■変わるものと変わらぬもの、生まれ変わった老舗の味『鮨すえひろ』@永福町
前身は店主・名和さんの父が立ち上げ、50年以上この町で愛された「末廣鮨」。ちょうど1年前、装いも新たに「鮨すえひろ」として第2章のスタートを切った。
リニューアルに合わせつまみも拡大。寿司屋ならではの新鮮な身を揚げた鯵フライはふわっふわ、大トロを串打ちしたねぎま焼きは炙るとさらに香りも旨みも膨らんでくる。そして、いざ握りへ。
冷蔵庫から取り出したケースに並ぶのは、丁寧な仕込みを終えたピカピカのネタたち。昔から仲卸で働く人と人との繋がりを大事にしてきたという名和さんの言葉が腑に落ちるような鮮度と質だ。
先代から引き継いだ酸味も甘みもまろやかに立たせたシャリが、かつての「末廣鮨」の味を今に伝えている。
[住所]東京都杉並区永福1-44-8
[電話]090-4117-2138
[営業時間]11時半~14時(土・日・祝のみ)、夜は2部制・17時~19時半LO、20時~22時LO
[休日]水
[交通]京王井の頭線永福町駅北口から徒歩2分
■味と居心地と、細部までこだわり続ける姿勢に感服!『健寿司』@蒲田
席に座るとシミひとつない白木のカウンターに目を奪われた。長年手入れし続けた檜のそれは、なめらかで肌に当たる感覚も気持ちいい。
奥に控える冷蔵ケースにはネタが整然と並べられ、これだけでも実直な仕事ぶりが伝わってくるではないか。現在店を守るのが物腰も柔らかな2代目の光一さん。できるだけ天然の、それも近海物を選んで仕入れている。
歯応えのいい白身や、舌に吸い付くようなマグロとネタの良さは大前提として、3種類を用意する玉子焼きに、刺身のツマも手作り、さらに卓上に置く醤油だって、ひと晩で入れ替えてフレッシュな香りを大事にしている。
そんな目立たぬ細部まで惜しみなく技と手間を込めた、お手本のような町寿司だ。
[住所]東京都大田区蒲田5-19-3
[電話]03-3731-3411
[営業時間]17時~24時(23時40分LO)
[休日]日、祝の月
[交通]JR京浜東北線ほか蒲田駅東口から徒歩2分
■つまみになる握り、その秘密は赤酢のシャリにあり『鮨処 まる』@世田谷代田
「ご飯でお酒を飲みたくなるのは寿司だけでしょう?」と店主の柴木さん。この道40年の熟練の指使いから1貫ずつ供される握りは、まさにその言葉通りの味わいだった。
味を支えるのが米酢と赤酢を同割で使ったシャリ。口に含めば酸味はシャープでありつつも、後からじわじわと舌を包むようなまろやかさもあり、米粒に沁みた塩もやや強めだ。
川崎の市場に足を運び、できる限り天然物で揃えた上質なネタと合わせれば、個性ある人肌のシャリが脂の甘みや旨み、繊細な風味を鮮やかに立たせてくれるのだ。
こんな寿司には冷酒よりもおだやかに甘みが膨らむぬる燗がよく似合う。珠玉の握りでゆるゆる酒盃を傾ける、そんな粋な過ごし方もいいだろう。
[住所]東京都世田谷区代田1-33-12
[電話]03-3413-7716
[営業時間]17時半~21時
[休日]水
[交通]小田急線世田谷代田駅南口から徒歩10分
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