タイヤの進化も無視できない要素
パワーを受け止めるタイヤも進化している。
性能的には1980年代にはすでにかなりのものができていたが、グリップそのものの高さに加えて、ハイパワーによる瞬間的な高い入力にも耐える剛性や、温度変化に対する安定性、さらには市販車ゆえウェットグリップやライフの長さも大事。
いまや少し前のレーシングタイヤなみのパフォーマンスを、日常的に使用する市販車に求められる諸性能と両立することができている。
タイヤのキャパシティが増すと、クルマ側もできることの範囲が広がり、より攻めたセッティングも可能となる。
マクラーレンMP4-12が与えた衝撃
クルマ自体も、特に21世紀に入った頃からどんどんエスカレートして、400馬力級のクルマがぜんぜん特殊なものではなくなり、500馬力超のものも珍しくなくなってきた。
スーパースポーツの世界がものすごいことになっているのはわかるとして、そうではない乗用車が主体のブランドのパフォーマンスモデルがえらいことになっている。
それはやはり、「数字」がものをいうからだ。
高いパワーやトルク、速いタイムなどがわかりやすいほうがいい。より高い性能であることは、そのクルマの魅力そのものだ。
実際には、500馬力を引き出せるシチュエーションは限られるわけだが、それでもいざとなれば出せるところに価値があり、ひいてはメーカーにとってはライバルと同じ土俵に乗り、競争に勝つことに意義がある。
高性能をウリとするメーカーとしても、エコへの配慮を見せる一方で、CAFE等はあっても、高性能車の開発を制約する規則はないことから、化石燃料がまだ普通に使えるうちに、できることをやってしまおうという意図も見え隠れする。
そしてIT長者をはじめ、そうしたクルマを買い求める富裕層がかつてよりも増えていることも大きな要素として挙げられる。
彼らの多くは高性能を快適に楽しめることを求めている。
乗用車ベースの高性能車だけでなく、スーパースポーツの世界でも、フェラーリやランボルギーニあたりも昔とは比べものにならないほど快適で乗りやすくなってきたが、フェラーリなら458、ランボルギーニならウラカンから一気に引き上げられ背景には、マクラーレンの登場による影響が小さくないように思える。
極めて快適で乗りやすく、それでいて非常に優れた走行性能を誇り夜に高く評価されたMP4-12には、名だたる列強も出し抜かれた思いをしたことに違いない。
メーカーにとっては、ユーザーの要望にいかにして応えるかが大事。
高性能車の多くが安全でイージーに乗れるようになったのは、今の時代はまさしくそれが求められているからにほかならない。
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