■洒落たスタイルで女性ユーザーにアピール
サイノスコンバーチブルで注目したいのは、その生産システムだ。オープン化にあたっては、ただ屋根を廃しただけでなく、いったんクーペモデルを「セリカ コンバーチブル」で実績のあるアメリカのASC社(American Sunroof Corporation)に送り、同社がボディの改造と強化、幌の組み込みを行い、完成車を再び日本に送り返して最終チェックして出荷するという工程を実施していた。
オープンカーのスペシャリストであるASC社の協力のもと作られていただけに完成度は非常に高かったと言われている。
特に車内は、クーペより狭くはなっていたものの後席はそのまま残されていたので4名乗車はクーペと同じ。幌は手動式のソフトトップ形状だったが、リアウインドウ部分に熱線入りのガラスが採用されるなど、日常的な用途もしっかりとフォローされていた。
そのほかにもハイマウントストップランプ内蔵のリヤあポイラーや、風の巻き込みを防ぐ三角窓、フロントシートベルトショルダー部には走行中の風によって生じる振動を抑えるスティフナーパッドを専用装備として採用していた。
オープンカーといえば爽快感を得られる反面、居住性や実用性は犠牲になりがちだが、そういったネガティブな要素を払拭しているあたりはオープンカーのスペシャリストが手掛けただけのことはある。
5ナンバーサイズのコンパクトなスポーツカーで、しかも手間のかかる工程を踏んでオープン仕様になっているなど、サイノスコンバーチブルは、1990年当時だからこそ実現できたクルマだと言っていい。
当時はハイパワーに物を言わせたハードなスポーツカーも多く存在し、パフォーマンスに関してはそれらと比較すると少々物足りなさがあったのは否めない。しかし、小粋なスタイリングと軽快感に溢れた走り、そして日常的な用途でも不満なく使えて、快適の乗れるうえに経済的という特徴は、スポーツカー好きだけでなく、多くの人に歓迎されたことは間違いない。
後継モデルは存在しないが、サイノスコンバーチブルの特徴や個性は、生産終了から20年以上の時を経てもなお色褪せていない。もしも、サイノスコンバーチブルのように、スポーツカーの雰囲気を楽しめるクルマを安価に提供して裾野を広げてくれたなら、今度こそスポーツカーの人気は再燃するかもしれない。
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