ソン・ホジュン「応答せよ1994」、イ・ギュヒョン「刑務所のルールブック」、ホ・ソンテ「イカゲーム」
2022/韓国/韓国語/カラー/98分 映倫:G 英題:Stellar: A Magical Ride 配給ファインフィルムズ
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