■エンジン船外機、EVの電動推進機、両方に実際に乗ってみた
それでは実際にエンジン船外機、電動モーターを使った電動推進機を搭載した遊覧船の両方に乗り込んでみる。松江城のお堀をめぐる堀川遊覧船は通常は1周約3.7㎞を約50分乗船するが、今回は15分程度乗船した。
まずは4ストロークエンジン船。想像した通り、エンジンを始動すると「ブルブル」、加速すると「ブブブブー」というエンジン音とともに振動も伝わってきて、若干だが排気ガスの臭いも漂ってくる。とはいえ、4ストロークエンジンであることと、排気は水中のため、やかましいというほどではない。
いっぽう、電動推進機船は船外機に比べてトップの部分が薄くコンパクト。音に関しては、始動音はほぼしないし、加速時、多少「ウィーン」というギアがかみ合う音はするものの、その後の巡行は圧倒的に静かだ。振動に関しても床やへりを触ってみたが、手に伝わってくる振動が少ないことを体感できた。
計測した騒音データは4ストロークエンジン船外機に対してマイナス5dB、72dB→67db、マイナス5dBというと大したことがないと思われるかもしれないが実際に体験してみるとかなりの差。
船体振動は4ストロークエンジン船外機が0.015m/S2に対し、0.005m/S2と、60%以上軽減したという。クルマに例えると、音と振動の違いは、EVとディーゼル車のアイドリング時の騒音の差くらいに感じた。
船頭さんに「4ストロークエンジンの船外機に比べて一番違うのはどんなところですか?」と聞いてみた。
「やっぱり圧倒的に音が静かですね。エンジン船だと船の前のほうにいらしゃるお客さんの声は私に届きにくく、私もあまりお客さんの声は聞こえにくいのですが電動推進機はよく聞こえますね」。
5km/hまでの加速フィールやパワー感については「加速はほぼ同じだと思います。一番違うのは反転させる時です。小回りが利くのでラクですね」。
乗船して感じたのは、音も静かで臭いもなく美しい景色を集中して見ることができること。ゆっくりと進み、船が水を切る音が聞こえてきたのは初めての経験だ。
バッテリーパックは、約20秒で交換することができ、2基1セット。最大で1艇が約8周(約50分×8)するため、3セット2回航行可能だという。
ちなみにバッテリーは100%容量がなくなるまで使うと寿命が短くなるため、航行1回ごとに交換を勧めているという。1回航行すると60%、2回目は充電し80%まで戻して航行し40%、という形で使うと5、6年は充分な性能を維持するとのことだ。
ちなみに4ストロークエンジンBF9.9を搭載する42艇の堀川遊覧船の全艇を電動化した場合、毎年47トンのCO₂削減効果があるという。
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