■熱狂的なフレンチファンの要望に応えるルノー
一方、海外勢はどうなのでしょうか。現在、MTを導入する海外ブランドは、限定的。先にも述べましたが、スーパーカーに代表されるように、高性能スポーツは、ATが進んでいます。
そのため、各社1モデル程度ということも多くなっています。その中で、比較的MT車のイメージが強いのが、ルノーです。ルノー・ジャポンでは、「日本のフレンチファンは、MT指向の人が多い」といいます。
そのニーズに応えるべく、通常モデルを含めてMT車の設定をしているようです。ただ意外なことに、最新ラインアップでのMT車のカタログ設定は、トゥインゴGTとカングーの2車種のみ。
ルーテシアとトゥインゴのエントリーモデルのZENのMT車は、台数限定での導入としています。それでもMTイメージが強いのは、台数限定や限定車という手法で、柔軟にMT車を用意する商品戦略を取っているからでしょう。
ただルノーがEDCと呼ぶDCTの導入が、この流れにも大きな変化をもたらしています。ルノーのスポーツモデル「R.S.(ルノー・スポール)」は、トランスミッションの主力をMTからDCTへとシフト。
これは他社のスポーツモデルと同様に、性能向上を狙ったものです。このため、ルーテシアR.S.に関しては、スポーツモデルのすそ野を広げるという役割を担ったことで、全車でEDCを標準化。
ホットハッチの頂点を争うメガーヌR.S.は、ハイレベルなドライバーのニーズにも対応すべく、DCTに加え、MTを継続していますが、日本では、DCTを標準とし、よりサーキット性能を意識した「CUP」モデルの6MT車だけを限定車として導入しています。
通常モデルでもカングーのMT比率は、最盛期の2015年では46.4%だったのに対して、DCTの登場により今や10%代まで縮小されています。
■今後は一層ニッチになるMTの設定だが消滅の可能性は低い
更なる効率の追求と先進機能との親和性など、MTの存在は、よりニッチとなることは言うまでもありません。
しかし、近い将来、MTが失われてしまうと考えるのは早計ではないでしょうか。クルマを操る喜び、運転技術の向上など、MTならではの魅力があるからです。
また先進国に目を移せば、MTのシンプルかつタフな基本性能が重宝され、依然として高いニーズを保っています。先にも述べたように、年々、MT車のハードルは高まっており、選択肢が縮小することはやむを得ない現実です。
ただユーザーの声が消えない限り、少なくとも失われることがないでしょう。
コメント
コメントの使い方