こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】 カタツムリを模したエスカルゴに街行く人の視線が集中!?

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■キャラ立ちさせつつ多彩な用途に応える

 パイクカーとはいえ商用車として開発されたことから、実用面でも高い水準の能力を有している。特に荷室の広さは特筆すべきポイントだ。長さ1065mm、幅1325mmという荷室寸法は一般的な商用バンと同等だが、高さは1230mmを確保することでさまざまな用途に応えてくれる。床がフラットなうえに、可倒式のリアシートやルーフ近くから床面まで開く大型テールゲートの採用によって荷物の積み降ろし作業もしやすい。

 乗用車とは違い、ハードに使われることを想定し、前後バンパーやフロントフェンダー、ヘッドランプフィニッシャー、リヤフィレットプロテクターに高剛性PP(ポリプロビレン)樹脂を採用するなど、耐久性を重視した作りがなされているのも商用車ならではの特徴と言えるだろう。

 メカニズムはベースとなったADバンからの流用となる。パワーユニットは動力性能と燃費のバランスに長けた直列4気筒1.5LのPLASMA-E15Sエンジンを搭載し、トランスミッションは3速ATの組み合わせ。

 最高出力73ps(ネット)、11.8kgm(ネット)という最大トルクは、950~970kgという車重に対して十分なパフォーマンスだった。カタログ燃費は18.5km/Lで、経済面でメリットとなっていたのは間違いない。

 パワーステアリングを標準装備したり、サスペンションを4輪独立懸架としたこと、さらにコンパクトなボディを生かして実現した4.8mという最小回転半径の小ささなど、商用車であってもスマートにドライブできることにこだわった作りがなされていた。個性だけに特化しているようで、じつはそうじゃないというのも2年間の受注生産で約1万600台が売れた原動力になったのは間違いない。

なだらかなラインで構成されるフードから丸型ヘッドランプが突き出たフロントフェイスは、愛矯という言葉が似合う
なだらかなラインで構成されるフードから丸型ヘッドランプが突き出たフロントフェイスは、愛矯という言葉が似合う

 1980年代後半から1990年代初頭の日本は、自動車生産台数が世界でもトップクラスとなり、アメリカとの間で貿易摩擦を引き起こすほどの勢いで伸長し続けていた。この時代に登場したクルマはいずれも潤沢な開発費が投じられたこともあって、数十年を経た現在でも称賛されるほどの高い性能を実現していた。

 こうしたクルマが闊歩するなかでエスカルゴをはじめとしたパイクカーが注目を集めたのは、あえて性能至上主義的な開発傾向と一線を画したことだけでなく、その愛らしさが癒やしを求めるユーザーの琴線に触れたことも理由のひとつかもしれない。

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