スタタボにCR-Xにときめいた……あの時輝いてたオジサンに贈る! お手軽だった韋駄天マシンのイマ

■通常走行モードではLOモードで充分だ

たった105㎰の1.3L、直4ターボエンジンだったがとにかく凄かった
たった105㎰の1.3L、直4ターボエンジンだったがとにかく凄かった

 LOモードでにスイッチオンしての走りは、数字的には普通モードより馬力で14ps、トルクで1.8kgmダウンだが、速さはこれで十二分と思えるものだ。

 従来のホットモデル、ノンターボのEFIの速さも記憶に新しいが、これとは比較にならないほどの速さぶり。もしこのクルマに2モードのターボシステムがなく、LOモードのみの設定だとしてもそのパワフルぶりに試乗者は満足するに違いない。

 サウンドモードについてちょっと報告しておこう。LOモードではこれといったらしおサウンドはなく、ごく静かなものだが、普通モードにすると一変する。スロットルを全開にし、フルブーストがかかってくると、エキゾーストから軽いドラマチックな「シャーン」といった金属音が全身を刺激してくれる。

 一方、走りの、足についてはどうだろうか。ターボ仕様の足はノンターボとは異なり、大幅にパワーアップした動力性能およびターボ装着により、増加した車重に対応すべく、ダンパー、バネレートの見直し(ハードな方向にセッティングされた)がされた。

 走りの性能に重大な影響を与えるボディについてもフロントではアッパーとロワ―にブレースを入れ、リアではクロスメンバーの板厚を増すなどして、走りのレベルを引き上げる拝領がされている。このあたりもこのところの「ファントゥドライブ」を積極的にうたっているトヨタの手慣れた手法でもある。

 こうして引き締められたスターレットターボの走りはさすがに剛性感が高く、乗り心地は50~60km/h以下のスピードではゴツゴツした硬い感じがするものの、それ以上、車速を挙げるにつれて、安定感の高いフラット感の高いものとなる。ややハードすぎるのかもしれないがこのクルマにはちょうどいい。

 ややうねりの多い高速コーナーをホットに攻めたててみたが、クルマがあおられて方向が乱れるようなことは少なく、多少のステアリング修正だけでほぼ狙ったラインをトレースすることができた。

 このコーナーは以前、新型アコードで攻めたことがあるが、車格が異なるとはいえ、格段にスターレットターボのほうが速い。

 今回の試乗で最も気になったのがブレーキの能力だ、形状、サイズがノンターボ試乗と同じというのは気になる(リアはドラム)。これだけ速いぶっとびターボだ。ブレーキだけは万全の性能を確保してほしいのだ。

 ハンドリングとしては高速・安定志向に設定されており、タイトコーナーなどのフットワークはノンターボ仕様のほうが軽快。といっても軽量、コンパクトなクルマだ。ワインディングでホットに走らせるのがこのクルマにはやはりふさわしい。

■谷田部テストコースや筑波サーキットでのテストタイムは?

シビックSiと同じタイミングに同じエンジンを搭載する「バラードスポーツCR-X Si」が追加された。価格は1.3が99万3000~107万3000円、1.5は127万~138万円。Siは150万3000円
シビックSiと同じタイミングに同じエンジンを搭載する「バラードスポーツCR-X Si」が追加された。価格は1.3が99万3000~107万3000円、1.5は127万~138万円。Siは150万3000円

 その後、1986年3月26日号では鈴木直也氏レポートによる谷田部での最高速計測や筑波サーキットでのタイム計測が行われている。以下抜粋。

 深夜の谷田部に強烈なスキール音を響かせてダッシュしたスターレットターボは、ゼロヨン(0~400m加速タイム)で軽く16秒を切って15秒86。

 スターレットターボの最高速度はさすがに182.9㎞/hとそんなに飛びぬけた記録は出せなかったけれど、前号でタケちゃんマンが言ったとおり、乗用速度域(東名や箱根)での動力性能は国産のどんな高性能車にも太刀打ちできることを証明したといえよう。

 なお、今度のスターレットターボには標準で0.52㎏/cm2の過給圧を、0.27㎏/cm2まで下げるローモードスイッチというのがついているが、こいつでパワーを91psまで絞ってトライしてもゼロヨンは16.28秒。これはテストスタッフ一同あきれて声も出なかった。

当時F1レースで培かったホンダ独自のエンジン技術を基に開発し た小型高性能DOHC・16バルブ(1590cc)のZC型エンジンはCR-X Siに搭載
当時F1レースで培かったホンダ独自のエンジン技術を基に開発し た小型高性能DOHC・16バルブ(1590cc)のZC型エンジンはCR-X Siに搭載

 ノーマルアスピレーション(自然吸気)エンジン最後の切り札はCR-X Siだ。135ps/860㎏で7.49㎏/psというパワーウエイトレシオは1.6Lの自然吸気エンジンクラスとしては、ほぼ限界。

 これが負けたらもうネット140psと格段にパワフルなファミリアDOHCターボアンフィニしか残らない。気合を入れてスタート、う~ん、しかし惜しい! CR-X Siのタイムは15秒71と、わずかにスターレットにおよばない。

 さすがにファミリアDOHCターボアンフィニは軽く14秒76をマークしてスターレットをぶっちぎったが、これは勝って当たり前でちっともえばれない。

 最高速度では204.35㎞/hのファミリアを筆頭に、CR-X Siが192.26㎞/h、MR2が187.99㎞/hと、182.90㎞/hのスターレットターボを破ったが、カローラFX-GTは180.22㎞/hとまたもや弟分の後塵を拝することになった。

 続いて、スターレットターボは初挑戦となる筑波サーキット。スターレットターボで筑波を初めて攻めてまず思ったことは、過激なほどにパワフルなエンジンに比べて足回りは意外と安定志向だなと、いうことだった。

 とにかく、このクルマのパワフルなことは天下一品で、1、2ヘアピンなどの低速コーナーではアペックスを過ぎてグッと右足に力を込めた瞬間に、かなりの勢いで、どーっとパワーオンアンダーステアの傾向をみせる。これは4000回転あたりから顕著にパワーの盛り上がってくるこのクルマのエンジン特性からまあ致し方ないところではある。

 で、それを殺すために、コーナーの入り口では意識的にブレーキングを残したり、ダンロップコーナーなどではフェイント気味にタックインを使ったりしてクルマの向きを変えようと試みたわけだけれど、これが意外やテールが踏ん張っちゃって、あまり景気よく向きが変わってくれないのである。

 対するCR-X Siに関しては、筑波では一人天下、ぶっちぎりの1分13秒70をマークして、国産コーナリング最速マシンぶりをまざまざと見せつけた。

 このクルマは筑波でならRX-7だろうが互角の勝負をしちゃうのだからいかにスターレットターボといえどもちょっと届かなかったというわけである。

■最高速度
スターレットターボ:182.90㎞/h、CR-X Si:192.26㎞/h、カローラFX:180.22㎞/h、ファミリアターボ:204.35㎞/h
■0~400mタイム
スターレットターボ:15秒64、CR-X Si:15秒71、カローラFX:16秒61、ファミリアターボ:14秒76
■0~100㎞/hタイム
スターレットターボ:8秒62、CR-X Si:7秒37、カローラFX:9秒50、ファミリアターボ:7秒52
■筑波サーキットラップタイム
スターレットターボ:1分15秒59、CR-X Si:1分13秒50、カローラFX:1分16秒50、ファミリアターボ:1分15秒20

※1986年3月26日号より抜粋したものです

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