これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。
当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、ラテンの風味を感じさせたスポーツセダン、トヨタ ヴェロッサを取り上げる。
文/フォッケウルフ、写真/トヨタ
■クレスタとチェイサーの実質的な後継車
1980~1990年代、トヨタには販売の中心となったミドルサイズセダンの3モデルが君臨していた。言わずと知れた、マークII/チェイサー/クレスタだ。しかし、マークIIが9代目モデルとなった2000年前後に、チェイサーとクレスタがラインナップから姿を消すことになる。
そんななか、マークII自体が高年齢層向けのハイソカー、いわゆる「オッサンセダン」へと進化を深めつつあったことで(ちなみにその後、方向転換してマークXとなる)、よりスポーティで若々しいモデルを、チェイサーとクレスタのオーナーたちの受け皿として販売することになった。
このクルマが、2001年7月に登場した、その名も「ヴェロッサ」である。開発テーマは「エモーショナルセダン」で、車名の由来はイタリア語で「Vero(真実)」と「Rosso(赤)」からの造語とされている。情熱の色を堂々と車名に織り込むあたりからも、トヨタの狙いはスポーティさにあることが見て取れた。
しかし、販売されたのはクレスタを販売していたビスタ店。3兄弟のなかでも最もおとなしいモデルという位置付けだったクレスタの顧客を受け継ぐとなると、年配層、あるいは熱心なクルママニアではない層ということになってしまい、今思えば、ここはトヨタらしくないチョイスだったと言えよう。
エクステリアデザインはその車名やデザインテーマと違わず、躍動感を表現した欧州風の造形で、塊感のある彫刻のようなスタイリングが表現されていた。どこかアルファロメオの世界観を取り入れたようなイメージである。ただし、従来のマークII3兄弟と比べると、シャープさに欠けるところもあり、ここは従来ユーザーの好みをもう少し重視してもよかったかもしれない。
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