理想と現実のギャップに苦しむ
同じく、理想論で突っ張って苦しんでいるクルマとして、BMW i3があげられる。
発売4年で10万台を達成するなど、i3は500万〜600万円クラスの高級EVとしてはむしろ健闘している部類。現時点でこれを失敗作というのは、ちょっと忍びない。
しかし、これが近い将来EVの主流になるかというと、それはかなり微妙。理念優先の高コストなクルマ造りには、かなり危ういものがあるように見える。
i3が掲げた理想は、バッテリー重量のかさむEVは、そのぶん車体構造を軽量化しなければ効率がよくならない、というもの。そのために、アルミフレームにCFRPのボディを載せるなど、実用型EVとしては異例に贅沢な車体構造を採用している。
しかも、EVはサプライチェーンから生産工場まですべての領域で環境に優しくなければならないという理屈で、アメリカで生産されるCFRPの工場はエネルギーをすべて水力発電の電力で賄うとか、ドイツの組み立て工場は完全なCO2排出ゼロで運用されるとか、とにかく理想追求型。いわゆる「意識高い系」そのものなのだ。
もちろん、これは建前的には素晴らしいことばかりなのだが、ここまで環境コンシャスなクルマ造りを徹底すると、当然価格にそれが反映され、回り回ってユーザーの負担が重くなる。
こういう“political correctness”なクルマ造りがエスカレートすれば、最後はお金持ちしかクルマに乗れなくなる世界が待っている。理念は素晴らしいのだが、そこにちょっと息苦しさを感じてしまうのだ。
高級車メーカーはついつい理想論に走りがちがけれど、それもほどほどにしておかないと痛い目にあうよね、というお話でした。
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