認定制度により衝突被害軽減ブレーキを共通言語化
ところで、自律自動ブレーキが国産車に搭載されるようになり16年(2003年6月登場のホンダ「インスパイア」が搭載した「CMS/追突軽減ブレーキ」)が経過した。
CMSはドライバーへの警報とブレーキ制御を備えた世界初の乗用車向け自律自動ブレーキで、当時の国土交通省から認可を得たADAS(先進運転支援システム)としてカウントされている。
その後、スバル「アイサイト」をトリガーに、乗用車だけで装着率が70.38%(国土交通省発表/2018年末)にまで及ぶ日本の自律自動ブレーキだが、残念ながらユーザーからは「自律自動ブレーキがあればどんな状況でも止る」という誤解やシステムに対する過信が生まれている。
よって今回の認定制度は、今後も普及が見込まれる自律自動ブレーキに対する誤解をなくし、さらにメーカー間や車両間で違う自律自動ブレーキを共通言語化したうえで、正しい普及を目指しているという見方もできる。
それぞれが違う目的を持っている
いっぽう、国では2014年度から予防安全性能アセスメントとして、自律自動ブレーキをはじめとした先進安全技術の評価を行っている。「サポカーに認定制度、そして予防安全性能アセスメントと、いくつも評価してムダじゃないか」と思われることだろう。
確かに、かぶっているテスト内容や評価結果を見ると“ムダなんじゃ……”と思うところがあるものの、テスト内容の詳細を追っていったり結果の詳細を熟読したりすると、それぞれが違う目的で評価されていることがわかる。
さきほど、サポカーを普及させるために、その技術指針を明確にする目的で認定制度が作られたと紹介したが、予防安全性能アセスメントと認定制度をダブルで行うことで自律自動ブレーキ自体の性能向上と、それに伴う現在の認定制度で明文化されている技術指針を将来的に改正するポイントを見極めるうえで、大切な指標になっていく。技術の進化は日進月歩だからだ。
申請した車両がすべて認定されたのは当然の結果
違う角度からの見方もできる。今回の認定制度と予防安全性能アセスメントは次の棲み分けで考えるとわかりやすいのではないか。
予防安全性能アセスメントは、細かな試験項目に加えて試験条件を限りなく全車で統一することで、自律自動ブレーキをはじめとした各種の先進安全技術を客観的に評価し数値化、それらの総合得点でその車両が持つ予防安全性能が示されている。
対する、認定制度は前述した冒頭の1〜3の“基準を満たしているかどうか”を作り手である自動車メーカーや国土交通省などから広く周知することが目的だ。
つまり、予防安全性能アセスメントはスポーツにおける「規定演技種目」であり、認定制度はそのスポーツへの「参加規程」と考えると多少納得がいくのではないか。
2019年4月23日、認定制度として初の認定車リストが発表された。詳細はWebサイトで確認頂くとして、自動車メーカーから申請があった車両は基本的にすべてが認定された。そりゃそうだ。
「認定制度を設けてください!」と、自動車メーカーからの要望を受けて制定された制度なので、認定基準をクリアしたクルマを正々堂々と申請するのだから、この結果は当然至極。
交通コメンテーターとしての次なる要望は、2007年から段階的に自律自動ブレーキの義務化が施行されている商用車について衝突被害軽減ブレーキの認定制度が設けられること。
2019年11月から施行される厳しい基準「AEBS2.0」などは公になっているが、同じ公道を走る仲間として、各社の各車における性能差についてもっと知りたいと思っています。
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