【七不思議のひとつ】ドアロック連動の給油口が日本車の主流にならない理由

 日本車といえば、至れり尽くせりの装備が売り物。かつて、ドリンクホルダーなどというものは日本車のウリで、メルセデスベンツがカップホルダーを採用した際には「ベンツよお前もか?」と言わしめたものです。

 しかし、なぜか日本車のほうがちょっと面倒なことになっているものがあります。それはフューエルリッド(給油口のフタ)です。

 輸入車の多くはフューエルリッドとドアロックが連動しているのですが(ドアロックが解除されている状態であれば給油口のフタも外部から自由に開けられる)、日本車の場合はフューエルリッドのロック解除については独立しているもの (ドアが開いていようと施錠されていようと、専用のレバーを操作しないと給油口のフタは開かないケースが多い) が多く見かけられます。

 これはなぜなのかを考察していきます。

文:諸星陽一/写真:HONDA、NISSAN、ベストカー編集部、ベストカーWeb編集部


フューエルリッドはお国柄が反映されている!?

 日本車の使われ方、日本でのクルマの価値などを考えて見るといろいろなものが見えてきます。

 まず、日本のクルマのフューエルリッドが車内から開けられない時代は、リッド自体、もしくは鍵を開けた中にあるキャップに鍵が付いていました。今でもキャップがむき出しのトラックなどでは、キャップに鍵が付いていることがあります。

日本車もドアロックと給油口のロックが連動しているタイプが増えてきているがまだ多くない。ホンダは2001年6月デビューの初代フィットで採用

 驚くべきは、鍵の付いていないキャップもけっこう見かけるということです。むき出しの燃料タンクに鍵なしのキャップが付いている。こんな不用心なことが許されるのは日本だからなのでしょう。

 しかし、そんなことばかりはいってられないので、鍵付きのキャップに交換するトラックドライバーや経営者もたくさんいます。

日本のガソリンスタンドはセルフが増えてはいるがフルサービスタイプの需要も多い。フルサービスの場合、事前に開けておくとスタッフの誘導も楽になる

 さて、ドアロックとフューエルリッドロックの連動です。私の想像なのですが日本ではガソリンスタンドがフルサービスが当たり前だったからだと思うのです。

 日本ではスタンドにクルマを駐めたら、エンジンを停止してガソリンスタンドのスタッフに油種、量、支払い方法などを告げるというのはちょっと前までは当たり前でした。

 しかし欧米ではガソリンスタンドはセルフのほうが多いので、自分でガソリンを入れるのが当たり前ですので、クルマから降りてリッドを開けて……、という一連の動作ではドアロックと連動していたほうが圧倒的に使いやすかったという歴史があるのだと思います。

 また、リッドの開き方というか施解錠の仕方にも違いが見て取れます。

給油マークの横の▶が給油口のあるサイドを示している。この写真の場合、車体右側に給油口がああるので給油する時はそれに合わせて入庫すればOK

 日本車のフューエルリッドは操作によって開閉します。つまり、レバーを引いたり、ボタンを押したりするとリッドそのものがパカッと開きます。しかし、欧米車の場合はリッドの鍵がフリーになっているだけでリッドは開いていません。

 現在はメーター内にある▲印でフューエルリッドが左右のどちらにあるのか確認できますが、古めのクルマの場合はリッドを開放するとミラーでどちらにリッドがあるのか多くの場合は確認できます。

 さらに、日本の場合はフルサービスのスタンドがメインだったので、スタンドに入った時点でリッドを開けば給油口がどちらにあるか? をスタンドのスタッフが容易に確認でき、どのポンプに誘導すればいいかがわかりやすいという利点もあります。

レバー操作は面倒な行為ではない

 そもそも集中ロックは贅沢品で、今のようにどのクルマにも付いているものではなかったのです。現在はドア、リヤハッチ(トランクリッド)などが電動で集中ロックするようになっていますが、かつてはバキューム式といって空気圧を使っているものが主流でした。

 このバキューム時代はドイツの高級車などで使われていました。電動集中ロックのように「ガシャ」っと開閉するのではなく、「ヌルン」とゆっくり動くのが特徴でした。

レンタカーなどではレバーの位置がわからず苦労することも。レバーがないと困り果てていたら結局はドアロック連動式だった、ということもある

 電動集中ロックでリッドまで施解錠を連動させるにはリッド部分に電磁ロックの部品を追加しなければなりません。これはもちろんコストアップになります。

 輸入車に乗ったことがある人がこうした日本車に乗ると「なんでリッドが連動してないのだ?」と疑問に思うかもしれませんが、日本車にしか乗っていない人なら、手でレバーを引くのは大した手間と感じないのでしょう。

 そして、リッドまでを集中ロックにしてしまうと、前述のようにリッドを開くようにはできないという点も上げられます。

ホンダは2代目フィットでプッシュリフター式を初採用。日本車にも増えてきてる。欧州車にはこのタイプが多く、セルフスタンドなどでも使い勝手はいい

フューエルキャップはただの蓋じゃない

 ところでガソリンを入れる時にキャップを外すと「プシュー」という音を聞くことがあると思います。この音はタンク内の圧力と雰囲気の気圧が違うから起きることです。

 タンク内の圧力が高ければガソリンの蒸気が出てきますし、タンク内の圧力が低ければ空気を吸い込むので、そうした音が発生するわけです。

フューエルキャップは地味だが重要なパーツゆえ大切に扱いたい。コードでつながれているもの、キャップの裏に置き場所があるものが一般的になっている

 実はタンク内の圧力は厳密に調整されています。ガソリンが減ったときに空気が入っていかなければ、ガソリンタンクは凹んでしまいますし、逆に気温が上がり内圧が高くなったときに圧が抜けないとタンクが破裂する可能性もあります。

 ガソリンの蒸気は基本的にはチャコールキャニスター(チャコールではないキャニスターも存在します)という装置で回収されていますが、そこで回収しきれない場合にタンク内の圧力調整を行うのがフューエルキャップです。

 ガソリン蒸気を大気開放するのは環境上も安全上もよくありませんが、ガソリンタンクの圧力が破損レベルまで上昇してしまうのはもっと歓迎しない事態なのです。ですから何かがあればキャップ部分で対応するというわけです。

 キャップは単なるフタとしての役目以上のものを担っていますので、雑にあつかったりしないようにしましょう。給油の時に不安定な場所(タイヤの上)などに置いたりせずに、キャップ置き場を利用しましょう。落としたり汚れたりすることはよくありません。

 また、キャップをなくした(だいたいの場合はガソリンスタンドに置き忘れる)ときは、間違って別のキャップをつけないことも大切です。キャップはそれぞれのタンクの容量や構造に合わせて設計されているからです。

日産は現行セレナでキャップレス給油口を初採用。ノズルを差し込むだけで給油ができる便利さが売りだが、差し込み方、抜くタイミングなどシビアな面もある

 最近はキャップレス給油口というものも増えてきました。これはフューエルリッドを開けると、シャッターのついた給油口が現れ、そこにノズルを差し込んで給油するようになっています。キャップがないことでガソリン蒸気の大気開放が減るほか、給油時に手が汚れることも防げる。

 キャップのつけ忘れがない……などのメリットがあります。デメリットしてはコスト高でしょうが、これは量産効果で下がっていき、今後は主流となっていく可能性があります。

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