クルマは移動の手段であると同時に趣味性が強く反映されるため、流行廃りは日常茶飯事。
平成の31年3カ月の間には20世紀から21世紀に変わったという大きな節目があり、クルマ界にはいろいろなトレンド、ブームが巻き起こった。現在も続いているものもあれば、強者どもが夢のあと状態のものもある。
本企画では数あるトレンド、ブームの中から6つを選び出し、ブームの火付け役となったクルマとこれからどうなるのかを片岡英明氏を検証する。
文:片岡英明/写真:HONDA、NISSAN、MAZDA、MITSUBISHI、ベストカー編集部
乗用タイプのミニバンブームの火付け役のホンダオデッセイ(初代)
バブルが弾けた1990年代の前半、ホンダの国内販売は大幅に減少し、屋台骨のシビックとアコードも激減。狭山の生産ラインは生産調整を強いられた。
この苦境を乗り切るために企画されたのがクリエイティブムーバー(生活創造車)の第1弾、オデッセイだ。ベースとしたのはアコードである。
この時期のミニバンは、商用車をベースに設計していた。背が高くて広いが、走りや快適性は今一歩。このウィークポイントを払拭したワゴン感覚のミニバンがオデッセイだ。
ライバルより背が低いのは、狭山工場の生産ラインに入るように設計したためだ。乗用車と同じ前後ともヒンジ式ドアだから違和感なく乗り降りできた。
アコードと同じ2.2Lの直列4気筒VTECは軽やかに回り、サスペンションは4輪ダブルウイッシュボーンだったからハンドリングも軽快だった。
パーソナルジェットをイメージしたインテリアは居心地がよく上質な乗り味で大ヒットし、3ナンバー車の販売トップになり、ライバルも続々と追随。
【これからどうなる?】
消滅の可能性が高かったが中国マーケットの需要により日本でも販売されることになった現行オデッセイは、次期モデルもスタンスは変わらないだろう。乗用タイプミニバンというカテゴリーが実質消滅し、日本人のために生まれたオデッセイが、海外の事情次第なのは寂しい限り。
Lクラスミニバンを確立した日産エルグランド(初代)
1991年に発売したバネットセレナは車両レイアウトを変え、商用車からの脱皮を図り、兄貴分のラルゴ(1993年)はハイウェイスターが大人気。
その事実上の後継モデルとして1997年に日産が送り出したのがエルグランドだ。キャッチフレーズは「最高級新世代1BOX」で、大柄なワンモーションボディに威風堂々としたメッキのグリルを組み合わせている。
ビッグサイズゆえキャビンは3列目まで広く、ウォークスルーも楽々。
ガソリンエンジンは3L、V型6気筒SOHCで、2トンに迫る重量級のボディを軽々と加速させ、静粛性も高かった。3.2Lのインタークーラー付きディーゼルターボも俊足だった。
また、オールモード4×4も設定したからアウトドア派は喜んだ。ハイウェイスターだけでなくライダーやVIP仕様のロイヤルラインも人気車になった。
トヨタはグランビアを投入したが、まったく歯が立たずLクラスミニバンの王者に君臨し、トヨタの首脳陣を歯ぎしりさせた。
【これからどうなる?】
現行エルグランドがデビューしたのが2010年5月だからすでに丸9年が経過。次期モデルは不透明だが、トヨタアルファード/ヴェルファイアに完全に駆逐された状態の打破を願う。
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