4月23日に国交省が乗用車の衝突被害軽減ブレーキ認定結果を初めて公表。それによって8社152型式の衝突被害軽減ブレーキが認定された形になった。
しかし、今回の認定制度はサポカーとどう違うのか? そのほかにも似たようなもので予防安全性能アセスメントというものもあって非常にわかりづらく紛らわしい。やり方が下手すぎて混乱させるだけのように感じてしまう。
そこで交通コメンテーターの西村直人氏に認定制度はサポカーや予防安全性能アセスメントとどう違うのか? どんな目的があるのかを考察してもらった。
文:西村直人/写真:HONDA、西尾タクト、国交省、JNCAP、ベストカー編集部
サポカーっていったい何?
自動ブレーキとは、正式名称を「衝突被害軽減ブレーキ」(以下、自律自動ブレーキ)とする先進安全技術の名称。この自律自動ブレーキに対する国の基準として「衝突被害軽減ブレーキ認定制度」が2018年3月に創設され、同4月1日からスタートしている。
認定制度は、交通事故を防止するために2017年4月に設置された「安全運転サポート車」(以下、サポカー)の普及啓発が一番の目的。さらに、自動車メーカーからの要望に応じた形で制度が始まった点も興味深いところだ。
ではサポカーとは何かというと、自律自動ブレーキと、ペダル踏み間違い時加速抑制装置などを備えたクルマの愛称で、こうした先進安全技術を備えた車両であれば自動車メーカーのWebサイトや各車のカタログでもサポカーである旨をサポカーのロゴマークとともに紹介することができる。
なぜサポカーが始まったのかといえば、先進安全技術の理解促進と普及活動のため。こうした先進安全技術は普及してこそ最大限の被害軽減、または抑制効果を発揮するという考え方に基づき、国を挙げて普及に努めてきた。
しかし、想定よりも普及の歩みが遅い。これは、乗っているクルマにカーナビを装着するように、自律自動ブレーキの後付けができないからで、未装着車の場合はクルマの買い換えが不可欠であることが主な要因だ。
そこで今回は、この認定基準の紹介にはじまり、サポカーとの違い、そして2019年4月23日に発表された「衝突被害軽減ブレーキ認定車」について見ていきたい。
認定制度はサポカーの普及促進が第一の目的
まずは、衝突被害軽減ブレーキ認定制度の概要から。大きく3点の基準が設けられた。
1/静止している前方車両に対して50km/hで接近した際に、衝突被害軽減ブレーキによる制動制御により、衝突しない又は衝突時の速度が20km/h以下となること。
2/20km/hで同一方向に走行する前方車両に対して50km/hで接近した際に、衝突被害軽減ブレーキによる制動制御により、衝突しないこと。
3/1と2の衝突被害軽減ブレーキによる制動制御の少なくとも0.8秒前までに、衝突のおそれがある前方車両の存在を運転者に知らせるための警報が作動すること。※以上、原文まま。
ご覧のように、普及が進んでいる自律自動ブレーキのシステム概要をそのまま基準として移行しているため基準そのものはわかりやすいが、注目すべきは各項目に速度と時間が明文化されていることにある。
ここが認定制度たる所以で、これまで各社の各車で作動条件や作動結果が違っていたものを、こうして一定の基準線を設けることで「自律自動ブレーキを名乗るならこれが条件ですよ」と国が技術指針を明確に示したわけだ。
加えて前述のように、サポカーの普及促進という第一の目的に対しても、こうして国が技術指針を示したことで、サポカーそのものの定義と技術内容がより明確になり誤解が減ることから、最終的に自動車ユーザーである我々が迷うことなく先進安全技術を搭載したクルマ選びができる、という流れに繋がっていく。これが衝突被害軽減ブレーキ認定制度とサポカーの関係性だ。
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