【NISMO事業部設立から2年】NISMOが急速に浸透した事情と課題

NISMOの名前が一般にも浸透して大成功

NISMOカーズ事業部は2017年4月に設立されたが、遡れば2013年にNISMOがメーカー直系のチューナーから日産のスポーツブランドと位置付けられたことが大きい

 これを加速させたのが、2017年のニスモ・カーズ事業部設立だ。NISMOそのものはモータースポーツ活動を主体とする専門家集団で、コンプリートカーの生産が得意というわけではない。

 そこで、これまでもNISMOをふくむ日産系特装車の生産を担当してきたオーテックジャパンに、NISMOブランドを冠したロードカーの生産を統括する部門を新設。この時点で年間1.5万台規模の実績を、ゆくゆくは年間10万台程度まで引き上げる野心的なロードマップを描いている。

NISMOブランドは海外でも人気が高く、日本では販売していないセントラにNISMOを設定するなどロードカー戦略は国内だけにとどまらない

 現在では、EVのリーフ、コンパクトカーのマーチやノートをはじめ、SUVのジューク、ミニバンのセレナ、そしてフェアレディZやGT-Rなど、コンプリートカーとして7車種をラインナップ。

電気自動車のリーフは先代モデル、現行モデルともNISMOのモデルを設定。NISMOは赤いワンポイントを各所にあしらうのがアイデンティティとなっている

 新車不足の日産フリートのなかで、この陣容はなかなかの壮観といっていい。

 特に注目すべきは、ノートやセレナのような量販モデルでNISMOを選ぶユーザーが意外に多いという事実だろう。

 こういうファミリー向けの車種を買うユーザーは、パフォーマンスやスポーツ性に強い興味があるわけではないが、現場の声を取材すると「意外かもしれませんが、奥さま主導でNISMOを選ばれるケースが少なくないんです」という。

 つまり、内外装のデザインなどに表現されている、NISMOの“プレミアム感”を評価して購入しているということ。これは、ブランドとしてのNISMOが一般ユーザーまで広く浸透しつつある証しで、日本のスポーツブランドとしてはじめての現象。きわめて注目すべき事実だと思う。

ノート、ノートe-POWERのNISMOが売れている。これはNISMOの名前、ブランドイメージが一般に浸透しているのを実感させてくれる
ノーとともにNISMOの量販に大貢献のセレナNISMO。もともとセレナを選ぶオーナーはスポーティなものを好む傾向があり、NISMOが売れているのも必然と言える

GT-R NISMOの価格は大幅アップが濃厚!!

 というわけで、普及価格帯における浸透度という点ではかつてない成功を収めているNISMOだが、そうなるとむしろ課題は将来的なハイエンドモデルの育成になる。

 NISMOのフラッグシップはもちろんGT-R NISMOで、そのパフォーマンスやプレステージについては誰もが認める存在といっていい。

 2020年モデルの価格はアメリカでの価格が 21万740ドル(1ドル=108円で換算すると約2276万円)だから1870万200円だった前のモデルに比べると大幅アップとなる模様。

 ただ前評判を聞くとどうやら「その価値じゅうぶんにアリ!」らしい。

GT3のレーシングマシンからフィードバックされたターボ、軽量化などノーマルGT-Rとは一線を画すスペックを誇る。内容を考えれば2000万円超えでも高くない!?

 しかし、R35GT-Rは20年モデルが最終型となる気配だし、それに続くフェアレディZ NISMOも、後継モデルが見えてこない。この2車種がフェイドアウトすると、NISMOブランドのプレステージ性は大きくパワーダウン。やはり、こういうブランドには「フラッグシップとして世界トップクラスの高性能車を擁する」ことがきわめて重要なのだ。

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