ホンダN-BOXばかりがなぜ売れる?驚異的な販売台数をマーク!

 日本では200車種近いクルマが売られているが、ホンダN-BOXに勝る人気車はない。2011年12月に発売された先代(初代)N-BOXがヒット作になり、2017年9月に発売された2代目の現行型も絶好調だ。

 軽自動車の販売ナンバーワンはもちろん、2017年と2018年には、小型/普通車まで含めた国内販売の総合1位になった(少数のN-BOXスラッシュを含む)。

 N-BOXの人気を最もわかりやすく示したのは、2018年度(2018年4月〜2019年3月)の販売台数で、23万9706台を届け出した。

 国内販売総合2位のスズキスペーシアは15万8397台だから、N-BOXが圧倒的に多い。3位はダイハツタントで14万2550台だ。小型/普通車の1位は日産ノートだが、13万1760台にとどまる。

 N-BOXが驚異的に売れている理由を渡辺陽一郎氏が検証する。

文:渡辺陽一郎/写真:HONDA、ベストカー編集部


売れるクルマにはユーザーを驚かせる飛び道具が必須

 今日、乗用車をたくさん売るには、N-BOXの広さのような「実用的なサプライズ」が求められる。

 ダイハツタントの左側に装着されたワイドに開くミラクルオープンドア、トヨタプリウスの37.2km/Lに達するJC08モード燃費、日産ノートe-POWERのアクセルペダルだけで速度を自由に調節できる機能など「こんなに便利な使い方ができる」という付加価値が必要で、先代N-BOXの好調な売れ行きに結び付いた。

 タントのミラクルオープンドアなど、おそらく使わないユーザーも多いだろうが、それでも構わないのだ。

 N-BOXが高い人気を得た理由だが、先代型の成功によるところが大きい。人気の要因は、軽自動車のボディサイズからは想像できない大容量の室内空間を備えることであった。

 特に後席に座ると、前席との間にタップリした空間があり、足を伸ばしても前席まで届かない。室内高は現行型と同じ1400mmだから、子供が着替えをできるほどの高さがあった。

N-BOXは2011年11月に初代である先代型がデビュー。2017年8月にフルモデルチェンジを受け現行の2代目となる。驚異的な販売台数をマークするスーパー軽自動車

 そして後席を畳めば平らな荷室になり、高い天井と相まって大人用の自転車も簡単に積める。

 N-BOXは先代型、現行型ともに燃料タンクを前席の下に搭載しており、軽自動車でありながら、小型のミニバンに匹敵する荷室容量を備える。軽自動車では文句なくナンバーワンの広さだ。しかも後席をワンタッチで畳めるから、タントなどに比べると荷室の使い勝手がいい。

 先代型を含めて、N-BOXを購入したすべてのユーザーがここまで広い後席や荷室を求めたわけではないが、販売店でN-BOXを初めて見た人は例外なくその広さに驚いた。そして購買意欲を一気に高めてしまうのだ。

ハイトワゴン系軽自動車はどのモデルも広いラゲッジを備えているが、N-BOXは見せかけの広さではなく積載性にも優れていてる。何よりも室内の快適性が高い

 今日、乗用車をたくさん売るには、N-BOXの広さのような「実用的なサプライズ」が求められる。

 ダイハツタントの左側に装着されたワイドに開くミラクルオープンドア、トヨタプリウスの37.2km/Lに達するJC08モード燃費、日産ノートe-POWERのアクセルペダルだけで速度を自由に調節できる機能など「こんなに便利な使い方ができる」という付加価値が必要で、先代N-BOXの好調な売れ行きに結び付いた。

 タントのミラクルオープンドアなど、おそらく使わないユーザーも多いだろうが、それでも構わないのだ。

先代モデルが売れた最大の要因はエクステリアデザイン

 先代N-BOXの売れる要素は、広さだけではない。注目されたのがボディスタイルだ。水平基調のデザインで、短いボンネットと長いルーフの寸法的な比率もバランスが取れている。

 フロントマスクの形状は、シンプルで見栄えもいい。機能がいくら優れていても、外観の見栄えが悪いクルマは売れ行きを伸ばせない。先代N-BOXが好調に売れた背景には、外観のデザインもあった。

標準のほか若者をターゲットとしたエアロパーツを装着したカスタムを設定。水平基調のエクステリアデザインは今見ても秀逸で、現行型はキープコンセプトのデザインで登場

 このほかにも豊富な収納設備といった特徴を持たせたが、それはほかの軽自動車にも当てはまることだろう。

 先代N-BOXは広い室内が生み出す快適な居住性と積載性、車内の広さを巧みに表現したバランスのいいボディスタイルで人気を高めた。

現行N-BOXの新たな8つの価値

 現行N-BOXは、先代型が好調に売れた秘訣を継承して開発された。全高とホイールベースの数値、ボディの基本スタイルは先代型とほぼ同じだ。フロントマスクの形状も、特に標準ボディは先代型からほとんど変化していない。

 そのうえで現行N-BOXは、先代型の特徴に加えて、ユーザーニーズの高い新たな価値を盛り込んだ。

●ライバルを凌駕する内装の上質感
 先代型も軽自動車として不満はなかったが、ライバル車と比べて上質とはいえなかった。そこを現行型では大幅に改善している。メーターパネルはインパネの最上部に装着され、立体感が伴って視認性も良好だ。

●シートの造りも大幅に向
 背もたれと座面には充分な厚みがある。後席の座り心地も上質で、現行型では大人4名の乗車も快適に楽しめる。

●後席の座り心地に優れている
 ちなみに後席の座り心地は、軽自動車では欠点になりやすい。先ごろ新型になった日産デイズ/三菱eKシリーズは、総じて優れた軽自動車だが、後席の座り心地は悪い。
 座面の柔軟性が乏しく、床と座面の間隔も不足したから、足を前方に投げ出す座り方になってしまう。タントも後席の座り心地には不満が伴う。そこを現行N-BOXはしっかり造り込んだ。

新開発のプラットフォームにより、特にリアの乗り心地が大幅に向上。背が高いスーパーハイト系ながらハンドリングもシャープでスタビリティが高い

●助手席にも驚き仕様がある
 助手席にスーパースライドシートを備えた仕様を用意したことも特徴。通常の助手席はスライド量が240mmだが、スーパースライドシートは570mmになる。 後方にスライドさせると足元空間が大幅に広がり、リラックスして座れる。この状態では、助手席が運転席と右側の後席に座る乗員の中間に位置するから、車内の会話もしやすい。

助手席のスーパースライドシートは通常の倍以上となる570mmのロングスライドを実現し、先代型、ライバルに対し大きなアドバンテージを持っている

●収納性に優れている
 荷室は床面地上高を下げて470mmになり、自転車を積む時に、前輪を大きく持ち上げる必要がない。この床面地上高も、スペーシアは510mm、タントは595mmだから、N-BOXは一番低く荷物の収納性が優れている。

N-BOXの室内の使い勝手は無限大。シートアレンジも多彩で、普通のユーザーならすべてを使いこなすことは無理なレベル。でもそれがユーザーに受けている

●プラットフォームを新開発
 プラットフォームは、スーパースライドシートの長いスライドレールを装着するためにも刷新する必要があった。サスペンションも新しく、特に乗り心地は軽自動車の中でも最高峰。先に述べたシートの厚みも乗り心地を向上させている。

●エンジンを新開発
 新開発されたエンジンはノイズを抑え、防音材や防音効果の高いカーペットも採用した。そのために快適な乗り心地と併せて、最も静かな軽自動車になっている。N-BOXを運転していると、軽自動車であることをほとんど意識させない。

●ホンダセンシングを採用
 安全装備のホンダセンシングを採用したことも大きな魅力だ。歩行者や車両を検知して緊急自動ブレーキを作動させる機能は、軽自動車でも常識になりつつあるが、ホンダセンシングは電動パワーステアリングの制御でも回避操作を促す。

 車両が路肩を歩く歩行者に近づいた時など、避ける方向に操舵力を与える。また車間距離を自動制御できるクルーズコントロールも備わり、30km/h以上では、ドライバーのペダル操作が軽減される。

 車線の中央を走れるように、電動パワーステアリングを制御する機能も備わる。このような運転支援の機能は、軽自動車では現行N-BOXで初めて採用され、大切なセールスポイントになった。

N-BOXはホンダの軽自動車として初めてホンダセンシングを搭載。ドライバーを支援するステアリング制御などは軽自動車としては価値ある装備と言える

現行N-BOXはライバルに比べた時の欠点が少ない

 N-BOXは先代型も好調に売れたから、乗り替えの需要が多い。現行型の上質になった内装、静かで快適になった乗り心地は、販売店の試乗でも充分に体感できる。

 つまり現行N-BOXの進化がわかりやすく、先代型のユーザーが積極的に乗り替えたから、需要はますます伸びた。

 内装の質、居住性、積載性、乗り心地まで機能を幅広く向上させたから、さまざまな機能がライバル車よりも優れている。

「軽自動車を買うならN-BOXを選べば間違いない」という評価が市場で確立され、高人気に結び付いた。

 軽自動車は日常生活のツールだから、好調に売れて多くのユーザーが使っていることは、安心感と商品価値を高めて販売台数をさらに増やす。

 このほか軽自動車の小さなボディに、幅広い機能を凝縮させた密度感もN-BOXの魅力だ。デスクトップパソコンと同等以上の機能を備えたノートパソコンのような価値観も人気を高めた。

N-BOXが好調でも素直に喜べないジレンマ

 N-BOXはこのように優れた商品で好調に売れているが、ホンダの小型/普通車の需要を吸収していることも見逃せない。

 N-BOXの売れ行きは、今ではホンダ全車の30%以上に達する。N-WGNなどを含めた軽自動車の販売総数となれば、ホンダ全車の約半数を占めてしまう。N-BOXが好調に売れた結果、小型/普通車の販売力が低下してきた。

N-BOXの販売が好調なホンダだが、ホンダ車での食い合いが起きていて、フィットクラス、その上のクラスまでN-BOXに持って行かれているのは否定できない

 2018年度に最も多く売れたホンダの小型/普通車はフィットだが、その台数はN-BOXの36%に過ぎない。フィットの売れ行きは前年度に比べると約14%下がった。フリードも12%、オデッセイは24%減っている。

 つまりホンダの小型/普通車に対する頑張りが足りないために、需要が軽自動車のN-BOXに集中したともいえるだろう。N-BOXは優れた軽自動車だが、その好調な売れ行きは、一概に喜べないわけだ。

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