商品やサービスは成功例があると「その成功に続け」とばかりに、同業他社から二匹目のドジョウ的を狙った類似したものが素早く登場するものである。それはクルマも同じで、この手法は特にトヨタが得意としている。
そういったクルマは後出しジャンケンなぶんパイオニアを上回っていることが多く、商業的には後出しのほうが成功を収めることも珍しくない。
当記事では永田恵一氏が二匹目のドジョウを狙ったクルマの成功例を振り返り、成功した理由などを考察する。
文:永田恵一/写真:SUZUKI、DAIHATSU、HONDA、TOYOTA、SUBARU
初代スズキワゴンRに対する初代ダイハツムーブ
初代ワゴンRは「サイズが限られた軽自動車のスペースを広くするには全高を高くするしかない」というコンセプトで、1993年に登場。当初は実験車的な部分があり、販売目標台数も控えめだった。
しかし初代ワゴンRは頭上スペースに余裕があることにより広さをはじめとした高い実用性だけでなく、全高の高さを生かした見晴らしのよさや道具っぽい雰囲気がクラスレスな魅力となり、大ヒット作となった。
初代ワゴンRに続いたのが初代ムーヴである。
初代ムーヴは初代ワゴンRに影響され大慌てで開発されたことが、着座位置がベースとなったミラと大差ない点などから見受けられ、初代ワゴンRに対し大きなアドバンテージは特に感じられなかった。
しかしダイハツの軽自動車の母体台数の多さや初代ワゴンRしかライバルがなかったこともあり、初代ムーヴも成功を納めた。
また初代ムーヴは当時「裏ムーヴ」と呼ばれたカスタムをマイナーチェンジで追加しており、今では軽自動車においてカスタム系がほとんどのモデルに設定されているのは初代ムーヴが残した功績と言えるだろう。
なお初代ワゴンRが開拓した軽ハイトワゴンはホンダや三菱も追従する大きなジャンルに成長し、依然として軽自動車全体の大きな柱となっている。
初代ホンダストリームに対する初代トヨタウィッシュ
2000年10月に登場した初代ストリームは当時のシビックをベースにしたヒンジドアを持つ乗用車に限りなく近い5ナンバーサイズのミニバンである。
初代ストリームは約1600mmの全高ながらサードシートもシッカリ使える広さを持ち、走りも乗用車と遜色なく、価格もリーズナブルと、多く人が「これは売れるだろう」と感じるクルマで、月販1万台ペースの人気を集めた。
初代ストリームから約2年後の2003年1月に登場した初代ウィッシュはストリームと全長、全幅、全高まで同じという完全な後追いコンセプトで登場。
初代ウィッシュは初代ストリームと遜色ないスペースを持ち、後出しだけにシビックベースの初代ストリームに対しベースに1クラス上のプレミオ&アリオンを使い、量販グレードのエンジンはストリームの1.7Lに対し1.8Lとするなど、トヨタが昔から得意とする「ライバルを少しずつ上回る」という手法で高い総合力を持ち、このジャンルの需要を初代ストリームからゴッソリ奪い取った。
ストリームは2006年登場の2代目モデルで先出しながら2009年登場の2代目ウィッシュを上回る性能を備えたものの、2代目ウィッシュは価格の安さというアドバンテージを持ち、残念ながらストリームは再浮上することなく絶版となった。
しかしウィッシュも5ナンバーミニバンの主流がスライドドアを持つハイト系に移ったこともあり絶版となり、ストリームには直接的ではなく、低空飛行が続いているにせよ、ジェイドという後継車的なモデルがあるのはパイオニアの意地だろうか。
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