ホンダは二輪用のモバイルパワーパックeを装着した電動推進機のプロトタイプを用いて島根県松江市にある松江城のお堀を遊覧する堀川遊覧船に搭載し、実証実験を8月8日から開始する。電動推進機は簡単にいえば船の後ろに付ける船外機のエンジンを電動モーターに替えたもの。実証実験前に、実際に4ストロークエンジンの船外機付きの遊覧船と、電動推進機付きの遊覧船を乗り比べてみた!
文/ベストカーWeb編集部、写真/ベストカーWeb編集部、ホンダ
■4ストロークエンジンからEVパワーユニットへ
創業者本田宗一郎は1964年、マリーン事業(船外機)参入にあたり、当時2サイクルエンジンが主流のなかにあって、「水上を走るもの、水を汚すべからず」という考えのもと、水を汚さず静かな4ストロークエンジンにこだわり、4ストロークエンジン船外機「GB30」を投入した。
しかし、参入当初はさっぱり売れなかったそうだが、今では4ストロークエンジンが市場全体の約8割を占めるという。先見の明はさすがだ。
ちなみに船外機も含まれる汎用と呼ばれるパワープロダクト製品はホンダ全体の約20%も占め、そのうち船外機は全世界で年間約6.1万台(全体は約90万台)を販売しているという。船外機は2ps~250psまで4ストローク全24種類をラインナップしている。
こうした4ストロークエンジン一辺倒のなかに、ホンダが切り込んだのが、エンジンに変えて電動モーターを使った小型船舶用の「電動推進機」だ。しかし、なぜここに来て、船外機を電動化しようとしたのか?
ホンダは、2050年にホンダに関わるすべての製品と企業活動を通じてカーボンニュートラルを目指す、という高い目標の実現に向けて取り組んでおり、その領域は二輪や四輪といった陸上のモビリティにとどまらず、水上でのカーボンニュートラルに向けても積極的にチャレンジしている。
具体的にはカーボンニュートラル、クリーンエネルギー、リソースサーキュレーションを1つのコンセプトにまとめた「トリプルアクション to ゼロ」を2021年に制定。2030年までにカーボンブリー社会の実現をリードしつつ、2050年にはCO2排出実質ゼロという目標を設定し、達成に向けて事業活動を進めている。
こうしたカーボンニュートラル実現に向けて、ホンダのマリン事業部では、2021年11月に電動推進機のプロトタイプを発表。実証実験をするための相手先を探していたところ、1997年から環境に優しいホンダの4ストロークエンジンを搭載した遊覧船42艇を使用している松江市から堀川遊覧船を電動化したいと打診があったそうだ。
松江市は脱炭素先行地域として「カーボンニュートラル観光」を掲げ、持続可能なまちづくり、および地方創生に寄与することを目的としてさまざまな環境活動に取り組んでいる。こうした松江市の環境への思いとホンダの思いが合致したことから、今回、電動推進機プロトタイプの実証実験を、堀川遊覧船(公益財団法人松江市観光振興公社が運営)を活用して行うことになったというわけだ。
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