こんなクルマよく売ったな!【愛すべき日本の珍車と珍技術】三菱渾身の合理的設計で生まれた5ナンバーミニバン[ディオン]の運命とは

■快適で誰でも扱いやすい特性で家族に喜びを提供

 パワーユニットは、街なかで多用する低中速領域で扱いやすい特性としながら、優れた実用燃費を発揮する2Lの4G63型GDIエンジンを新開発して搭載。トランスミッションは4速ATとなる。

 4G63型GDIエンジンは、走りの面のみならず環境性能に長けたエンジンとして注目を集めた。国内の排出ガス規制に対応するとともに7都県市指定低公害車基準にも適合したうえに、2010年燃費基準もクリアするなど、開発時に掲げたエコロジー・コンシャスが徹底追求されていた。

 デビュー当初は4G63型GDIエンジンのみの設定だったが、2002年5月に実施したマイナーチェンジでは2Lの4G94型GDI仕様と、1.8L直列4気筒の4G93型GDI+ターボチャージャー仕様がラインナップされる。

 快適性と操縦性の調和はファミリーカーにとって外せない要素だが、ディオンは、フロントがマクファーソンストラット式、リアにマルチリンク式を採用。扱いやすさを重視し、ハンドリングは穏やかな印象で、カーブで生じる車両の傾きも適度に抑えられて違和感がない。

 5.2mという小さな最小回転半径や、ボクシーなフォルムや広いガラスエリアによってもたらされる見切りのよさによって、運転がイージーに感じられる。こうした特徴は、奥様がハンドルを握る場合にも喜ばれるポイントと言える。

ヒップポイントを前席よりも後席のほうが高くなるようレイアウトすることで、良好な見晴らしを実現。ドアはヒンジ式だが、開口部を大きく設定し、ナチュラルハイトと段差の少ないサイドシルによって楽に乗り降りできる
ヒップポイントを前席よりも後席のほうが高くなるようレイアウトすることで、良好な見晴らしを実現。ドアはヒンジ式だが、開口部を大きく設定し、ナチュラルハイトと段差の少ないサイドシルによって楽に乗り降りできる

 ギリシア神話に登場する喜びを司る神に由来するネーミングが与えられ、デビュー当初は多くのユーザーにメリットを提供して喜ばれたが、やはり多人数乗りという点ではスライドドアを持つミニバンを凌駕することができず、スマートユーティリティワゴンという斬新な狙いはいまいち浸透しなかった。

 取りまわしのいいコンパクトなボディながら、多人数乗車が快適に行えて、実用的な機能も充実。2006年3月に生産終了後、後継モデルが登場することもなかったが、合理的な設計がなされているうえに159万8000円からという車両価格で、圧倒的なコストパフォーマンスは大きな魅力だった。

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