今後復活率0%のマツダコスモの3ローターエンジン
どんなメーカーでも自社の技術を象徴するフラッグシップを持ちたいと思っているが、それを実現できるケースはまれ。「これぞ我が社だけの唯一無二の技術!」と誇れるようなネタは、そうたくさん転がっていない。
そんななか、誰もが認める世界唯一の技術がマツダのロータリーエンジンだ。
1967年の初代コスモ以来、波乱の歴史を刻んできたロータリーエンジンだが、市販車でその頂点に立ったエンジンとしては、1990年発売のユーノスコスモに搭載された3ローター20B-REWにとどめを刺す。
ロータリーエンジンは、そのレイアウト上2ローター以上にマルチ化しようとするとエキセントリックシャフトの分割が必要となる。
それは、レシプロエンジンのクランクシャフトを2分割でつなぐようなもので、極めて高い工作精度と組み立て精度管理を要求される難しい仕事。これがレース用以外で3ローター以上のマルチローターが造られなかった最大の理由だ。
20B-REWは半月キーで位置決めしたテーパー継ぎ手によってエキセントリックシャフトを2分割して対応したのだが、量産化にあたり問題になったのがその工作精度。
2ローターのエキセントリックシャフトより一桁高い1000分の1mmの加工精度が要求され、しかも組み立て後に全量チェックと場合によっては再研磨。コスト的にはとんでもない金食い虫となりマツダを悩ませることとなる。
まさに、バブル期でなければ絶対にゴーサインが出なかった空前絶後の高コストエンジン。
今でも3ローターコスモを所有しているオーナーは大事にしてほしいものでございます。
フェラーリサウンドと比肩するレクサスLFAのLR型エンジン
レクサスLFAはトヨタが造ったスーパーカーといわれているが、ぼくははトヨタグループ全体が参加した技術コンペティションの成果のようなクルマだと思っている。
3750万円で限定500台という商品コンセプトがこの競技唯一のルールで、チーフエンジニアの棚橋さんはオーケストラのコンダクター。
そこに、例えばヤマハのエンジン、アイシンのトランスアクスル、豊田自動織機のCFRPモノコック、ジェイテクトのトルクチューブ、アドヴィックスのブレーキなど、トヨタグループ各社が得意の技術を持ち寄って、華麗なハーモニーを奏でるスーパーカーを仕立てる。
なんというか、ブランド力を高めるとか継続的な商品としてシリーズ化するとか、そういう商売っ気はほとんどなくて、トヨタグループあげて一回限りのお祭りをやってみた、そんな印象を受けるクルマなのだ。
その中でも花形プレーヤーといえばやっぱりエンジンを担当したヤマハで、自然吸気のV型10気筒は4.8L(4805cc)という大排気量ながら560ps/8700rpmという高回転型の設計。
その官能的なエンジンサウンドはフェラーリにも比肩するもので、「さすが楽器屋!」とジョークのネタにされるほどだった(ちなみにエンジンのヤマハ発動機と楽器のヤマハは別の会社)。
いまのところ一度限りのお祭りに終わっているけど、できれば10年に一度くらいトヨタにはこういうクルマを造ってもらいたいものでございます。
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