これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。
当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、サイノスの派生車ながら抜群の存在感を誇った、サイノスコンバーチブルについて紹介していこう。
文/フォッケウルフ、写真/トヨタ
■オープンエアを気軽に楽しませてくれる
トヨタの86とかスープラ、スバルBRZ、日産フェアレディZなど、スポーツカーの新型車が登場するたびに、メディアはこぞって「スポーツカー人気再燃!」などと煽ったりする。
スタイリッシュなフォルムや、技術の粋を集めて実現した卓越した運動性能で注目を集め、そうした期待とは裏腹に現代のスポーツカーは、デビュー当初こそ話題を振りまくものの、実用性が低くて趣味性が高く、なおかつ高額なクルマを手にするユーザーは少数で、人気再燃どころかマニアのための嗜好品と揶揄される存在に落ち着いてしまう。
しかし、かつて日本にはスポーツカーがもてはやされていた時代が確かにあった。本格的なパフォーマンスを有するクルマはもちろん、「気軽に楽しめるスポーツクーペ」という、現代では実現不可能な狙いで作られたクルマも多数存在していたのだ。今回クローズアップする「サイノス コンバーチブル」も、そんな狙いで作られたクルマである。
サイノスは1991年1月に登場した、4人乗りの2ドアスモールスペシャリティクーペで、当時のトヨタのラインナップでは、カローラレビン、スプリンタートレノよりコンパクトなうえに車両価格もリーズナブルな、まさにスポーツカーのエントリーモデルとして位置付けられていた。
動力性能とかハンドリングといった走りに特化した能力に際立った特徴は持たないが、シンプルでありながらバランスの取れたスタイリッシュな風貌に仕上げていたのは、クルマ好きの男性だけでなく、女性にもドライブして欲しいという狙いがあったと言われている。そんな気軽に乗れるクルマという特徴が、特に若者を中心にウケて一躍ヒットモデルとなった。
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