MT車の設定が年々減っていくなか「あのメーカーならMTを選べる」といったメーカーも多かった。
しかし時代の潮流には逆らえずCVT、またはDCTへの変更は多くのメーカーでみられる動きだ。そんななかでも半ば意地のようにMTを設定し続けるメーカーがある。
今回はマツダ、そしてルノーに絞って各社の狙いを聞いてみた。AT車全盛のこの時代に、なぜ3ペダルMTを設定するのだろうか?
文:大音安弘/写真:編集部
■安全性と利益率を考えればMT減少は仕方ない
かつてクルマ好きといえば、熱心なMT愛好者でした。しかし時代は流れ、スーパーカーまで軒並みATに。日本でも復活した新型スープラにMTが非設定など、MTを選ぶこと自体のハードルも高まりました。
この背景には、AT車の普及だけでなく、驚異的な発展を遂げた最新ATの技術の高さが挙げられます。
巨大なトルクやスポーツ走行に耐え、一流ドライバーを超える俊敏なシフトチェンジを実現するなど、プロも一目置く存在です。同じ仕様の車両なら、タイムアタックの結果も、AT車が勝ることは、当たり前となっています。
またドライバー自身にも、アクセル、ブレーキ、ステアリング操作に集中できることで、安全マージンの拡大というメリットを与えました。つまり、MTでなくては、クルマを楽しめない時代は終わったともいえます。
それでは、MTの存在価値は失われてしまったのでしょうか。今もラインナップの多くにMT車を残す国内外メーカーに注目し、その意味に迫ってみました。
■国内最後の砦?? マツダが意地でもMTを残す理由
国産車の中でも特にMTラインアップが充実しているのがマツダ。マツダ車を選ぶすべての人に、クルマを操る楽しさを提供したいという考えのもと、可能な限り多くの車種にMT車を設定しているといいます。
その言葉を裏付けるように、最新ラインアップでは、マツダ3セダンとCX-8を除く、全ての車種でMTの選択が可能。
特筆すべきは、SUVのCX-3とCX-5までMTが用意されている点でしょう。2018年度の実績では、ラインアップ全体の5.2%がMT車となるという。
SUVは平均値を下回るものの、CX-5は2018年10月の改良で新たにMT車を設定するなど、積極的なMT展開を見せ、2019年、名称変更が行われたマツダ2(デミオ)、マツダ6(アテンザ)にもMT仕様がしっかりと継続されています。
この姿勢は、今後も変ることはないとしており、限られたMTニーズにも出来る限り応えていきたいとしています。
■熱狂的なフレンチファンの要望に応えるルノー
一方、海外勢はどうなのでしょうか。現在、MTを導入する海外ブランドは、限定的。先にも述べましたが、スーパーカーに代表されるように、高性能スポーツは、ATが進んでいます。
そのため、各社1モデル程度ということも多くなっています。その中で、比較的MT車のイメージが強いのが、ルノーです。ルノー・ジャポンでは、「日本のフレンチファンは、MT指向の人が多い」といいます。
そのニーズに応えるべく、通常モデルを含めてMT車の設定をしているようです。ただ意外なことに、最新ラインアップでのMT車のカタログ設定は、トゥインゴGTとカングーの2車種のみ。
ルーテシアとトゥインゴのエントリーモデルのZENのMT車は、台数限定での導入としています。それでもMTイメージが強いのは、台数限定や限定車という手法で、柔軟にMT車を用意する商品戦略を取っているからでしょう。
ただルノーがEDCと呼ぶDCTの導入が、この流れにも大きな変化をもたらしています。ルノーのスポーツモデル「R.S.(ルノー・スポール)」は、トランスミッションの主力をMTからDCTへとシフト。
これは他社のスポーツモデルと同様に、性能向上を狙ったものです。このため、ルーテシアR.S.に関しては、スポーツモデルのすそ野を広げるという役割を担ったことで、全車でEDCを標準化。
ホットハッチの頂点を争うメガーヌR.S.は、ハイレベルなドライバーのニーズにも対応すべく、DCTに加え、MTを継続していますが、日本では、DCTを標準とし、よりサーキット性能を意識した「CUP」モデルの6MT車だけを限定車として導入しています。
通常モデルでもカングーのMT比率は、最盛期の2015年では46.4%だったのに対して、DCTの登場により今や10%代まで縮小されています。
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